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武器屋案内のゼン

11月更新です。



 武器街に足を踏み入れた途端、懐かしい雰囲気を思い出す。

 着替えて、扉を開けて、一礼して、踏み込む。ひやりと冷たい感触が足の裏に染みわたる。そう、まるで道場の雰囲気のように静かだ。

 ここは道場ではないのに、咄嗟に頭を下げてしまった。父上にちらりと視線を向けられてしまったが、何も言われはしなかった。

 街を歩く人は、ドラマやゲームで出てきたような恰好をしている。戦闘に不向きそうな格好をしているが、暗器とか隠し持っていそうだ。そういう人もいるのかな。


 ここに訪れたことがあるのか、父上はずんずんと歩いて行く。そして、武器街の中心に一軒の看板がかかった店があった。



 武器街は、武器を売っているにもかかわらず、看板がかかってない。それは、ここ、武器屋案内の紹介を必要とするからだ。

 ミヤの武器の作り手は、それにふさわしいと判断するも者ゃないと、たとえ大金を積まれても、絶対に売ることはない。

 どこで、何を売っているのか。また、それに見合うものなのか。それを判断するのが、武器屋案内のゼンである。



 横に静かにひかれた扉は、何の抵抗もなく開く。扉の上のほうに銀細工の球体が、しゃらりと心地よい音を鳴らして、訪問者を迎えた。

「邪魔するぜ」

「いつでも閑古鳥が鳴くこの店に、邪魔なもんなんているもんか。…久しいねぇ、カルマさん」

 銃から剣に浮気ですかぃ?と面白げに尋ねる男。

 それに対して、俺は銃一筋だと飄々と答える父上。

「それじゃ、そっちかな?坊や」

「え、…はい」

 相手の雰囲気に飲まれていた俺は、突如話かけられ、反射的に答える。…え、俺の武器を作りに来たんだよね。


「ふーん…。俺の名前はゼン。君はカルマさんの息子だよね。カルマさん、親バカじゃないと思っていたんだけど。それとも訓練用?あぁ、君は名乗らなくてもいいよ。俺、弱いやつの名前、覚えられないんだよね。ごめんねー。にしても小さいね。ミヤなら大抵剣だけど、やっぱり銃?でも、君は剣だね。うん」


 ずずー。話疲れたのか、茶をすする。

 ゼンと名乗った男は、怒涛の勢いで独り言を言い、一人で納得して茶をすする。灰色の髪に、ハシバミ色の瞳を細める姿に、俺は滅茶苦茶デジャヴを感じる。


 第一印象は、猫。気まぐれで、唯我独尊。他人に無関心なようで、相手をイラっとさせるのはきっと天才的だろうと予感させる。そう、…まるで神様じゃね?

 紅茶を片手に、俺をこのよう送りだしたあのイケメン神様に雰囲気が似ている。いや、ゼンさんもかなりのイケメンだけどね。

 ゼンさんの薄笑いが、相手にだまくらかされたようなイメージを持たせるが、顔を引き締め、きりっとした顔になれば、大抵の女子がキャーと騒ぎ出す顔である。

 俺の周りってマジでイケメン多いな。


「別に親バカじゃない。こいつの稽古を付けたら、俺の弾をその辺の枝ではじいてな。なんとなくこっちに来たんだ」

「あんたの銃弾を?」

「本物じゃない。水鉄砲を改造して、龍巫で氷に変えたやつ。そうそう怪我はしない」


 え、あれ水鉄砲なの。初めて知ったんだけど。俺、あれで気絶したんだけど。父上が本気になれば絶対人ヤれるよ?絶対。そうそう怪我をしないとか嘘だから。あ、でも気は使っていてくれたんだとか、いろいろ思う。

 思うけど!

 なんなの。これはボケてるの。ツッコミ待ちなの。ありえないでしょ、と日本人の常識が俺に訴えかける。が、俺はすでにバーデの人間であって。バーデの血の歴史が諦めろと諭してくる。


 俺が日本人とバーデの戦いを審判している間に話は進んでいく。


「片手?両手?」

「どっちも」

「棍は?」

「いいかもしれないが…そこは任せる」

「龍巫は?」

「あの通り」

「成る程。眼は?」

「いける」

「初め?中?」

「初めで」


 ファーストフードの注文でも、もっとゆっくり、愛想よく話すものだろうと思いながら聞き流す。

 しかし、よくわからない質問だ。何故わかるんですか、父上。

 ゼンさんは一目で俺の龍巫の量がわかったようだ。少し意外そうに目が見開かれる。

 龍巫により相手の居場所や気配を認知されたりするので、龍巫を操る訓練は必ずするそうだが、俺の場合どうなるのか。その話を聞いてぞっとした。


 柔らかそうな座布団に座っていたゼンさんは、ふらりと立ち上がる。頼りなさよりも、身軽さを感じさせる動きである。


「じゃ、坊や。外行くよ。カルマさんは寛いで待っててくだせぃ」

 商人って気を許した人には、口調が変わるもんなんだろうか。俺には全く硬いまま。ゼンさんってなんだか江戸っ子ポイよね。なんて思っていると、いきなり襟首をつかまれ持ち上げられる。

「ぐぇっ」と洩れた声は、扉の球体の音にあっさりとかき消された。

 父上のほうは、こちらをちらりと見て、手をひらりと振った。そしてさっそく茶を飲みながらくつろぎ始めていた。




 俺の周りはイケメン美女が多い。

 そして、ツッコミどころがありすぎる人が多い。んで、マイペースな人が多い。





ゼンさんをいまいちつかめない。

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