龍巫をしる
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「おねーしゃん、足しゅごいねー!!」
女性のけりとは思わせない、流石父(魔王)の姉である。
…が、それだけではないと思うんだよね。(キメ顔)
第二の人生は焦らず達観にいっているけど、俺が転生したのはあくまで復讐のためだ。復讐を目標にしつつ、もちろん十八年で終わってしまった人生を補うつもりで生きていく。復讐オンリーの寂しい人生を送る気はない。
が、第一は復讐なわけで。あの傲慢神様野郎との条件はXと犯罪神をぶちのめすことなわけで。
犯罪神は魔法と称していいかわからないけど、何かしら特別な力はある。時間時空を歪めさせれるだけの大きな力。
そんな化け物をバックにつけているXにもなんかありそうなんだよなー。
根拠一。気まぐれ傲慢神様野郎は転生先のことは気にかけないって言っていたけど、犯罪神に対抗できる世界とかじゃないかなーって。…無理かな。神様相手には。楽観しすぎかな。
でもこの世界はXがいるってこの前提だから、魔法とか呼べるものがあるかはやっぱりわからん。
根拠二。マイマザーはあんな細っこい身体で、危険だと思われる父の仕事について行ったってことは、なんかある、いやあってほしい…。
願望は混じっているが、異世界という名に懸けて魔法はあってくれ、頼むから。
一回殺された身としては、自己防衛ができる対処がほしいんだよ!
なくても俺にチート能力とかないかな?中二病って言ってもいいけど!犯罪神とご対面しただけで、ぽっくり逝って三途の川渡っちまう気がする!!日本のチキンをなめるなよ!(あれ?二回目?)
…ここって三途の川あるのかな。取りあえずそれを知るのはあと八十年くらいしてからでいいから。
冒頭の言葉=願望。
…それだけではないと思うんだよね。(いや、そうであってほしいという俺の願望)が正しい。いやぁ、口で言っていたら、キメようとして滑っている気がするよ。
そんな俺の思いをくみ取ってくれたか、いやないだろうけど。ドニさんは笑いながら言った。
「若もマリアの足、いい足だと思うか?将来イイ女捕まえれそうだな!」
俺は人の見る目はあると思う。なんていったって結月がその代表例だ。
「若はそういう意味で言ったわけねぇだろ」
「イゼアの耳が汚れるからやっぱり出てって頂戴」
「ドニ、奥様に言いつけますよ?」
三者三様にそう言われドニさんはポンと手を打った。
「あぁ、そっち。マリア、男はどんな時でもエロいことを考えているもんなんだよ。早いうちに耳を汚しておいて分別ができるようべは‼」
Take3。ドニさんて懲りない人だな。ちょっと同意しつつ、ちょっと軽蔑した。ただの女好きじゃん。
「若様、マリア様は龍巫というものを使ってあのようなことをしているのですよ」
「リューフ?」
「体の中に流れる…なんていえばいいのかしら?特別な力?」
特別な力とか来たよこれーーーーー‼‼死亡フラグは回避した。
「龍巫っていうのが体の中に流れてて、それを別のものに通して、マリアみたいな凶暴女ができるんだ。」
「そろそろお前本気で死にたいの?」
ひどく曖昧な説明してくれていたのだが、龍巫とは何ぞやと大人四人で話し始めてしまった。
普段曖昧に使ってるのかな。考えることもないくらい、身近なものらしい。
子供に放置プレイはよくないぞ。早くも母さん帰ってきて状態だよ。ちなみにこれ、俺が影薄いんじゃなくて、周りの大人は自分のやりたいことをやる、我が道を行くタイプだということにしておく。俺は影薄くない…と思う。
話を聞くところ、魔法っぽいものはある。予想二はあたりか。母さんもその龍巫を、あのとき持っていた札っぽいものに流して使うのだろうか。…陰陽師か!
「あるー?」
「え?あぁ、イゼアにもあると思うわよ。カルマとユキハの子供だし」
「どれ、確認してやろう」
龍巫は遺伝系?確実に遺伝するとは限らないのか。
「いいか、若。俺が若に龍巫を流すから、それと似たのを探せ」
「若はきっとまだ身体に流れていないだろう。もしかしたらない可能性もあるけど」
龍巫って結局なんなの。
龍巫は他人同士だと反発するから、その反発具合で量を確認するらしい。
子供は龍巫がうまく流れていないから、触らないとわからないが、大人はなんとなくわかるらしい。…曖昧だな!
龍巫はない人はいないらしく、無きゃ死んでしまうらしい。
「無かったらバーデの未来は暗そうだな」
「カルマが喜んでしごきそうね…」
「バーデの前に跡継ぎが生きているかだな…」
ジャンさんとマリアさんがぼそっと何か言ったが、聞き取れなかった。
とりあえず、この龍巫で両親はドンパチしているのだろう。
どこかでいちゃついているだろう両親を思い浮かべていると、注射で薬を注入するみたいに、体に何かが流れるような奇妙な感覚がした。
しかし、それは直ぐにわからなくなり首をかしげる。
これと似たのをって言っても、すっかりわからなくなってしまった。
ジャンさんもそれがわかったのか一緒に眉間を寄せてうーーーんと唸った。
「どうジャン?見つかった?」
「いや全く。というか、俺の龍巫…流してるんだよな?」
「は?」
「いや、若に流したら、よくわからなくなった」
龍巫どうし反発するから、わからなくなることなんてあるのか…?と呟くジャンさんの声が耳に届くが、龍巫の性質なんて、全く知らんわ。
「え、まさか本当に無い?」
ひきつったような声でドニさんが確認する。
ちょ、その声胸に突き刺さるからやめて!
無いと死んじゃうんでしょ!?もしかして俺がトリップしたから?!
「反発ないの?」
「おう。全く。流しているのは確かなんだが…。障害物がない、きれいな道を通ってる気分」
龍巫が反発するって言うのは、障害物に当たる感じなのだろうか。
「なーのー…?」
やばい泣きそうだ。今を下向いたら確実に涙がこぼれる。俺死亡フラグ回収できないのか!?
「まーまー、そんなにしょんぼりするなって!若は絶対少しでも龍巫はあるから!無きゃ死んじまう。しかも量を考えると持っていないのと変わらんってのもざらだしなー」
ボスに似てても泣きそうな顔は普通にガキだなーなんて言いながら俺の頭をなでてくる。慰めになっているのか、父はどれだけ…。Xがこの龍巫を持っていない可能性もあるけど、、、駄目だ。これ以上考えるのはよそう。
しょんぼりオーラがダダ洩れていたのか、エイダさんが抱き上げてくれた。
「若様、落ち込まないでください。龍巫が無いに等しくても、多分生きていけますよ?」
人生これから希望に満ち溢れているはずなのに、なんでこんなこと言われなきゃいけねぇんだろう…。多分って…。
「はー…むじょー…」
「え?」
マリアさんがキョトンとした顔を向けたので、赤ちゃんスマイルでやりとおす。この笑顔は母性本能をくすぐるのか、母さんも「かわいい…!」と抱きしめてくれる。(父が来るとお終いだけど)
人生ってなんだろう。…第二の人生、楽観達観でいこう。頑張れ俺―――。
そんなことを思いながら、お留守番は続く。
しまらない。。。
楽観達観夢主になる気かする。マイペース?