第一話 『銀の閃光、登場!』 Apart
作者が遅書きなため、AパートとBパートに分けて投稿します。
ここではない別の世界フェルメルは、とても自然豊かな優しい世界だった。それがすべてを牛耳ろうとする悪、黴キングに侵略を受けた。フェルメルの騎士たちは果敢に戦うも、黴キングの力には及ばず、徐々に攻め込まれていった。そして、フェルメルの王は、最後の手段として、次元転移魔法を使用し、生き残った民と姫、そして五人の精霊騎士を別世界、地球へと送った。
それから百年の時が過ぎ、黴キングは、地球を新たなターゲットに定めた。
地球に落ち延びた姫たちは、いずれ来るであろう黴キングの侵略に備えていた。そして、五人の精霊騎士の孫たちが、騎士となって黴キングと壮絶な戦いを繰り広げていく。
五人の少年少女が携帯を手に持ち、構えた。
――― 7 1 0 1 ―――
――― 7 1 0 2 ―――
――― 7 1 0 3 ―――
――― 7 1 0 4 ―――
――― 7 1 0 5 ―――
「「「「「転聖!」」」」」
五人は、光に包まれ、五色の戦士へと姿を変えた。
「熱き炎の騎士! クロスレッド!!」
「生い茂る森の騎士! クロスグリーン!!」
「堅き鋼の騎士! クロスブラック!!」
「響く大地の騎士! クロスイエロー!!」
「揺れる泉の騎士! クロスブルー!!」
「騎士となりて悪を絶つ! 聖騎士戦隊!」
「「「「「クロスレンジャー!!」」」」」
五色の戦士がポーズをとり、敵の雑兵に各々の武器を手に勇ましく立ち向かっていく。
レッドが剣を手に雑兵よりもランクが高い怪人に斬りかかる。カマキリの怪人、ガンマキリはレッドの剣を自身の右手の鎌でさばき、左手の鎌で切り裂く。
「ぐわぁ!」
「「アローライフル!」」
吹っ飛ばされたレッドをかばうように立ち、ブルーとブラックが共通装備のボウガンに似た銃を撃つ。
「フッ 笑止!」
ガンマキリは光線を鎌でさばき、エネルギーを触覚にためて二人に向かって放つ。それをイエローが固有武装のシールドでガードする。
「サンキュ! イエロー」
「これくらいどうってことないわ」
四人がかりで攻撃を行うも、ガンマキリの力の前に圧倒されてしまう。が、突然、放たれた光線がガンマキリの右手の鎌を壊した。
「大丈夫か!?」
「サンキュー、グリーン! 良し、反撃だ!!」
「「「「オウ!」」」」
最後の雑兵を倒したグリーンが合流すると起きあがったレッドが飛び出す。グリーンのジャベリンとブラックのハンマーでガンマキリの両腕を塞ぎ、ブルーとイエローが銃で無防備となったガンマキリの胴体を撃つ。そして、とどめと言わんばかりにレッドの炎を纏った剣が振り下ろされた。
「火翔剣!」
「グワァ!!」
ガンマキリに膝をつかせた五人はそれぞれの武器を合体させた。
「「「「ファイブナイトバスター!」」」」
「発射!!」
レッドの掛け声と共に放たれた閃光を受け、ガンマキリは爆発した。
しかし、まだ、終わったわけではなかった。どこからともなく跳んできた無数の黒い虫がガンマキリに群がると、ガンマキリが50m位の大きさに巨大化した。
「みんな、行くぞ!」
「「「「おう!」」」」
五人は腰からそれぞれ色の違う珠を取り出し、天に掲げた。
「フレイムイーグル!」
「ウッドタートル!」
「アイアンバイソン!」
「グランドタイガー!」
「アクアドルフィン!」
「「「「「聖霊よ、現臨せよ!!」」」」」
声に応えるように珠が光、ガンマキリには劣るものの、それでも巨大な赤い鷹、緑の亀、黒い牛、黄色い虎、青いイルカが現れた。
『『『『『聖騎合身!』』』』』
牛が下半身に、亀が腹部へ、鷹が上半身となり合体し、クロスナイトとなった。そこから更に、鷹の腕が外れ、虎とイルカがそれぞれ左右の腕となって合体した。
『『『『『クロスナイト・マックス!!』』』』』
ガンマキリが鎌を振り上げて襲いかかる。クロスナイト・マックスは両手で鎌を受けとめ、至近距離でガンマキリの光線を受けた。
『『『『『うわぁ!』』』』』
ガンマキリは、よろけたクロスナイト・マックスにさらに光線を放つが、今度は盾を出して受け止められた。クロスナイト・マックスは盾から抜いた剣で斬りかかり、それにガンマキリも鎌で応戦する。
一進一退の攻防が続くかと思われたが、二体の距離が開いたとき、クロスナイト・マックスの左腕に合体した虎の顔が飛び出した。
『ファングハーケン!』
放たれたそれは、ガンマキリの光線を発射していた触覚を斬り裂いた。触覚を斬られて怯んだガンマキリを前に剣を構えた。
『邪悪なるその魂、聖なる剣で絶つ!』
『『『『『エレメントファイナル!!』』』』』
五つの属性の力を持った黄金に光る剣がガンマキリを斬り裂き、ガンマキリは倒れて爆発した。
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次回予告までしっかりと見て、新宮明はテレビを消して、パソコンのスイッチを入れた。
「やっぱり、今回もカッコよかったよなぁ」
聖騎士戦隊クロスレンジャーのファンサイトにアクセスすると、早速チャットルームに入る。
「あれ? HIME一人しかいないじゃないか。
いつもなら、もっと大勢いるのに…」
そんなことを呟きながらもログインする。
――― オッス! HIME。
――― あら、森羅。
――― どうしたんだ? いつもなら、もう、みんな来て騒いでいる頃なのに?
――― さあ? それよりも、この間、森羅がいない間に話が出たんだけど、オフ会やろうってことになったんだよ
――― マジで!? Σ(゜Д゜)
――― 来るなら場所とか教えるけど、どうする?
――― 行く行く!
――― 場所は、○○県の△△駅の前にあるカラオケ“フェルメー”の116号室に○月×日。
――― オッケー☆⌒d(´∀`)ノ
――― じゃ、私、これから用事があるからぁ~ (^0^)/ まったね~
それから、しばらく待ってみるけど、誰も来る気配がない為、明もログアウトした。
「それにしても、オフ会か。場所も近所だから、OKしちゃったけど…
ってか、○月×日ってもう、目の前じゃないか!」
カレンダーで日付を確認して明は、思わず声を上げた。
「兄ちゃん、うるさい!」
突然、明の部屋の扉が開けられ、少女が入ってきた。
「自分の部屋で何やってようが俺の勝手だろう。奏こそ静かにしろよ」
「こっちは受験を控えているのよ。ちょっとは気を使ってよ!」
ああ言えばこういう言う自分の妹にこっそりため息をついた。
「わかったわかった。できるだけ静かにするから出てけ」
「ならいいけど…
それと、いい加減、この部屋何とかしてよ」
「別に散らかってもないしちゃんと掃除をしているぞ」
そう言って明は、自分の部屋を見回す。クロスレンジャーのポスターが貼られた壁、クロスレンジャーのフィギュアや超合金ロボがおかれたデスク、イベントで手に入れたクロスレンジャー出演者のサイン色紙の飾られた棚。
「どこがおかしい?」
「全て! 何でこんな子供向けヒーローにどっぷりと浸かったオタクになっちゃったわけ!? 少し前まで、さわやか系の武術少年だったのに!」
奏の言葉に明の顔が一瞬、くもったがすぐにそれを隠して笑った。
「時は人を変えていくのさ」
「変えすぎよ! とにかく、静かにしてね」
「りょ~かい」
肩を怒らせて奏が出て行った後、明はおもむろにクローゼットを開けた。そこには、武術を習っていた時に使っていた道具一式が置かれていた。
竹刀を手に取ると、前を見据え、踏み込んで突きを繰り出す。
高校に上がってすぐに、不良に絡まれている友人を見かけて助けた。
竹刀を振るい、不良たちを地に沈めたが、不意を突かれた一撃にとっさに突きを放ってしまった。
突きを受けた不良が死ぬようなことはなかったが、長期の入院が必要となった。
それ以来、明は道場に通わなくなった。
「未練だな…」
竹刀を元に戻し、クローゼットを閉めた。
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それから数日が過ぎ、約束の日になった。
明はHIMEから聞いたオフ会の会場となるカラオケ店に入り、教えてもらった部屋番号を携帯で確認しつつ案内図を見た。
「あれ?」
もう一度、携帯を確認してから案内図を見た。
何度見ても部屋番号は115までしかなく、116は見当たらない。
念のために近くを通りかかった店員に聞いてみると店員は驚いた顔をしてから「こちらです」と案内をしてくれた。
案内された部屋は、115号室の隣にある関係者以外が入れなさそうな扉だった。
店員が扉をノックすると、中から「はい」という女性の声が返ってきた。
「お客様がいらっしゃいました」
「わかりました。入ってもらってください」
「かしこまりました」
店員に促されて明は扉の中へと入った。そこには、カラオケの部屋にはとても見えなかった。
白い神殿のような部屋だった。その部屋の真ん中に座っている少女がいた。
「ようこそ。森羅さん……いえ、新宮明さん」
「シルビア・フェルメルさんだよな? B組の」
「ええ、新宮さんは、C組でしたね」
明の問いにシルビアは笑顔で答えた。学年一の美少女と囁かれる美少女の笑顔に見惚れそうになりつつも、明は更に聞くことにした。
「もしかして、フェルメルさんがHIMEなの?」
「そうですよ。ファンサイトの設営者にして、聖騎士戦隊クロスレンジャーの原作者のHIMEです」
そう言ってシルビアは胸を張った。
「…原作者?」
「はい!」
「マジ?」
「マジです」
ぽかんとした明にニコニコしながら、シルビアは応える。
「いや、凄いと思うけど、俺と同じ16か15だよね?」
「まさか、年上に見えます?」
(いや、見た目は年下に見える)
あえて口にはしなかったが、察したらしいシルビアは明を睨んだ。それから、急に真剣な表情に変わった。
「オフ会と偽り、ここにお呼びしたことには、わけがあるのです」
「わけ?」
「クロスレンジャーのモノローグ、いえますか?」
「当然、『ここではない別の世界フェルメルは、とても自然豊かな優しい世界だった。それがすべてを牛耳ろうとする悪、黴キングに侵略を受けた。フェルメルの騎士たちは果敢に戦うも、黴キングの力には及ばず、徐々に攻め込まれていった。そして、フェルメルの王は、最後の手段として、次元転移魔法を使用し、生き残った民と姫、そして五人の聖霊騎士を別世界、地球へと送った。
それから百年の時が過ぎ、黴キングは、地球を新たなターゲットに定めた。
地球に落ち延びた姫たちは、いずれ来るであろう黴キングの侵略に備えていた。そして、五人の聖霊騎士の孫たちが、騎士となって黴キングと壮絶な戦いを繰り広げていく。』、だろ?」
「さすがですね」
「で、これがどうしたんだ?」
「もし、それがノンフィクションだったら?」
「は?」
「もし、モノローグが本当で、この世界が黴キングに狙われているとしたら?」
「……」
シルビアの眼はあまりにも真剣だった。とても冗談や嘘を言っている目ではない。
「…マジ?」
半信半疑で聞く明に、シルビアは大きく頷いた。
「はい。本当に100年前、私の祖母たちは、世界を超えてきました。そして、来たる敵に備え、準備を重ね、調査を重ね、その結果、近いうちに黴キングはこの世界、日本に攻めてきます」
「なんで、日本だってわかるの?」
「日本は、いくつものプレートが重なった地にある島です。その重なりとは、亀裂です。世界から世界へと渡るには、亀裂の集中し、通り抜ける穴が開けやすい場所に穴を開け、そこを通るのです。これが一番大きな理由なのですが、他にも、いくつかの要因が重なり合い。その結果、日本に攻めてくる確率が一番高いんです」
「でも、フェルメルさんたちが、この世界に来たなら、クロスレンジャーも来ているんだろ?」
「いえ、長い戦いにより、傷ついたクロスレンジャーは祖母たちが逃げるまでの時間を稼ぐため、王と共に残りました。この世界には、今、黴キングに対抗できる存在はいません」
「いませんって、無責任な!」
明が思わず叫んだが、シルビアの様子は変わらない。
「クロスレンジャーが、どうやって力を手に入れたか覚えていますか?」
「えっと、聖霊と同調できる魂を持っている者が、その聖霊と契約を交わしているから」
「そうです」
「でも、聖霊は、五体だけ「もっといたら?」 え?」
「聖霊がもっといたとしたら?
聖霊は、元々、10体いました。そこから、別世界に残ったクロスレンジャーの5体を引いて、残り5体の精霊がいます。
しかし、この残り5体の聖霊は、同調する者が現れず、封印されていました。
でも、黴キングに対抗するためには、封印された聖霊と同調できる者を探さなくてはなりませんでした。
そこで、私は、知人の力を借り、聖騎士戦隊クロスレンジャーを放送させました」
「なんで、クロスレンジャーをやることが、人探しに?」
「二次創作作品、ネットや同人誌で書かれている。IFストーリー…
ヒーローのIFでよくある作品をご存知ですか?」
そこまで言われ、明は一つの可能性に気付いた。自分も書いているからこそ気がついた。
「オリジナルヒーローの参戦…」
「そうです。原作では存在しない。その人が頭の中で描いたヒーロー。
クロスレンジャーの二次作品の中に、封印された聖霊と同じ聖霊が出てきて、尚且つ同じ属性、同じ能力、同じ武器が出てくるものがある。
それは、作者の魂が精霊と同調したからだと考えられないでしょうか?
そして、新宮明さん、あなたはまさしくその同調者です」
その声と同時に、扉が開き、スマートフォンとピンポン玉くらいの大きさの透明な珠が乗った台が運ばれてきた。
「ようやく、調整が終わり完成したクロスフォンと聖霊石です。どうぞ」
「い、いや、どうぞなんて言われても…「姫さま! 大変です!!」」
突然、ドアが開けられ、初老の男が入ってきた。
「爺、どうしたのですか?」
「奴らが現れました。我等の予想よりも、早かったのです!」
「ッ!? 新宮さん、来てください!」
明はシルビアに手をつかまれ、状況がつかめないまま、手をひかれるがままに走り出した。
キャラクター紹介
名前:新宮明
性別:男
年齢:16歳(羽陽高校1年)
身長:178cm
体重:68kg
家族:両親、妹
ハンドルネーム:森羅
好きな物:寿司
苦手な物:蛇
当初は、気弱な少年(普段)と騎士道を重んじる武人(戦闘)の二つの顔を持つ6人目の戦士の予定だったはずが、いつの間にか、メインキャラクターに変更となったキャラ。
Bパートは明日までに投稿します。(多分…)