三途の川での小さな争い
ある朝(起きたら)、石塔が崩れていた。
崩れたらまた積むだけなのだが、一体誰が?
赤鬼は俺が寝ている間に蹴倒すような、せこい真似はしない。
「はっはっはぁ。どうだ、いい気味だ」
黄色鬼が後ろに立っていた。
俺はため息をついて、石を積み始める。
崩れたらまた積めばいい。そんなのはここの共通認識だ。勝った負けたの話じゃない。
「き、貴様…!!」
何故かヒートアップする黄色鬼。
ガツン
何かで後頭部を殴られる。
あー、また頭割れたかな?
俺は立ちあがろうとする。
「なんで! なんで貴様だけ、平気なんだ!? 特別なんだ!」
バコッ
今度は背中からの一撃。
身体中が悲鳴を上げる。
そのまま、前のめりに倒れてしまう。
「せ、背中の傷は戦士の恥だ…」
戦士じゃないが。恥の上塗り。
「この、鬼め…」
出る声は小さい。
薄れゆく意識の中、俺の石の塔のあった場所には何も残っていなかった。
目が覚める。どれくらい時間がたったか分からない。
目の前には、背の高さくらいの石の塔があった。
誰が積んだものか?
俺が積んだものじゃないな。石の選択や、積み方の癖がちがう。
なにより、寝たまま塔を積めるほど器用ではない。
「どぉりゃあああ」
俺はドロップキックを石の塔へ叩きつけた。
石の塔はもろくも崩れ去った。
どこかから、視線を感じた気がした。
俺は、また石を積み始めた。




