三途の川の黄色い鬼
鬼がもうひとり、鬼を連れてきた。
肌の黄色い、ノッポな鬼だ。
「新入りでな、研修中なんだ。まぁ頼むわ」
鬼は頭をかきながら言った。
黄色い鬼は目がキラキラしていた。
何を期待しているのか。
「こいつが生意気な死人ですか?先輩!?」
生意気……だと?
「今日からはビシバシ行くからな、覚悟しろよ?」
俺は(俺たちは)今日も石を積んでいた。
黄色い鬼はそれなりの高さになった石塔を、金棒を使って突き崩していく。
足蹴で崩す先輩鬼(赤鬼)とは大違いだ。
罵詈雑言も酷い。
俺たちの職場環境はどんどん悪化の一歩を辿っていた。
俺は石積み仲間に愚痴ってみた。
「新しい黄色鬼は、ちょっと酷くないか?」
「鬼ってもともとあんなもんだろう?」
そうだった。
おかしいのはどうやら俺のようだった。
周りのみんなが死人の目をしていたから、病んでるのかと心配したがそうではないらしい。
ガツン
ついに俺の石が崩されようとしていた。
しかし、俺の石は赤鬼に蹴り倒されてきた歴戦の強者。新人程度が崩せるほどヤワじゃない。
「くそ、この!」
黄色鬼の声がヒートアップしていく。
俺は静かに見守った。なんの感情も湧いてこない。
黄色鬼が俺の方をキッと睨んだ。
「なんだ、この石は!つみなおせえええ」
金棒を振り上げ、襲いかかってくる。
俺はすっと避けた。
こんなのを相手にするために、ドロップキックがあるわけじゃない。
「それくらいにしとけ」
赤鬼が現れて、言った。
ピタっと固まる黄色鬼。
「で、でも、先輩!こんなやつに舐められたら鬼としての威厳が…」
「いいから、今日は帰るぞ。
…じゃましたな」
鬼は火のついたタバコをポイ捨てして、黄色鬼を連れていった。
俺はタバコの火を消して、
石積みを再開した。




