三途の川で昇格する
ある日、彼はこう言った。
「お前もそろそろ、一段上に行く頃だな」
何ということでしょう。あの鬼が。ついに俺を認めたというのか。
頬を熱いものがつたった。
石を積んでは崩され、積んでは崩され。
時には川を流れ、時には川底に沈む。
あの日々は間違いではなかったのだ。
そう、ついに何かを勝ち取ったのだ。
翌日(寝て起きた)、俺は河原の上流に連れてこられた。
道中は、鼻高々だ。
久しぶりに口笛を吹いてみたりした。
「今日からお前はここで石積みだ。よかったな」
そこは、以前とはまるで景色が違っていた。
……見るからに石が大ぶりだった。
そこでの石積みは地獄だった。
いや、まだ地獄には行ってないのだけれど。
大ぶりな石は、重い。形が歪で積みにくい。そもそも積み上がってくると背が届かない。
仕方がないので足場用の石も積まねばならない。
そこを通りかかった鬼が事もなげに蹴倒していく。
繰り返しているのだ。
あの日々を。
さようならしたはずの昨日を。
鬼は積み石にもたれかかってタバコを吸っていた。
「とおりゃぁああ」
渾身のドロップキックが炸裂する。
鬼は平気だった。
俺の積み上げた石の塔は無惨にも崩れ去った。
「積み直しておけよ」
鬼は吸殻をポイ捨てして、次の積み石を探しに行った。
世界の壁は厚い。
俺は吸殻の火を消して、
再び石を積み始めた。




