月のゆうびんきょく
未来の町では、夜になると空にポストがあらわれます。
雲のすきまから、白い三日月が降りてきて、小さな郵便局が開くのです。
看板には「月のゆうびんきょく」。
星の粉がきらきらと舞っていました。
ある晩、女の子が手紙を書いてポストに入れました。
「お友だちとなかよくなりたい。こわがらずに話したい。」
手紙が吸いこまれると、月の局員の小さなウサギがぴょんと飛び出し、
「たしかに、おあずかりしました。朝までに配達します。」とおじぎしました。
月のゆうびんきょくは、ふしぎなところです。
風の便せん、光の切手、星明かりのインク。
どれも静かな夜にしか見えません。
ウサギたちは、夢の列車に手紙を載せて、空の駅をゆっくり走らせます。
次の夜、女の子が窓を開けると、ポストには返事が入っていました。
「話す前に、にっこりすること。話したら、ゆっくり待つこと。大丈夫、月が見ているよ。」
星の切手がきらりと輝き、女の子の胸はすこし明るくなりました。
またある晩、男の子が手紙を書きました。
「ぼくのロボット、うまく動かない。どうしたらいい?」
返事は、光の紙に書かれていました。
「失敗は、夢の地図のしるし。ひとつずつつないでいけば、きっと動くよ。」
男の子は眠る前に、小さなねじをひとつ回しました。
朝になると、ロボットはゆっくりと手をふりました。
月のゆうびんきょくは、魔法のようで魔法でない。
「未来の約束」を運んでいます。
手紙を出すと、返事はいつも「今できる小さなこと」を教えてくれます。
その小さなことを積み重ねると、未来で会える笑顔が少しずつ増えていくのです。
時がたち、女の子も男の子も大きくなりました。
昔もらった返事の束をひらくと、紙のすみに小さく書いてありました。
「あなたが誰かに手紙を書くとき、あなたも月のゆうびんきょくの局員なんだよ。」
ペンを取り、遠くの誰かへと一枚の手紙を書きました。
「話すまえに、にっこり。」
「失敗は、夢の地図のしるし。」
書き終えると、窓の外の空にポストがふんわり光って、手紙をすっと受け取ってくれました。
夜空は静かに深くなり、星の粉がゆっくり降りてきます。
月のゆうびんきょくは、今日も開いています。
誰かの「今」をそっと照らし、その光をやさしく未来へと運ぶために。
そして、あなたが窓を開けたら、ほら。
小さな返事が、もう届きそう。




