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異世界転生したら処刑投票の村でした〜死に戻りを繰り返して人狼ゲームを勝ち抜く〜  作者: 妙原奇天


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第3話「信じる声、崩れる夜」

 鐘が三度、村を震わせた。

 俺は立っていた。二度の死を経て、三度目の朝を迎えた俺は、もはや「ただのよそ者」ではない。ループの記憶を背負い、歯車の狂いを読み取る存在だ。


 人々の視線が俺に集まる。昨日の昨日と同じ顔ぶれ。だが、ほんの少しだけ空気が違う。塔から見つかった部品。吊台に刻まれた印。ミナの揺るぎない瞳。


「俺はリク。もう三度目だ」

 名乗りと同時に、声を張る。「狼は、この村に潜んでいる。昨日も、一昨日も、俺を吊っても終わらなかった。それが何よりの証拠だ」


 ざわ、と人の輪が揺れる。

 レナが口元を歪めた。「まだ続けるの? 繰り返してるなんて、誰が信じるのかしら」

「私が信じる!」

 ミナが声を張り上げた。小さな体からは想像もつかない力強さ。


 その言葉が広場の空気を裂いた。

 カイの槍先が俺に向くのは変わらない。だが、その眼差しは、昨日までよりわずかに長く俺を観察している。



 投票の前、俺は深呼吸をした。

 レナは油断している。踵の泥、鐘の部品――彼女の周囲には不審の影が落ちている。

 けれど、この村に潜む狼が一匹とは限らない。むしろ二匹以上。あの夜の惨劇が、その証明だ。


 木こりの死体。胸を噛み砕かれたあの光景を、俺は忘れない。

 吊った俺が狼じゃなかったなら、他に本物がいる。



 投票が始まった。

 ドルンが最初に震え声で俺を指差す。「昨日も一昨日も、同じことを言ってた! やっぱり怪しい!」

 レナが笑う。「そうよ、言葉だけならいくらでも繕える」

 エダが十字を切る。「狼かどうかは神がご存知だ。だが掟に従う」


 同じ流れ――いや、わずかに違う。

 ミナが一歩前に出た。「私はレナに入れる。理由は昨日と同じ。泥の跡。それに、鐘の部品が隠されていた場所を最初から知っていたように見える」


 広場がざわめく。

 レナの口元が固まった。「子どもが、何を――」

「子どもだからこそ分かることもある!」

 ミナは叫んだ。「リクが嘘をついていないって、目を見れば分かる!」


 その一言に、俺の胸が熱くなる。

 仲間――初めて、俺に票を重ねる者が現れた。



 だが現実は甘くなかった。

 カイはやはり俺を指す。「証拠がない。繰り返していると言うが、証明できん」

 火傷の女はレナに票を入れる。木こりはいない。昨日の夜、狼に殺されたから。

 痩せた青年は俺。寡黙な老婆も俺。


 結果は拮抗した。

 俺とレナ。票は五対五。


 静寂が広場を覆った。

 老人が目を細め、杖を鳴らす。「同数……掟は決して無効を許さぬ。もう一度だ。話せ。互いに、理由を」


 心臓が高鳴る。

 俺は息を吸った。「俺を吊っても終わらなかった。それが真実だ。狼はまだここにいる。証拠は夜の犠牲者が示した!」

「違う!」レナが割って入る。「奴は怪しいことばかり! 名前を思い出せなかった、記憶が曖昧、挙げ句には“死んで戻る”だなんて――」


 ドルンが呻いた。「でも……昨日、塔から部品が見つかったのは事実だ」

 エダが震える。「神は……沈黙している」


 人々の視線が揺れる。天秤の皿が、左右に傾き続ける。



 夜が来た。

 再投票は結局、俺を選んだ。理由は単純だ。掟に従うなら、よそ者を先に処刑する。それが最も「安全」だから。


 また縄。

 また死。

 また暗闇。


 ……そして、目を開けば石畳の広場。鐘の音。



 四度目の朝。

 俺は悟った。繰り返すだけでは駄目だ。証拠を積み上げ、流れを変えなければならない。


 だがそのとき、耳に声が届いた。

「リク」

 振り返ると、ミナがいた。小さな唇が震えている。「……聞こえる? 夢で、あなたの声を聞いた気がする」


 背筋に衝撃が走った。

 ミナ――彼女の心にも、ループの残滓が残っているのか?


 なら、まだ諦める理由はない。

 俺は必ず、この村の歯車を正す。

 狼を暴き、犠牲を止めるまで。



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