第96話:ルシアンの本気が試されている
ルシアンの国王就任から半年が過ぎた頃、ララに対して面白半分でお茶会に誘う令嬢たちが現れた。
「何なんだ!この令嬢たちは!」
そう怒りを露わにするのは兄のシャルルだった。
「お兄様、仕方ありませんわ。皆さま、ルシアン様に近付きたい方ばかりですもの。」
「しかし、興味だけではないだろ?明らかにこの内容だとお前を馬鹿にしようと策略しているのが目に見て取れるじゃないか!?」
「ふふふ、お兄様ったら。本当に…。」
「な、なんだ?」
ララは本当に自分の事を心配してくれる兄の存在が嬉しかった。母とは少し距離が縮まった感じはあるが、父とは未だに距離がある。父にとって娘とは結婚でしか価値を示す事が出来ないものだと思っているのであろう。それが手に取るようにわかるのでララは父に心を開く事が出来ないのだ。
〝こういう父だからルルはあんな風になっちゃったのね…。〟
少しルルに同情した。だけどルルにされてきたことは許せないことが多かった。
「さて、お返事を書きましょうか…。」
そう言ってララはペンを執った。シャルルはまだ苦虫を嚙み潰したような顔をしてこちらを見ている。
「お兄様、どうせお父様から外出禁止を言われてるのですから、そんなに心配されなくても大丈夫ですわ。」
「はっ、それもそうだな。」
そう言ってシャルルは大笑いした。
〝この人が本当にあの側妃の影を気絶させただなんて…。〟と思いながら兄を見てララは微笑んだ。
前国王はルシアンに宣言した通り、避暑地へと居住地を移し、どうやら平穏に暮らしているようだ。
ルシアンは思うこはあれど、自身の父なのでたまに様子の報告を受けていた。
執務をしながらララの事を思い出しては手が止まった。
〝ララ、あと3ヶ月過ぎたら君と離れて一年になろうとしているよ。君はまだ侯爵家の中から出られないようだね。その間に僕は自分の身の周りを固めて盤石な体制を整えてそれから君を迎えに行くからね。〟
そしてルシアンは再び執務を開始した。時折、側近であるシャルルからララの様子を聞きながら…。そして自身に迫ってくる令嬢達を見事にかわしながら…。
困ったことは大臣クラスの貴族から〝娘とどうか…。〟とお見合いの話を持って来られることだ。
取り敢えず大臣の顔を立てるために見合いの席を設けはするが、令嬢に直接断りを入れた。そうしているうちにルシアンに迫る令嬢がいなくなっていった。
大臣たちは世継ぎの事も案じてルシアンに婚姻を迫るが、頑なに首を縦には降らなかった。
そこで大臣の一人が奇妙な話をしだした。
「陛下は昔、ファモアーゼ侯爵子息として活動されていた頃、一人の女性と噂になったことを皆ご存知か?」
その言葉で大臣たちはハッとする。
「まさか!陛下がどんな女性も寄せ付けぬのはあの時の令嬢が?!」
「その可能性は十分にあるぞ。」
「どこの令嬢だったか?」
「そもそもあの令嬢は皇位剥奪になった殿下の婚約者では…!」
「・・・・・・!」
そこで大臣たちは黙ってしまった。皆がその先を察したからだ。
だが、一人の人物が言葉を切った。
「では、隣国などから探してみてはいかがか!」
「おおー、国が絡めば陛下も断り辛いであろう。」
「その案があったか!」
そういうやり取りでとうとう隣国へと見合い話が持ち上がった。
それを議事会の場で大臣たちが陛下に進言する。
するとルシアンは声を大きく張り上げて拒絶を示した。
「私の婚姻は私が決める!国をきちんと導ければ私の伴侶が誰であろうと問題はないはずだ!」
大臣たちはあまりにものルシアンの発言に皆が黙ってしまた。確かにその通りだ。国が安定していれば王の伴侶は誰であっても問題はないのだ。醜聞があったとしてもそれも関係なくなる。
「陛下…。もしやあのお方を想っておられるので?」
ルシアンはその言葉に強く反応した。
「誰のことか、わかっておるのか?」
「はい…、皇位剥奪された殿下の…。」
「ああ、そうだ。彼女以外では考えられないのだ。だから見合い話をいくら持ってきても全て却下だ!」
「左様でございましたか。われら老婆心で申し訳ござません。」
「…………。わかってくれればよいのだ。」
そうして議会はそのまま進んでいった。
それ以降、大臣たちからルシアンに見合いの話は来なくなった。
代わりに侯爵家へと大臣がお忍びでやって来た。
「大臣殿がどうして我が家へ?」
クレハトール侯爵は驚いていた。同じ侯爵位ではあるものの、相手は陛下に選抜されたのだ。そんな彼が自分を訪ねてきて頭を下げたのだ。
「クレハトール侯爵、お主に願いがあって来た。」
「とにかく中へ…。」
こうして一人の大臣がクレハトール侯爵家を訪ねて当主に直接話をつけに来たのだった。
ご覧下さりありがとうございます。王になったら世継ぎ問題は必須ですからね…。大臣たちが必死になるのも理解出来ます。




