第95話:別れ…そしてルシアンの戴冠式
ひたすら馬をクレハトール侯爵家へと走らせた。ルシアンが到着するとどうやらついさっき馬車が到着したようで荷物を下ろしている。
〝やっぱり…!〟
そしてルシアンは侯爵に挨拶をしてララを呼んでもらうことにした。
侯爵の応接室で待っているとララがやってきた。
「ルシアン様…?」
驚いているようだったが、ルシアンは
「待っていて欲しいと言ったはずだが?」とララに詰め寄った。
「えーコホン、」と、侯爵が咳払いをして
「二人でしっかり話合いなさい。」そう言って応接室を出て行った。
侯爵が間に入っていなければきっとララにもっと詰め寄って抱きしめて口付けをしただろう…。ルシアンは少し、侯爵に感謝した。
「すまない。君がいなくて不安だったんだ…。」
そうルシアンがララに謝るとララも
「ご心配をおかけしてすみませんでした。」
とルシアンに謝った。
「どうして王宮を出たのだ?」
話は戻された。ララは伏し目がちにルシアンに答えた。
「王宮へは第一皇子様の婚約者として居住していた訳ですから、今は違いますので出て行くのが良いと判断したのです。」
「だが、僕との将来を考えてくれているのだろう?」
「ルシアン様…。私は〝出戻り〟になります。そんな私がルシアン様の傍に居られるはずがありません。」
ララはそう言った。
「ララ!僕の目を見て!もう一度、その言葉を言えるのか?」
ルシアンは目を伏せたままのララの言葉に本心ではないことを見抜いていた。
「でも…!醜聞が!」
「僕はそんな事、気にしない!」
「……………皇太子となるお方に、そういうわけにはまいりません。」
ララの意思は固そうだ。だが、ここで引き下がるルシアンでもない。ずっと恋焦がれていた相手がもうこの世にいないと知ったあの日のことを思えばルシアンはどうしてもララを手に入れたいのだった。
「ララ、僕は皇太子にはならない。」
「えっ!?」
「僕は皇太子にならずに国王になる。」
「だったら尚更です!あなたの将来に差し支えるようなこと、出来ません!」
ルシアンは困った。
「では、こうしよう。僕が王になり、ひと段落したら僕と婚姻してくれるか?」
「ルシアン様…。どうしてそこまで…。」
「言っただろう?僕は君を一度失ったと思っていたんだ。もう二度と君を失うなんて事はしたくないんだ。君の気持ちも尊重したいから、僕はそれまで待つよ。」
流石にララも断れなかった。
「そうだね、多分、2年もあれば色々と落ち着くんじゃないかな?」
そう言ってルシアは微笑んだ。
「そうですね…。2年…。待って下さい。その時もまだ気持ちが変わっていなかったら、もう一度仰って下さい。」
そう言ってララは涙を流しながらルシアンにほほ笑んだ。
この世界では婚約解消や、離縁、などをした女性は〝出戻り〟と呼ばれ、女性側に問題があったとみなされ、その後の結婚に影響があった。ましてすぐに結婚したり婚約した場合は更に醜聞の対象となる。
ララの場合、侯爵家という後ろ盾はあるが、王家との醜聞なので他の貴族たちから目の敵にされてしまうのがオチだからだ。
すると王になったルシアンの政敵にもなるし、悪い事尽くしとなるのが目に見えていたのだ。
ルルのように感情に流されては二人とも破滅へと向かってしまう。その事も踏まえて落ち着いてララは二人の将来を考えてルシアンを拒絶したのだった。
すぐにでもララに触れたい気持ちを抑えて、2年を耐える決意をするルシアン。そしてララもルシアンの胸の中で安心を得たいのを我慢してルシアンとの距離を保つことにした。
侯爵はララからその話を聞いて愕然とするも、ララの判断が正しいと認識し、当面、ララには侯爵家から出ないようにと命じた。
その三か月後、国王からルシアンへと王位を譲る戴冠式が執り行われた。
空は真っ青で雲一つない晴天だ。木々も時々吹く風に揺られて心地よい。そんな素晴らしい日に式は行われた。
立派な姿を披露したルシアン。皆が「まさか!あのファモアーゼ侯爵子息が第二皇子で国王になるとは…!」と、驚きの様子を隠しきれなかった。
令嬢達は今までは近寄りがたいと言って遠巻きに見ていたが、国王となる彼に身分の面でもより一層近付く機会を狙って激しく水面下で争いが行われていた。
素晴らしい戴冠式なのにララは外出禁止命令が侯爵から出ていたので参列出来ず、静かに邸からルシアンの戴冠式に祈りの心を寄せた。
そしてララが参列しない戴冠式はルシアンにとってはとても空しいただの行事でしかなかった。
〝ララ…。僕は君と一緒にこの式典に挑みたかったよ。だが、次は婚姻式を僕と共にしてもらうからね。〟
そう深く決意していた。そして父王である国王から〝国王の冠〟を頭に授けられ、ルシアンの国王としての挨拶となった。
「皆のもの。ルシアンだ。新しくこのスクラバ皇国の王となった。まだわからないことが多いが、どうか支えて欲しい。そして良き国になるよう力を貸して欲しい。スクラバ皇国の未来に栄光あれ!」
そう宣言すると会場からは〝ワー!〟と歓声が上がった。そして無事、式典が終了した。
その後、ルシアンは国営人事を行って自身に動かしやすい人物を配置した。新しい人員は皆、積極的に国のための提案を発言し、行動に移した。ルシアンは寝る時間を削ってまで制定に時間をかけた。
ご覧下さりありがとうございます。やっと二人が一緒になれると思ったらララはちゃんと二人の将来を考えて行動しておりました。




