第90話:それぞれの運命の行方…
夜の町の酒場は今日も変わらず賑わっていた。
自身の母がそんな目に遭っているとは露ほども知らないパドルは今日も酒場に来ており、マリーをずっと口説いていた。
「俺はな…、本当はマリーとずっと一緒に居たいんだよ。政略結婚なんてしたくない!マリーだけいてくれれば全て投げ捨てても構わないんだ!俺じゃなくたって回るんだから…。」
「はいはい、わかったよ。パドが私をすっご~~~~く愛してくれてるって!」
「そうだよ、愛してるのは君だけなんだ…。やっとわかってくれたのか?」
「ふぅ、そういう事は……………シ・ラ・フ!の時に言ってよね!」
そう言ってマリーはパドルの頭を軽く〝ゴツン〟と叩いた。
「ほら、飲みすぎ!もう今日は帰った!」
そうマリーに促されて仕方なく酒場を出ようとしたところに王室騎士団の中の数名が扉の前に居た。
「……………‼ びっくりした!目ぇ、覚めた…。」
マリーはその声がちょっと気になって覗いていると
「第一皇子、パドル殿。貴殿に逮捕命令が出ております。」
と言うではないか。
〝パドが…第一皇子!?聞いてないけど…!〟驚くマリーはそのまま様子を見ていた。
「は?何のことだ?俺に逮捕命令?何かの間違いだろ?」
「いいえ、あなたの母君が第二皇子様暗殺未遂で逮捕され、その元凶となるあなたも逮捕されることとなたのです。ご同行願います!」
「はっ!母上がとうとうやらかしたのか!ハハハ!これで俺は自由だ!」
騎士達はパドルが気でも狂ったのかと思って不思議そうな顔をして互いを見合った。
そんな時、酒場からマリーがパドルに駆け寄る。
「パド!どういうこと?」
「マリー。すまない。俺は第一皇子のパドルだ。何やら母がやらかしたものが俺にも問われてるらしい。無事、戻ってくることが出来たら、その時は俺と結婚してくれるか?」
「パド…。」
「ああ、その時、またプロポーズするから、それまで誰の者にもなるんじゃないぞ?」
心配そうに見つめるマリー。
「じゃあ、行こうか。」
そう言ってパドルは酒場をあとにした。マリーは連れて行かれるパドルを見送っていた。そして酒場にいたみんなが口々に驚いていた。
「あのパドが第一皇子様だと?」「びっくらしたな!」
そんな声を聴きながら、マリーはずっと見えなくなるまでそこに立っていた。
〝パド…、私はどんな立場のあんただって構わないんだ。あんたが自由になれるんだったらそれでいい。〟
所変わって王宮の中のララに与えられた部屋。
何やらルルが騒がしく部屋に戻って来た。
「もう!ララってば!何であんたはそんなに呑気なの?!今、王宮が大変なのよ?」
「どうでもいいけど、ルル、あなた身重なんだからもう少し行動を…」
「あー、もうっ!そんなことよりも!聞いた?側妃様!」
「……………?」
「その様子じゃ、まだ何も知らないのね。側妃様が逮捕されたんですって!」
「えっ?」
「もう驚きよね!あぁ…。じゃあ、今のこの生活ってどうなるの?」
「……………。」ララは考え事をしていた。ララから言葉が返ってこないことでルルはイラっとしながら
「側妃様が逮捕されたんだから、あんたの婚約も破断になるでしょ?だったらここを追い出されるに決まってるじゃない!だからその先、どうするのって!?」
ルルの勢いにララは〝ハッ〟として
「そうね、そうなったら私は侯爵家に戻ることになるんだわ!」
と返事をした。その返事で更にルルはイラっとして
「私はどうなるのよ?!出来損ないのダンテから離れてあの皇子の妻になるつもりだったのに!なれないじゃない!」
「えっ。ルル、本当に私と入れ替わるつもりだったの?私は嫌よ?そんな王族相手に大罪だもの!」
「あはは…!ララってば!そんなの自分たちからばらさなければわからないって!」
ルルにはもう自分の事しか考えられなくなっていた。自分が優雅に楽して暮らすことだけだ。
「じゃあ、今から荷物をまとめていこうかしら…。」
そう言ってララが立って荷造りをし始めた時、後ろから〝ガツン!〟という音がしてララは意識を失った。
〝ル…ル?〟
そう、ルルがララを気絶させたのだ。
〝荷造りなんていつでも出来るし、私は最後まで諦めないわよ!あんたに成り代わってここで贅沢に暮らしてやるんだから!〟
そしてララの手足を縛られて声が出ないように口にも猿ぐつわを撒かれて奥の部屋へと寝かせられた。それからルルはララの髪色のかつらを被り、ドレスもララの物を着用した。
鏡に映る自分を見て、〝どこからどう見てもララにしか見えないわね。ちょっと冴えないけど、これも幸せの為、仕方ないわ。ふふ。そうね、ララだったら情報がくるまで静かに待っているわね。そうしましょう。〟
ご覧下さりありがとうございます。とうとう第一皇子も捕まりました。そしてララと入れ替わりを画策するルルは……………?




