第86話:ゆっくり進展する二人
ルシアンの部屋の前にいた護衛騎士の一人によって
部屋の中に入る事が出来たララ。
部屋の中にルシアンの姿はないが、きっと寝室にいるのだろうと思って寝室に向かうララ。
思った通りルシアンは寝室におり、起きてベッドに座っていた。
「ルシアン様っ!」そう言ってララは駆け寄った。
「ララ!」
ララはルシアンに駆け寄りベッドの傍でしゃがみ込んでルシアンを見上げた。
「良かった!ご無事で…!」
そう言ったララをルシアンは抱き寄せて
「すまない、君に心配をかけまいと思ったが、どうしても心配をかけてしまった。」
「本当に…。驚きました。でも回復して良かったです。」
「ああ、小さい頃から耐性を付けてきてるから大体は大丈夫なんだ。でもやはりどうしても反応は出てしまうからね…。」
ララは黙ってルシアンを見つめている。
「今回の件で医者である僕の影が証拠をつかんできたんだ。これで君を開放してあげることが出来るかもしれない。」
「証拠があったんですか?」
「ああ、でも、まだ弱いかもしれないが…。」
「皇子様を例え脅し目的であっても毒を盛ることは法律でも禁じられてるのでは?」
「そうだね、もう大人になって耐性もついてるんだし、これは明らかに〝耐性を付けるため〟って理由では逃れられないだろう。」
「私に何か出来ることはありませんか?」
「君って人は……………。お願いだからこれからは大人しく待っていて欲しい。」
「……………はい…。」
そう言ってそっとルシアンはララの唇に口づけをした。ララはそっと目を閉じた。
ララの心臓は爆発しそうなくらいにドキドキと踊っていた。それはルシアンにとっても同じだったようだ。
ゆっくりとララの唇から離れたルシアンは顔を真っ赤にしていた。
「ごめん、いきなり…。」
そう謝ったがララは
「いいえ、びっくりはしましたが、その…。嫌…ではなかったです。」
と答えた。ララの顔は真っ赤に染まっており、その言葉を聞いたルシアンはララをきつく抱きしめて
「だぁ~~~~っ!もう、そんな可愛いこと言うと止まらなくなるから!」
と言った。ララは驚いた。そして触れた身体からルシアンの胸の鼓動がドキドキ…と、すごく早く脈打っているのを感じて嬉しくなった。
〝ルシアン様も私と一緒なんだわ…。〟
二人は恋愛らしい恋愛をしたことがない。思わず抱きしめてしまったあと、ルシアンはどうしたらいいのか困り果てていた。そしてララもそれは同じだった。
ルシアンをよく知っている護衛騎士は部屋の外で二人の気持ちが少しでも近付ければいいなと思いながらも、中々進展しない様子にハラハラしながら立っていた。
その頃、側妃ドロシアは
「何っつ!?証拠を押さえられたやもしれぬとな!」
側妃の影、スペードからの報告だった。
「そうならぬよう、密に茶に触れた侍女を始末するようにと言ったではないか!」
「申し訳ございません。われらが動く前に奴らの方が先にその侍女を捕獲したようでして王宮内で無暗に剣を抜くのは危険と判断して見送りました。」
「……………。確かに剣を抜いて王室騎士団がやって来てお主が捉えられる方が何倍もリスクがある。して、その侍女は今どこに?地下牢か?」
「はい、そのようです。離れの地下牢に投獄されました。」
「ふむ、わかっておるよな?夜に行って今度こそ始末してまいれ。」
「はい、必ずや御心にお応えいたします。」
そう言ってスペードはドロシアの前から消えた。
「あの侍女が口を割ったとしても何とでも言い逃れが出来るが、念には念を入れよというしな。」
そう呟いてベルを鳴らした。────チリン、チリン…。
「お呼びでしょうか。側妃様。」
側妃専属の侍女がやって来て側妃にお辞儀をして指示を待つ。
「昨日、第二皇子が茶会で体調を崩したのだが、今日の様子はどうだ?」
「はい、第二皇子宮の侍女たちからは特に何も報告がありません。どうやら耐性を付けたがために既に回復したものと思われます。」
「そうであるか。はっ、あの男らしいな。」
「それから…。」
侍女が話を付け加えた。
「どうした?」
「はい、昨夜ララお嬢様の姉君であるルルお嬢様が第二皇子の私室を訪ねたとの報告がありました。第二皇子の秘書と共に部屋を訪れ、数分後に退出してきたとか…。」
「ルル嬢が?おかしいな…。面識がある程度でさほど仲がよさげにもそれ以上の接点もなさげだったが…。うぅむ…。」
ドロシアは考えた。
「ハッ!もしやそれはルル嬢に扮したララ嬢だったのやもしれぬな。あの二人、それ程までに親密であったとは…。これはあの娘を利用すれば奴の困る顔を見られるとな!」
ドロシアはニヤニヤが止まらなかった。先ほどの毒の件などもう頭から消えたように…。
ご覧下さりありがとうございます。毒に耐性があるとしても症状が出てしまうのは辛いです。そんなルシアンを心配して朝一番に訪れるララを見てルシアンはララへの想いが加速したようです。




