第8話:初めての折檻と初めての代役
今回も主人公を周りがいじめるシーンがあります。
注意してお進み下さい。
ある日の朝、侍女数人がララの部屋に突然入ってきた。
「え?まだ、朝の仕事まで時間はあるはず…。」
「今日は仕事はなしだよ。ルルお嬢様の代わりを務めてもらう日だからね。」
「え…。そんな急に言われても…。あの子のこと、何一つ、交流関係も知らないわ……………。」
ララがそう言葉を発した時、侍女たちの中のリーダーと思われる人物から大声で怒鳴られた!
「なんて失礼な‼あの子なんかではない!〝ルルお嬢様〟だ!」
ララは〝双子なのに、私のことは〝ララ〟と呼び捨てか、下手したら〝オマエ〟と呼ぶのに!〟と不満に思った。それをその女は見過ごさなかったようだ!
「なんて傲慢なやつだ!誰か鞭を!」
〝へ?そんなことくらいで鞭なんて使うの?本当に?!〟
「侍女頭様。これを…。」 そう言って一人の侍女がどこからか鞭を持ってきた。
侍女頭と呼ばれたその女は鞭を手にして軽く自分の左手に〝パシン、パシン〟と叩いている。
「ま…!待って‼こんなのおかしいわ!」
ララはそう言って抵抗したが、他の侍女たち数人に腕や身体を固定させられて身動きが出来なかった。
「さあ!そこに後ろ向きに立って!」
そう言われ立ちたくなくても押さえつけられた侍女たちによって無理やり立たされた。
そしてスカートの裾をめくって持ち上げられた。
「きゃっ!何をするの!?」
「歯を食いしばっておきなさい!」
侍女頭の女はそう言って右手に持った鞭を大きく振るった!
──────────パシンッ‼!!
鋭い音がララの部屋に鳴り響いた。────同時にララのふくらはぎに激痛が走る!
「うぅぅ…。 」
痛みに耐えているとまた次の痛みが襲ってきた。そう、鞭打ちは一回では済まなさそうだ。
〝な、何回、打つの!?〟
「3…。4…。5…。」
周りの侍女たちが数えている。
「侍女頭様。そろそろその辺りで…。今日はこの女には大事なお勤めがあります。これ以上するとそちらに影響が出るかもしれません。」
一人の侍女がそう提案した。
侍女頭の動きが止まった。
「……………。それもそうね。」
そう言うと女は鞭を床に投げ捨てて
「さあ、ここを片付けて頂戴!とんだ時間を食ったわ。ルルお嬢様の為にもさっさと仕上げてしまいましょう!」
女がそう声を掛けると周りの侍女たちはテキパキと動きだした。
「あなたも…。今、これでふくらはぎを拭きますね。少し血が滲んでいるので…。」
そう言ったのは、さっき侍女頭に提案した侍女だった。
「……………。」
本当はこの人にお礼を言うべきなのだろう。だが、ララはこの人を信頼してもいいのかわからくて何も答えられなかった。ただただ悔しい気持ちがララの心を支配していたのだった。
その侍女は何も言わないララの気持ちを察してなのか、彼女も何も言わなかった。
そして無理やり身支度を済ませ、侯爵の執務室に連れて来られた。
「着飾ると本当にルルそっくりになったな。いいだろう。今日はルルの婚約者と会う日なのだが、ルルが熱を出してしまってな。相手にキャンセルするわけにはいかないから、お前が行って代わりを務めてきなさい。」
「侯爵様!それは無理です!ルル様の癖や好きなもの、嫌いなものもわからないのに…。」
「なに、大丈夫だ。まだ数回しか会っていないからな。その時もルルはあまり話をせずに俯いて返事だけしていたと言うからな。向こうもどうせわからなだろう!」
「そんな…。」
「食事して少し話して帰ってくるだけだ。くれぐれもルルの評判を落とすようなことはしないように!」
「あ…、待ってください。お相手様の情報を…。」
侯爵は自分が言いたいことだけ言って部屋を出て行った。代わりに秘書のサラマンが答えた。
「お相手様はダンテ・プラスタール公爵子息様です。
「……………。公爵…子息?」
「ええ。」
〝公爵と言えばこの侯爵家よりも上位の最上級階級貴族じゃない…。今までそんな高位な方と面識がなかったのに、一体どうしたら…。〟
「ララ殿。私から見てあなたは公爵子息相手であってもちゃんとこなせると思っていますよ。健闘を祈ってます。」
そう言ってララにお辞儀をして部屋から出て行った。
入れ替わりに侍女がやってきた。
「公爵家の馬車が到着しました。ご準備下さい。」
〝-来た‼逃げ場がない限り言う通りにするしかないわね…。〟
ララは覚悟を決めた。
〝そう言えば、子爵家ではやたらとマナーに厳しかったけど、こういうことだったのね。〟
ララは子爵家での出来事でさえ、この家の計画の内であったことが哀しくもあり、苛立たしくもあった。
ご覧下さりありがとうございます。
ララへのあたりが益々厳しくなっていきます。この家の中ではララには拒否権が一切ありません。まるで奴隷のような扱いを受け続けます。この先、ララはどうなっていくのでしょうか。
今後の展開をお楽しみに!