第77話:側妃、ドロシアの思惑とルルの策略
ルシアンは知らなかった。
王宮の庭園から自身の執務室に来るまでに誰にも会わなかったはずだが、しっかりと側妃、ドロシアの手下に見られていたということを…。
そう、ドロシアの影、スペードだった。
「そう、あやつめ、われの餌に喰らいついてきたか!ははっ!」
スペードからルシアンがララを連れて執務室へと入って行った報告を聞いて何やらご機嫌な様子だ。
「ふふふ、今はそうして幸せな気分を存分に味わうがいい、時期にその上質な餌が自分の手に届かないことを実感するだろう。」
ドロシアは国王がルシアンの母、王妃のフラシアばかりを大切にして自身を放置してきたことでルシアン達母子に対してかなり恨みを抱いていた。ルシアンを産んでから徐々にフラシアは身体が衰弱して死んでからというもの、その後はルシアンに強くあたって虐め、食事には毒を盛り込んだ。そもそもフラシアの死にも毒を使用していたほどの恨みだ。
「そう簡単に殺しはしない。この屈辱の日々をお前にも味わせてやる…。」
ドロシアの恨みは相当だった。
所が変わり、ここは町のはずれにあるダンテとルルの新居だ。
「こんな物いらない!下げて!!」
つわりが出てきて食事がままならないルル。邸からついてきた侍女が彼女をかいがいしく世話をするが、満足するはずがない。工夫して持ってきた食事すら跳ねのけてしまうのだ。
粗末な家、家具、敷物、服、そして食事…。贅沢に育ったルルにとっては何もかもが不満であり、相当ストレスがかかっているのだろう。侍女にもきつくあたっている。
ダンテはというと、事情を説明するために王宮へと向かった。
ルルはあの時、ダンテに身を任せたことをすごく後悔していた。〝あの夜…。あの夜さえ…。〟それさえなければ今も変わらず侯爵邸でゆったりと過ごしていただろうと。そして双子の片割れで最後まで仲良く出来なかったララに対してもルルは思いを巡らす…。
〝そう言えばあいつ、ファモアーゼの子息といい感じだったはずなのに、第一皇子と婚約だとか言っていたわね。私がこんな状況なのにつくづく嫌な女だわ…。〟
そう思ってシーツをギリギリっと握った。そしてふと、思った。
〝そうだわ…。前のように入れ替わりをしたらいいなじゃい?第一皇子なんて趣味じゃないけど、彼を誘惑してこの子を彼の子だと言ったら私はこれから先、安泰なんじゃないかしら?ふふっ。〟
ルルは変わっていなかった。ただ、クレハトール侯爵家の皆がララを認めていったためにそれに合わせていただけだったのだ。今もララの存在はたたの〝都合の良い道具〟だった。
「ねえ、出かけるから支度してくれないかしら?」
さっきまでつわりで苦しんでいたが、ララに取って代わる計画を立てたがために必死でつわりを堪えて行動をしようとしていた。
「お嬢様、つわりの方は大丈夫なのでしょうか…。」
「ええ、知り合いに会って相談しようと思うの、そのために準備してくれないかしら?」
「……………。わかりました。」
侍女はそう言ってルルの外出のための支度をしだしました。
〝ダンテのことは好きだったけど、こんな貧乏なのはごめんだわ。〟
ルルの目はギラギラと輝いていた。
そんなルルの作戦を知らず、ララは侯爵邸へと帰って行った。そして入れ替わりでルルが王宮へとやって来た。
「お、お嬢様。ここは王宮では…。」
「ええ、そうよ。ここにララがいるはずだもの。会いに来て悪い?」
「いえ、そういうわけでは…。」
「ちょっとこのままあなたはここで待っていて。」
「え、危険では…。」
侍女がルルを追いかけようとするが
「何を言っているの?ここほど安全な場所なんてないでしょ?」
そう言ってクスクスと笑った。そしてそのまま王宮の中へと消えて行った。
「お嬢様は何を考えていらっしゃるのかしら…。ララ様とは犬猿なのは誰もが知っていることなのに。」
侍女はそう一人で呟いてルルが戻ってくるのをその場で待つことにした。
そしてルルはというと、宮殿の中で王宮仕えの侍女に出会う。
「あ、そこのあなた!」
そう言ってその侍女を呼び止めた。侍女はルルを見てお辞儀をした。
「第一皇子殿下に会いに来たの。案内して下さらないかしら?」
そう堂々と言ってみせた。侍女は首を横に傾げながらルルを見た。
〝ララ様よね…?さっきお帰りになったと思ったのに……………。〟そう思いながら
「今でしたら執務室にいらっしゃるのではないでしょうか?」
と答えた。
「そこまで案内して頂けないかしら?」
「……………。わかりました。」
そう返事をして侍女はルルをパドルの執務室へと案内する。
〝本当にララ様なの?殿下の執務室へ案内しろなんて…。〟
この侍女、実はララには双子のルルがいると知らなかったのだ。ルルはララに見せるために銀髪のかつらまで用意していたのだから。
ご覧下さりありがとうございます。今回、ルルの悪知恵がさく裂しました。ルルが考えるほど、上手くいくのでしょうか…。




