第72話:僕たちは神への、死者への冒涜を侵すのか?!
二人の間に風が通り過ぎた。たまに遠くに見えるはずの海からの潮風が二人の鼻をこする…。まるで4年という年月を一瞬で表すかの如く…。
ルシアンは目の前の人物が4年前、ララと共に自分を助けてくれて、そしてララ同様、共に1年近くを過ごしてきた懐かしい友人であり、仲間なのだ。
「ケイティー、いいよ、敬語なんか使わずに普通に話してよ!」
ルシアンは今、13歳のシアンの姿になっているので言葉遣いは女の子だ。
「あ、あぁ…。嬉しいよ。ありがとう!それにしてもシアン、ちょっと大人びてきれになってきたな。ははは…。」
ルシアンは目の前のケイティーが自分を少女だと思い込んでいて、以前とはまた違った反応をするから妙に落ち着かなかった。だが、ここで会ったのも何かの縁だろう。
「ねぇ、ケイティー。私が去ったあと、ララはいつ亡くなったの?」
その言葉に笑っていたケイティーは真剣な顔になった。
「あぁ…。それが妙なんだよな。シアンが侯爵家に行ってから少しした頃になんかまた子爵家にお客様が訪ねてきてさ、そのあと暫くしてからララが病死したって話があって、葬儀も家族だけで済ませたっていうんだ。だから僕は最後のララにも会っていないんだ…。お客様が来たって日はまだ元気そうにしてたのに、それから数日後の話なんだ。まだ若いし、そんな急になんてあり得ないよな!?」
ルシアンも受け入れがたい事実ではあったが、もっと身近にいたケイティーは別の意味で受け入れていないようだった。
「それって…。もしかして何か裏があるかもしれないと、ケイティーは思ってるの?」
ルシアンがそっとケイティーに聞いた。するとケイティーは静かにうなずいた。
「皆、口にはしないけど、ほとんどの住人は皆、ララの死に関してはおかしなことばかりだと思ってるさ。」
そう答えた。その言葉を聞いてルシアンは〝もしかしたらこの墓は偽装?!〟という発想に辿り着いた。
「ケイティー!疑念を晴らそう!ここを掘り起こすよ!出来るだけ密かにショベルを持って来て!」
ルシアンのその言葉にケイティーもずっとモヤモヤしていたものを解決するためにもそれが一番だと思って大きくうなずき、「わかった!ちょっと待ってて!」と言って自分の家に戻り、納屋からショベルを二つ持ち出した。幸い両親は牧場の方に出かけていて誰にも見つかることなく、戻ってくることが出来た。
そしてシアン(ルシアン)にショベルを一つ渡して、二人はお互いの顔を見てうなずいてから〝ソコ〟を掘った。二人は話もしないで無我夢中でひたすら堀った。幸い、ここにはあまり人が来ないので二人が夢中になっていても何も恐れるものはなかった。
かなりの時間が過ぎていく…。ようやく〝コツン!〟と、何かに当たった。
二人はお互いの顔を見合わせて、慎重に土をどけていった。棺が露わになった。
二人の手が震えている…。〝この中にララが眠っている…。〟そう思うと今、自分たちがしたことはかなりの暴挙だ。このまま棺を開けるべきか、そっと土をかぶせてもとに戻すべきか…。
二人はお互いの顔を見たまま身動きが取れなかった。
〝もし、本当にララが…〟
だが、どう考えてもおかしいという気持ちがメラメラとケイティーの心の奥底から沸き起こった。
その気持ちを後押ししたのは〝子爵家が花が添えないから〟だ。
〝そうだ、家族なのに有り得ない。それに僕があんなにララと親しいのを知っていながら最後に呼んでくれなかったことがあまりにも不自然なんだ…!〟
ケイティーは思い切って棺に手をかけた。そんなケイティーを目の前にしたシアンは咄嗟に自分も棺に手を添えていた。
「せーの!」とケイティーが言って棺の蓋を持ち上げる…。
〝ギ…ギギギ……………〟という軋む音を上げながら蓋はゆっくりと開いていった。
「…………………………っ‼」
二人は驚きのあまり蓋を落としてしまった!
「あ……っぶな!」思わず落としてしまったが、自分たちがその蓋で怪我をすることまでは考えていなくて、もう少しで大怪我をしていたかもしれなかったのだ。
棺の蓋を開けるとそこにはただ枯れた花だけが残っていた。
つまり
誰もそこには入れられていた形跡がないのだ。それは二人が想像した通り、この〝ララの死〟が〝偽装〟であるという確固たる証拠なのだ。
「どうして…そうまでする必要があったんだ?!」
その不自然さに思わず呟いたルシアンだったが、次の瞬間、「ララは生きている!」ということに辿り着いた!
「生きてる!生きてるよ!ララは生きてるよ、ケイティー!」
そう言ってルシアンはケイティーとその喜びを分かち合った。
しかしケイティーはすぐに表情が曇った。そのことにルシアンは気付いて
「どうしたの?ケイティー?」
と声をかけた。するとケイティーからは弱弱しい声で答えが返ってきた。
「ララが生きてるのは嬉しい事なんだが、そうするとララが直前に会ったという貴族と関係があるのかもしれない。そしたら僕なんてララとは身分が違うから釣り合わないよ…。」
落ち込むケイティー。ルシアンはただララが生きていてさえくれればいいと思っていたからそんなケイティーの気持ちに気付いてあげることが出来なかったのだ。
ご覧下さりありがとうございます。とうとうケイティーとルシアンはララの「真実」に辿り着きました。しかし、それに伴い、ケイティーは益々ララとの距離を感じて落ち込み、逆にルシアンは何としてもララを探そうと決意をしていくのでした。




