第69話:やはり…。待っていたのは公爵家からの絶縁だった!
王宮の庭園でパドルと出くわしたララ。パドルからの不思議な問いかけに咄嗟にルシアンの顔が浮かんだララ。次のパドルの言葉についムキになって言い返したララだが、パドルの「君は何に巻き込まれたんだろうね。」の言葉の意図がわからず困惑してしまう。
「殿下…。それはどういう…。」
「あぁ、わからなかったらそれでいいよ。」パドルはそう言って去って行った。
〝結局、殿下は何をどうしたいのか、さっぱりお考えがわからないわ…。ルシアン様のようにしっかりとした考えをお持ちではないのかしら…。〟
ララは将来の夫となるパドルがまだどういう人物なのかわかり兼ねていた。
そしてルルがダンテに妊娠の報告をしたその夜、ダンテが早速両親へその喜びを報告した。
ダンテからその言葉を聞いた公爵と夫人は顔が青ざめた。こんな醜聞はこれ以上にないからだ。
「ダンテ…。妊娠自体はおめでたいことなのだが、順序が違えば公に祝うことが出来ないのだよ、先日お前に言ったように、これは我が公爵家、プラスタール一門の醜聞になるんだ。わかるか?」
「どういうことですか…。父上。」
父、公爵に問うダンテの手は震えていた。どういうことかと問うてはいるものの、ダンテの中で父からの返事は想像が出来たのだろう…。
「つまり、家門を守るためにお前は追放となるのだよ。」
公爵はハッキリとそう告げた。〝あぁ、やっぱり…!〟ダンテは愕然とした。
「それでは僕と彼女はこれからどうしたら…!」
「お前に親い者を1名つけよう。向こうも侍女をつけるだろう。それで二人で生活していくんだ。当面の資金は持たせよう。王都の端に小さな家を与えよう。だが、今後、お前はプラスタールを名乗る事が出来ない。王宮勤めも今後どうなるかはわからない。今夜を持ってお前はプラスタールの家に近付くことさえ許されない。醜聞を撒いたんだ、覚悟しておくがいい。」
父からの容赦のない言葉だった。母はその場で泣き崩れていた。
「そん…な、それほど僕は酷い事をしたのですか?!誰にも迷惑はかけていないはずですが…!」
「ダンテ、〝妊娠させた〟事自体、お前たちは婚約していたのだから不自然ではない。だが、淑女の決まりがあってだな、それを守らせなかった、或いは守らなかったお前に〝当主〟としての自覚がなかったということだ。それ以上の醜聞があるのか?この貴族社会はそんなに甘くないぞ!?」
「……………‼」
ダンテは悔しかった。自分で自分の首を絞めたのだ。そしてルルの首をも絞めてしまったのだ。あの夜、確かに二人の気持ちが重なりあい、幸せで満たされていた。何もかも上手くいくような気がしていたのに…。それを台無しにしてしまったのかと、悔やんだ。
だが、どんなに悔やんでも当主である父の言葉には逆らえない。
「では、私は平民になる、という事でしょうか?」
父は静かにうなずいた。ダンテはそんな父の顔を見てやっと気付いた。父の悲しそうな顔に…。
言葉は当主として厳しいが、その心情は息子の将来を思って悲しんでいたのだった。それを悟ったダンテは
「私が大切にしていた荷物を持って行っても構わないでしょうか。」
そう父に問う。
「あぁ…。大切なものと着替え数着は持っていきなさい。」
「ありがとうございます。それから、私が至らないばかりに申し訳ございません。」
ダンテはそう言って父と母に深く頭を下げた。母はずっと泣いている。
「母上、どうかお体ご自愛下さい。至らぬ息子で申し訳ございません。」
そう言って母の手をギュっと握ってから父にお辞儀をして自身の部屋へと荷物を取りに行った。
ダンテが自身の荷物を整理しているうちに父はクレハトール侯爵宛に手紙を書いていた。ダンテが邸を出ようとした時に父から「クレハトール侯爵に渡すように」と言われて手渡された。
そしてダンテが乗った公爵家の馬車はクレハトールの邸へと向かった。いつもの楽しい道のりが暗く深く闇が纏っていた。
〝この話を聞いてルル嬢は大丈夫なのだろうか…。こんな風になった私でもついてきてくれるのだろうか…。〟
ダンテは不安で一杯だった。
その頃、王宮ではルシアンが第二皇子として徐々に顔を広めていった。頻繁にララが王宮を訪れてはいるが、まだルシアンと遭遇したことがなかった。ルシアンの方がララを避けていたからだ。
彼女にも本当の事を話さなければならない。だが、それは今なのだろうか…。
「とうとう、身分を明らかにすることにしたんだな。」
第二皇子執務室でシャルルがルシアンに対してそう言った。
「あぁ…。」ルシアンは短い一言だけ言葉を返した。そんなルシアンを見てシャルルは言った。
「俺、ララはお前と似合うなって思ってたんだがな、まさか第一皇子に取られてしまうとはな…。」
残念そうに、そしてその言葉の中には〝どうして第一皇子に取られることになったんだ!〟という怒りも混じっていた。シャルルはルシアンが側妃ドロシアに命を狙われているから王宮を出てファモアーゼ侯爵子息として活動してることを知っていた。幼馴染でもあるからだ。二人の出会いは10歳の時だった。
ご覧下さりありがとうございます。今回はダンテに試練が待ち受けていました。まさか親子の情よりも家門を取るとは思ってもいなかったのでしょう。貴族社会、家門の長となる人物にとっては大切な我が子であっても家門全体を守る事を考えなければならないのでした。




