第68話:ルルの妊娠発覚!そしてララはパドルと出会う
ルルが体調を崩して数日が過ぎた。食欲はなく、食べてもすぐに吐いてしまうのだった。あまりにもその状況が続くものだから侯爵夫人はふとルルに問いかけた。
「ルル。一つ聞くけど、月のものは?」
母にそう言われてルルは少し考えていた。そして表情が変わった。
「お母様っ!」
ルルは泣き出しそうな顔をして母に言った。
「まだです…、まだ来ておりません、もう数か月…。」
そのルルの言葉に侯爵夫人は頭を抱えた。
「やっぱり…。」
侯爵夫人はそうポツリと呟き、
「あの日ね?私たちよりも帰りが遅くなった…。あの日以降、注意してきたのでしょう?」
そう侯爵夫人に言われてルルは静かにうなずいた。
「その子はダンテ殿との子供で間違いないわよね?」
「お母様?疑われるのですか?」
「そうじゃないわ。確認よ。」
「もちろん、彼の子ですわ!」
ルルの言葉に今度は母がうなずいた。
「さぁ、ルル。何も心配しないで食べれる物だけ食べなさい。公爵家には私から連絡を入れるわ。」
「お母様待って!その前に彼に話したいの。」
「……………。わかりました。それからにしましょう。安心して。」
「ありがとうございます。」
そしてすぐさま夫人の手配で医者がやってきた。診断は間違いなく、ルルは妊娠していた。
その日の夕方、ダンテがルルのお見舞いにやって来た。
「ルル!大丈夫かい?ずっと体調がすぐれないと聞いたんだが…。」
「ダンテ…。来てくれて嬉しいわ。もっとこっちに来て。」
ルルに促されて彼女の近くに来たダンテ。
「あぁ…顔色が優れないね…。ちゃんと食べれてるの?」
「大丈夫よ、病気じゃないの。」
「え…?病気じゃないって……………。」
ダンテがそう言うとルルはニッコリと笑って
「あなたとの子供が出来たのよ。」
とダンテに告げた。
「え…!?」
ダンテは戸惑った。嬉しい気持ちと不安な気持ちが交互に彼を襲ったのだ。
「ダンテ?嬉しくないの?」
ルルが不安そうにダンテの顔を覗き込む。まだ顔色が思わしくないのに……………。
「あぁ、大丈夫だ。嬉しいに決まってるだろ。嬉しすぎて戸惑ってんだ。僕の子供……………。」
そうダンテが不安になったのは以前、ルルと一夜を過ごしたのち、自身の父母から言われた言葉だ。
〝だが、もし子供が出来でもいたらお前たちの婚姻は認めるが、公爵家とは絶縁する、それでいいな?〟
そう言った父、公爵の言葉だった。
その時はルルとの婚姻を認めてもらえればそれでいいと思ったので深く考えずに返事をしたが、あの夜にしっかりとルルは自分の子供を身ごもってしまったのだ。
〝大丈夫だ、例え公爵家と絶縁と言っても家から出て暮らすだけで援助や公爵家の名前はそのまま使えるだろう……………。〟
ダンテはそう簡単に考えていた。
そしてダンテは先の不安よりも今の喜びを大いに味わうことにした。ルルを抱き寄せてしっかりと抱きしめた。
「ルル、ありがとう。身体を大切にして子供を産んでくれ。」
「ええ、ダンテ。」
二人はこの先、公爵家からの絶縁の意味を改めて知ることとなる……………。
そしてララはというと、婚約式の準備の一環で王宮へとよく呼び出されるようになった。
その間、第一皇子パドルとは2回、会う機会が設けられた。
だが、パドルはいつも黙ったままだった。ララもパドルに必死に話かけるが、パドルはいつも遠くの景色を見ていて、ただ時間が過ぎるのを待っているようだった。
〝そんなに私との婚姻がお嫌なのだわ……………。私だって出来ればまだ婚姻なんてしたくないのに。〟
ララはそう思いながらも「王命」でもある婚姻からは逃れられないのを承知しているので、それなら少しでもいい方向へとならないかとララなりに気を遣って面会していた。
今日はドレスの採寸の為に王宮を訪れていた。
その時、休憩に少し王宮の庭園を一人で出て散歩をしていた時のことだった。目の前にパドルがいた。
ララは咄嗟に気付いていないふりをして引き返そうかと思ったが、パドルの方がララに気付いたようだ。
「あぁ…、君か。」
「御機嫌よう、パドル第一皇子様。」 そう挨拶をしてお辞儀をした。
「いいよ、そんな堅苦しいの、それよりも君に一度聞いてみたいことがあったんだ。」
ララは顔を上げてパドルを見た。
〝この人の声、まともに初めて聞いたかもしれないわね…。〟
「私に聞きたい事ですか?何でしょう…?」
ララはポカンとしてパドルに聞いた。
「ハハハ…。いつもしゃべらないから驚いたのか?僕は用意された席なんてつまらない主義なんだ。そうそう、君に聞きたいことは、君には好いた男はいないのか?」
パドルの変容ぶりにも驚いたが、その問に一番驚いた。そう、一瞬ルシアンの顔が浮かんだからだ。
「べ…別に好いた男の人なんておりません。」
自分の思想に焦ったララは返す言葉がどもってしまった。
「へぇ~、嘘だね。その様子だと気付いていないだけなんだろうな。」
「……………。」ララはどう返していいものかわからず黙っていた。
パドルはそんなララを横目で見ながら語り始めた。
「好きな男がいながら僕なんかと婚姻なんて、本当に出来るのか?」
「失礼ながら、私にはそれをお断りすることが出来ない立場にございます。」
ララは至極真っ当な答えを返した。
「あぁ、そうだった。王族からの求婚は断れないもんな。君は一体、何に巻き込まれたんだろうね。」
パドルは何やら意味深な発言をした。ララはその言葉に隠された本当の意味をまだ知らない…。
ご覧下さりありがとうございます。今回、ルルの妊娠が発覚しました。これから先、ダンテは父が以前言っていた「絶縁」の意味を嫌というほど知ることとなります。




