第65話:運命の雨の夜…
側妃ドロシアは王宮にルシアンが向かっていると影のスペードから報告を受け、今後どう手を打つか考えていた。外はどうやら雨が降り出したようだ。
「雨か…。この夜道、雨が降るとは奴も不運よのぉ、ハハハ!そうだ、パドルがあの娘と婚姻したあと、母親と同じようにゆっくりと少しずつ毒を使って殺してやろう。これはお前と我の真剣勝負なのだから…。」
そうドロシアは呟きながらワインをグィっと飲み干した。
一方、王宮へ向かっているルシアンは王宮近くの森の中で雨に遭遇した。
「チッツ!こんな時に雨が!少しでも早く着きたいのにまるで誰かがその行く手を阻んでいるかのようだ。」
そう呟きながら馬を駆ける綱をギュッと今まで以上に強く握りしめた。雨で道もるかるむし、手綱が滑りやすくなってくる。落馬したらこの速度だ、命取りになりかねないからだ。今、ここで自分がそうなればララを救うことも出来ないと自分に言い聞かせていた。
「僕が知っているララとは違う、もう一人のララ。だが、僕はどうやら君に惹かれつつあるようだ。ララの代わりに君には幸せでいてもらいたいんだ。」
ララへの思いを自分の中でグルグルさせながら必死に馬を王城へと走らせた。
また、パドルはとういうとあの後町へ繰り出していたようだ。いつもの酒場でマリーに心配されながら吞んだくれていた。
「ねえパド。雨も降ってきたし、酷くならないうちに帰んなよ?」
マリーがそう言った。
「いいんだ、マリー。俺は今日帰らねぇ…。」
「そんなこと言ったって店主が困るだろ?」
「じゃぁ、マリーの部屋に泊めてくれよ…。」
パドルはそう言ってマリーの腕を掴んだ。マリーも困り果てている。
〝今日のパド変だ…。このままにはしておけない。〟これは惚れた弱みだろう。必死で身分差を気にして距離を保ってきたマリーだが、こんなに弱り切った自分を自身の前に見せてきたパドに対してその距離感をこれ以上保つことが出来なかった。
「仕方ないなぁ…。ドレスのお礼もあるし、一晩だけだよ?明日になったらちゃんと帰んな?」
そう言ってその日の仕事が終わる時に
「ほら、パド。帰るよ?」と言って連れて帰った。店主はマリーの気持ちもパドの気持ちも理解していたので黙って二人を送り出した。
「あらら…。ちょっと濡れてしまうけど、仕方ないね。行くよ、パド。」
「すまない…。」
そうして二人で雨の降る夜の町中をマリーがパドの手を握って駆けていく。二人はびしょ濡れになりながらマリーが一人で暮らしている家へとたどり着いた。
町から少し離れた一軒家だ。中は家具も少なく、一軒家と言っても食べる部屋と奥に寝る部屋があり、トイレとお風呂場が仕切られたような小さな家だった。
「あはは、びしょ濡れだね、お風呂用意するから適当に座ってて。」
マリーはそう言って外套を脱いでお風呂の用意をしようとお風呂場に向かおうとしたが、その時パドがマリーの腕を掴んだ。マリーはびっくりした。振り向こうとしたがパドが後ろから抱き着いてきた!
「パ、パド…?」
マリーはドキドキしていた。酒場で働いているから男性との接触は多少あるが、こうしっかりと抱きしめられたのは父親くらいなものだ。
「……………。」
パドは返事をしなかった。マリーはどうしたものかと思っていた。心を寄せていたパドに好意を寄せられてしかも抱きしめられていたのだから。
「パド…、これじゃぁお風呂の準備が出来ないよ…?」
ドキドキしながら必死にパドに声をかける。振り向いて
「パド……………ンッツ‼」
そう言った瞬間パドにキスをされるマリー。〝ダメだ…。こんな流されるように……………!〟そう思いつつもマリーはパドを拒めなかった。
マリーの唇から言葉を発しようとしてもすぐにパドが塞いでしまう。マリーはもうパドを拒めなかった……………。
雨に濡れたままの二人……………。外は今も雨が降り続けていてその勢いはどんどん激しくなっていった。
その頃、ちょうどルシアンは王宮に無事到着した。事情を知る王宮仕えの一部の人間に会い、国王への面会を依頼した。
「ルシアン様……………。この雨の中よくご無事で……………。すぐさま陛下に連絡を取ります。ひとまずどうぞお入り下さいませ。」
そう言ってルシアンを王宮内へと招き入れた。そして王と会う前に身なりを整える時間を取ってくれた。
その後、国王の執務室へと呼び出された。
コン!コン!────執務室の扉をノックするルシアン。
「入れ。」
ルシアンは王の執務室の扉をゆっくりと開けた。緊張しているのだ。
「ルシアン、戻りました。」
そう王に挨拶をした。久しぶりに父と息子、二人きりで会う瞬間だった
ご覧下さりありがとうございます。今回、3つの場面を混ぜることで時間が過ぎた感じが伝わればいいなと思いながら書きました。パドルとマリーは両想いなのに身分差でうまく思いを表現出来ないというもどかしい関係でいましたが、この先、どうなっていくのでしょうか。次回もお楽しみに!




