第64話:今、行動を起こす時!
ここはクレハトール侯爵家。最近、ララの周りでちょっとした不思議なことが起こっていた。それはドレスが切り裂かれていたり、夜に寝ようとしたらベッドに蛇がいたり、お風呂場にも蛇がいたこともあった。
〝またルルの嫌がらせが再開したのかしら…。〟とララは思って放置していた。が、どんどんエスカレートしていく。
一方、仕掛けをするダイヤは〝なぜ驚かない!?なぜ恐れない?!〟と、ララの反応の薄さに焦りを感じていた。その件もスペードを通して側妃ドロシアに報告が上がった。
「なんと!あの娘の肝の座りよう!」我は気に入ったぞ!」そう言って高笑いをした。
「まだ正式に婚約をしていなかったはず。どうせならあの娘を奴から奪ってやるのはどうだろうか。」
ドロシアは名案だと思った。あの娘を正妃にして、パドルが気にいっている娘を側妃にすれば何も問題ないことに気付いたのだ。
ドロシアはその話を国王にし、何も知らない国王はパドルを呼びだしてララと婚約するように命じた。
もちろん、パドルは「否」を主張したが、国王から「これ以上の良縁はない」と言われ、渋々了承したのだった。
国王はすぐさまクレハトール侯爵を城に呼び出し、求婚の申し出を伝えた。
侯爵は凄く驚いたが、これは侯爵家にとっても王家と縁が繋がり、願ってもないことだったのでその場で了承をした。
侯爵は邸に戻ってからララを呼び出して王家から求婚があったことを伝えた。
「……………え?」
驚くララ。その場所だけがまるで時が止まったかのように身動きが出来ずにいた。だが、そんなララに容赦なく侯爵は話す。
「即妃様からの強い要望でな、パドル第一皇子様との婚姻を望まれているのだ。もちろん、受けてきたからそのつもりでいるように。」
「そんな…!父上?」
ララは困惑していた。特にお付き合いをしている男性がいるわけでもなく、まして好きな男性がいるわけでもないが、いきなり将来の国王との婚姻はハードルが高すぎた。ララ自身がパドルを好きならまだしも、面識すらないのだ…。
「今度二人の顔合わせの場が設けられる。色々と準備することだ。」
クレハトール侯爵家は当主が決めたことは絶対だ。ララは仕方なく「わかりました。」と一言だけ発した。
そばにいた兄のシャルルもその方針をよく知っているので口出しをしなかった。ただ、ララの心境を思うとやりきれない思いだった。
〝この件、ルシアンは知っているのだろうか…。〟そう思ってすぐさま部屋にもどってからルシアン宛に使いを出した。
シャルルからの使いにより、ララがパドルの婚約者になろうとしている事を知ったルシアン。
しかも側妃ドロシアが強く希望しているとの記載もあり、昨日の仮面舞踏会でのことがバレていたのだと気付いた。
〝自分が浅はかだった、王族は初日のみしか参加しないと思っていたから気を抜いていた。僕のためにララ嬢が…!〟
ルシアンは焦った。彼女を助けられるのは自分だけだ。しかし、それは彼女が願っていることなのかどうか…。パドルにだって思う相手がいるだろうに…。ルシアンは自分がどう行動すれば一番いいのか必死に考えた。
「こうなると僕も公に出る時が来たということだな。それで父上に交渉してみよう。僕の方はパドルよりもファモアーゼ侯爵家子息という形で色々と貢献してきたのだから…。他の貴族にだって同じだ。それでララを開放することにしよう。」
ひとまずルシアンが出した答えはこれだった。
「多分、僕が公に出ると明らかにお義母上が何かアクションを起こすだろう。それが最後のチャンスだ。注意して進むよ。いいね?」
ルシアンは誰かに語った。
「──はい、主。」
そう答えたのはファモアーゼ侯爵だった。つまり、ルシアンの母方の祖父だ。
「では、今から王宮へ行って父上に公言してくるよ。」
「では、もうここには戻られないのですね…。」
「あぁ…。世話になった。ファモアーゼ侯爵。いや…。おじい様、ありがとうございました。僕はあなたがいなかったらここまで生きてこれなかった。」
そう言ってルシアンはファモアーゼ侯爵、祖父を抱きしめた。侯爵の…祖父の手が震えていた。
彼はここを出たらもう自身の権力で守ることが出来なくなることを知っているからだ。王宮でずっとルシアンを守ることが出来ない。自身が王宮に招かれた時しか無理なのだ。もう年齢的に王宮勤めは終了しているからだ。
そうしてルシアンは祖父にしっかりと別れを言って馬に乗り、単身で王宮へと向かった。
そんな時、彼の義母である側妃、ドロシアの元にも影のスペードからルシアンが王宮へと向かっているとの話が伝えられた。
「ほほほ!来るがいい、お前の大事な者を奪ってお前の顔が苦痛に歪むのを見てやろうではないか!」
ドロシアはルシアンを苦しめてから殺そうと考えていた。にっくき王妃の息子だからだ。ドロシアは公爵家の出であるが、王妃は平民の出だと聞いている。そんな平民の王妃に王がべた惚れだった為、この広い王宮の中でずっと孤独だった、そんな恨みをルシアンに向けていたのだった。
「あの女が死んだあと、あの息子を愛せるわけがない!しかもあの憎き女は私が毒を盛って徐々に体力を奪ってやったからな…。」
──────そう、ルシアンの母親である王妃はドロシアの手によって殺害されていたのだった。当時は証拠もなく産後から体調を崩していったため、徐々に弱っていくことにも誰も毒のせいだとは疑わなかったのだ。
ご覧下さりありがとうございます。ララに側妃の計略の元、パドルと婚約をしなくてはならない状況が迫ってきた。それを知ったルシアンが導き出した答えとは?!そしてルシアンの母である王妃を殺害したのは側妃ドロシアだった衝撃の事実!これをルシアンはいつ知ることとなるのだろうか…。今後のお話をお楽しみに!




