第60話:波乱の予感、仮面舞踏会!
ララ達が後にした会場でそのようなことが起こっているとは知らず、ルシアンと二人、馬車の中で明日の舞踏会について話が弾んでいた。
王宮主催の舞踏会は明日で最後だ。最終日には「仮面舞踏会」となっている。皆が好きな仮面を付けて身分すら隠して参加オッケーなのだ。いつもならホールへの入場時に名前を公表するがこの日だけは公表されない。だから身分差のあるカップルですら参加出来るのだ。
例えば、平民であっても資産家なら参加出来る。というのは参加基準が「貴族に準ずる姿での参加」であるからドレスと仮面を用意出来るのなら誰でも参加可能なのだ。
「二人でテーマを決めてその衣装での参加はどうだい?」
「今からそのようなドレスを準備するのは難しいですよ?明日なんですもの。」
「それもそうか…。仮面だけなら実はもう用意してあるんだ。」
そう言ってルシアンは馬車の中に用意していた箱から仮面を出して見せた。
「君と一緒にこの仮面を付けて明日君をエスコートしたい。」
ハッキリとルシアンの口からそう告げられた。ララは心臓が飛び出すのではないかと思うくらい、ドキドキしていた。今まで面と向かって男性からそのように誘われたことがないからだ。
「それは…。もう決まっているのですか?」
「え…。」
「その仮面です。」
と言ってルシアンが手にしていた仮面を指さした。
「では、違う仮面なら一緒に参加してくれるのですか?」とララに向かって言うルシアン。
その表情からは期待と不安、そして期待に対する喜びが混じっていた。
〝そんな顔をされたら……………。〟ララは戸惑っていた。ここで誘いを受けると〝婚約〟という現実が近付いてくるのだろう。ルシアンといるのは楽しいし、とても自然でいられる。それに同じ侯爵家同士だし、何一つ不満はきっとないのだろう。今までの紳士的なルシアンも見てきている。
〝そうね…。彼ならきっと大丈夫ね。〟そう思うのだった。
「いいえ、」そう言うとルシアンはしょんぼりしてしまった。
「その仮面で大丈夫です。」と続けてララが言うと途端に元気になるルシアン。
「もう、ララ。脅かさないでください。」
「ふふ、だっていつもルシアン様のペースなんですもの、なんだかちょっと悔しくて意地悪してみたくなりました。」
そう言って笑った。
ルシアンの中でまだ目の前のララがどんな存在なのかはわからないが、どんどん惹かれていく自分を感じていた。今日一日一緒にいても彼女は決して裏表のない性格だろう、と思えたのだ。それに同じ侯爵家同士だから爵位目当てでもない。まぁ、事実を知ったら驚くだろうな、くらいは思っていた。
そうしてルシアンのファモアーゼ侯爵家の馬車がクレハトール侯爵家へと到着し、無事にララを送り届けたあと自身の邸へ向かう時、途中でルルの乗ったダンテのプラスタール公爵家の馬車とすれ違った。
その時、お互いに何も思わずに通り過ぎた。
時間は流れ、翌日の仮面舞踏会の日、ララとルシアンはドレスの一部カラーを合わせてのコーディネートでの参加だった。
ララの銀髪は目立つので今回はかつらを使用した。よくある令嬢たちと同じブラウンだ。どうやらルシアンも銀髪だからララと同じくブラウンのかつらを使用していた。二人はお互いの顔を見て笑った。
「顔を見るなり笑うなんて…。」と言いながら…。
普段銀髪で見慣れているからどうやら茶髪は似合っていないようだ。
「それだと君の美しさが隠れてしまうな。あぁ、仮面をすることで既に隠れてしまっているか。」
そう言って真剣にルシアンは悩み始めた。
「あのー、ルシアン?今日はバレてはいけないのでこれでいいのですよ?」
ララは笑いながらルシアンに言った。
「はは、そうでしたね!」ルシアンもどうやら仮面舞踏会を今からとても楽しんでいるようだった。
そして会場に行くと、仮面を付けてはいるものの、何となくわかる人もいるようだ。
わかった人物はルシアンがララに耳打ちしてくるのだ。
周りからはあのカップルはラブラブだとでも映っているだろう。そうララは思っていた。
そしていかにもな男性と女性が入場してきた。
その二人に対してルシアンは珍妙な顔をしていた。
それもそのはず。男性は第一皇子のパドルなのだ。そしてパドルが連れてきた女性は…。
行きつけの酒場のマリーだったのだから。
ルシアンはパドルの存在は認識していた。だが、女性は初めて見るから知らなかったのだ。流石にこれは知らないふりをしないと下手に情報をララに共有するとパドルの母である側妃に目を付けられる可能性が出てくるからだ。
ここで少し時間を遡ってみよう。
数日前、パドルはお酒の勢いを借りてマリーをいつも以上に口説いていた。
仮面舞踏会ならマリーを連れて参加出来ると踏んだからだ。
「ハハハ!冗談を、パド!私そんなドレスなんて持っていないから無理っつーの!」
そうハッキリと断られたのだ。しかし、諦めきれないパドルは自身でこっそりとドレスと仮面を用意してマリーにプレゼントしたのだ。
「いやいや、いくら何でもこれは受け取れないって、パド。」
マリーは急に用意してきたドレスを見てパドがお金持ちの伯爵位くらいだと思っていたが、とんでもなく高位な貴族ではないかと心配になってきた。
「マリー。お願いだ。俺がどんな俺であっても俺自身を見て君はどう思っているのか知りたい…。」
パドの熱意にうだされたマリーは「好意は持ってる…。だけど身分があるんだろ?それくらいはわきまえてるさ、私でも。」
そう言ってパドを拒絶した。だが、マリーがパドル自身を見て好意を持っているのならパドルは諦めることが尚更出来なかったのだ。
ご覧下さりありがとうございます。またまた登場人物が増えて物語は複雑になってきました。以前出てきていたマリーです。彼女はこれからどうなっていくのでしょうか。それにより、ララやルシアンはどうなっていくのでしょうか。
お楽しみに!




