第56話:ララとルシアン、初めてのダンス
四人がそれぞれ話に夢中になっている間、徐々に中央ホールのある広間には人々が集まってきた。開催時間もあと少しにまで迫ってきている。今日は王族はお出ましにならず、代わりに王の片腕となる大臣が舞踏会開催の挨拶をすることになっている。
ホール近くに集まった者たちは皆、今か今かと開催宣告をするのを待ちわびている。
そして
「僕らも中央へ行こう。」
そう言ってルシアンはララに手を差し出し、同じくシャルルもリアンヌに手を差し出していた。
ララもリアンヌもそれぞれがそれぞれのパートナーの手を取って静かに中央ホールへと歩み寄った。周りを見ていると同じように歩み寄ってくる人たちもいた。彼らはみな、1曲目からダンスを行うつもりなのだろう。
ゴーン。ゴーン。………………。開催の鐘が鳴った。大臣が皆の前に立ち、挨拶をする。
「国王陛下に代わりまして私、ドラザー・パブリシアンテが舞踏会開催の挨拶を致します。皆様、ご存分にお楽しみくださいませ。」
そう言って〝チリン、チリン、チリン〟と鈴を鳴らした。それを見た演奏家たちは一曲目の曲を演奏する為に前奏を始めた。それを聞いたダンスをする為に集まった人々はそれぞれとの間隔を開けてから、自身のパートナーに向かって互いに挨拶をしてダンスの準備をする。
ララも周りの様子を見ながら合わすようにしてルシアンの手を取った。
その瞬間、1曲目の演奏が始まった。
〝間に合ったわ…。〟と、ホッとしたララ。そんなララを見ていたルシアンは小さく〝くすっ〟と笑ってララを見た。
「まぁルシアン様、今お笑いになりまして?」ララは少しむすっとむくれてルシアンに言った。
「ははは。あなたがあまりにも一生懸命で可愛らしくて…。」
「もう…。何度も舞踏会に参加されてるルシアン様でしたら慣れっこでしょうが私はそうではないので…。」
「ええ、存じてますよ。ぜひ今後も僕と共に舞踏会に参加してもらいたいと思っています。」
「えっ。」
ララはちょっと戸惑った。この流れはパートナーの固定、つまり将来的に婚約に繋がる恐れが出て来る。
やっと侯爵家の令嬢として認識がされつつあるのに、もう婚約者が決まってしまうのは、今まで自由に過ごしてきたララにとってはやや苦痛だからだ。
しかも、顔見知りに近いルシアンのことをそういう対象として見れるのかどうか…。そういう不安もあった。
「あなたとの会話はリズム感があってとても楽しいです。それに教養もおありで、もっと話をしていたくなるのです。」
「そうなのですね。確かに私もルシアン様とお話しているのは楽しく思います。ですが、まだ昨日知り合ったばかり。パートナーの固定はまだちょっと、正直どうしていいのかわかりません。」
ララは自分が今まで見て来たルシアンを信じてみたいと思ったが、今決断するのが怖かったのだ。
ルシアンはそう発言するララをジッと見て、
「そうですね。僕がせかしすぎました。すみません。もう少し社交界に慣れてからの方がよかったですか?僕からすれば親友のシャルルの妹ということで失念してしまいました。」
「いいえ、そのように親近感を抱いて頂いているのはとても光栄なことです。ルシアン様が悪いとかではなくて、私はまだ社交界はそうですが、侯爵家としてもまだ慣れていないからです。」
ルルの言葉にルシアンは〝まただ。侯爵家との間で何かあったのだろうか…。〟そう頭に過った。思わず
「失礼ですが侯爵家と何かあったのですか?」
ルシアンはそう言葉にしてから〝ハッ〟としたようで
「すみません、踏み込み過ぎました。」と言ってララに謝った。するとララは首を静かに横に振って
「いいえ。長く親元を離れていましたので…。ただそれだけですので。」
そう言ってルシアンに「ですから謝らないで下さい。」と言った。
そして「あっ!」とララが小さな声をあげた。どうやらルシアンの足を踏んだようだ。
「構わない、気にしないで踊って。」ルシアンはララにそう言った。「ごめんなさい。」ララはルシアンに謝って、そんなララを見てルシアンはにっこり微笑んだ。
そう、二人はダンスの最中だというのに、真剣な話をしていたのだ。
「さあ、今はダンスの最中だから、その話はまたあとで。しっかりとダンスを楽しもう!」
ルシアンがララに提案した。
「ええ、そうですわね。そうしないとルシアン様のリードが下手だと思われては困りますから。」
「おぉ?言ったね?僕のリードは上手いって絶対に思わせて見せるからね、いいかい?」
「あら。お兄様にして対して闘争心ですか?ふふ。」
そう言ったララをルシアンはクルリンと回転させた。
周りからは「おおー!」という歓声が。
「あら、素敵なターンですわね。」ララはルシアンに言ってほほ笑む。
「まだまだだよ。ちゃんとついてきてね。」
「もう、ルシアン様。私まだまだ初心者でしてよ?」
「ああ、大丈夫だ。しっかりとその点もフォローするから、あなたはただ楽しんで!」
そんなルシアンの言葉にララは少しだけ「ドキン!」とした。
〝フォローをするからただ楽しむようにってまるでシャルルみたい。お兄様のような感じでお兄様ではない男性…。〟
ララの胸はまたドキンと高鳴った。それはとても心地よい高鳴りだった。そしてルシアンのその一言がララをどれだけ安心させる言葉だったのか、ルシアンは知らない。
ご覧下さりありがとうございます。ララとルシアンとして初めてダンスを踊ります。ルシアンはどうしてもララに助けてもらった時のララを重ねて見てしまうようです。これから本当のことをしるまでをどうお話を持っていくか、悩み中です。候補がいくつか頭の中にあるのです。どうするかは、登場人物たちに動いてもらいましょう。




