第52話:戻らないルル!果たして…?!
秘書のサラマンからルルがまだ帰ってきていないとの知らせを聞いたシャルル。時計の針は23時過ぎを指している。
〝ダンテがちゃんと送ってくれるから大丈夫だろうと思うが、未婚の女性がいくら婚約者が同行していてもこんな日付をまたぐような帰宅は醜聞になりかねない。流石にダンテもその辺りはわきまえていると思っていたが、違うのか?!まさか、父上たちよりも遅く帰宅するなんてことはないよな?〟
シャルルは心配した。そしてサラマンに指示をして宮殿へと使者を出すことにした。
「極秘でルルの様子を見てくること。」
その指示を受けたサラマン。極秘だということで、どうやらサラマンが直接行くことにしたようだ。
〝父上達がもし、先に戻られた時は仕方ない、正直に話すしかない。幸い、ルルたちは婚約しているのだから、醜聞になったとしてもそんなに酷いことにはならないだろう。〟
そう思ってシャルルはそれ以上、大事にならないようにと、他の人間には箝口令を出した。
〝時期当主として、出来る事はしなくては…。〟そういう思いで一杯だった。ルルも守るべき妹なのだから。
ただ待つしかないシャルルにとって時計の音がとても大きく聞こえた。
〝ルルはまだか……………。サラマンはどうなった?〟その問答をひたすら繰り返していた。
しばらくすると馬車が到着した音がしたので、シャルルは慌てて玄関に行く。
馬車から降りてきたのは父の侯爵だった。
〝─────しまった!〟シャルルは思わず心の中で嘆いていた。
父が降りたあと、母に手を差し出して母も馬車から降りて二人はシャルルの存在に気付いた。
「どうした?シャルル。」
父が言った。
「父上…。それが…。」
言い淀むシャルル。
「どうしたのです?シャルル。言い淀むなんてあなたらしくないわよ?」
母も心配している。
「すみません。ルルが、ルルがまだ戻って来ていないんです。」
意を決してシャルルがそう言うと夫妻は驚いた顔をして
「何だと!?ルルがまだだと?あいつはまだ未婚だぞ?!」
凄い剣幕で起こり出した。
「はい、サラマンより報告を受けたので、王宮へ使いをやりました。」
「ダンテ殿はどうした?ちゃんとルルを送り届けてくれると言っていたであろう?」
「はい。彼はその言葉は守ってくれると思います。」
シャルルのその言葉に侯爵は深くため息をついた。
「婚約しているとはいえ、まだ未婚なのだ。こんな、日付が変わってしまう時間にさえ戻っていないとは…!ダンテ殿もダンテ殿だ。醜聞になったらどうしてくれるのだ?!」
「ルルのことだからそれを盾にとって次期侯爵夫人になれると思っていそうですね…。はぁ………。」
父の言葉に対してシャルルもつい、本音が出た。
「はっ!そんな確約がどこにあるんだ?!最低限のマナーも守れんやつが公爵夫人としてやっていけるわけがないと判断されるに決まっている!」
父、侯爵は最悪のパターンを連想した。
そんな父に対してシャルルが言葉を挟む
「ダンテはルルを溺愛しておりますから、きっとそのような事にはならないかと…。」
「甘いぞっ!公爵家にはダンテ殿以外にも男児はいるのだぞ?万一、ダンテ殿が絶縁でもされてみろ、それこそルルは露頭に迷う事になるじゃないか?!そしたら我等も公爵家との縁が途絶えてしまう!」
シャルルは絶句した。まさかと思っていたが、ルルの将来よりも公爵家との縁を一番気にしているとは…。流石、産まれたてのララを養子に出すほどの人物だと改めて父の冷酷さに寒気がした。
「とにかく!ここで話しても埒が明かない。私は自分の執務室に行く。ルルが戻ったら来るように。」
そう言って侯爵は自身の執務室へと向かった。母はただオロオロするばかりだ。
「母上、ルルが戻ったら使いを出しましょうか?」
「そうね…。私は何も役に立たないかもしれないけど、居た方があの子も心強いでしょうね…。」
「わかりました。では、それまでお部屋でゆっくりなさっていて下さい。」
シャルルは母に向かってそう言うと、執事を呼んでルルが帰ってきたらすぐに自分を呼ぶこと、そして父の執務室へと向かうことを依頼した。そして自身は自室へと戻ることを伝えた。
シャルルの眠れない夜はこれからが勝負だった。
〝本当にルルにはいつまでたっても振り回されっぱなしだな…。〟
その頃ルルはというと、ダンテとまだ宮殿の庭園にいた。
「ダンテ…。」
「ルル…。嬉しいよ、君が僕のものになったんだって実感が出来て。」
二人は熱い抱擁を交わした。
「早くあなたと本当の家族になりたいわ。あなたに似たかわいい男の子が欲しいわ。」
「あぁ、僕は君に似た女の子がいいな。ここに…宿ればいいな。」
そう言ってルルを抱きしめた。シャルル達が心配しているのをよそに二人は二人で愛を深めていたのだった。
ゴーンと大広間の鐘が鳴った…。大広間の時計の針が1時を指していた。
「あっ、いけない。もうそんな時間なのか!」
「えっ?大変!」
二人はそそくさと身なりを整えて東屋から出てきた。辺りは暗い。舞踏会に来ていた客たちが帰っていった後だからだろう。王宮の使用人が数人だけチラホラと見かける。
「こっちだ。上位貴族は遅くなったら裏口に馬車は回されるんだ。」
そう言ってダンテはルルの手を握って誘導する。ルルもやっと事態に気付いて醜聞を恐れて誰にも会わないことを願ってダンテについて行った。
「お坊ちゃま…。」
どうやらプラスタール公爵家の馬車の御者のようだ。
そしてその隣にもう一人人物がいた。
「お嬢様。」
そう言ったのは、クレハトール侯爵家のサラマンだった。
ご覧下さりありがとうございます。どうやらルルたちは逢瀬を重ねていたようです。我に返ったルルは醜聞を気にしますが、果たして誰にも見られていなかったのでしょうか…。




