第50話:嵐の予感、争いの火種が宿る………………。
中央ホールで次の曲が始まるとシャルルとリアンヌ嬢は手を取り合って踊り出した。中央ホールに注目していた人たちからは時々歓声が挙がり、二人の素晴らしいダンスが人々を魅了していた。ララもその中の一人だ。
〝凄い!流石息ピッタリだわ!しかもお兄様ったら、私に合わせてゆっくりと踊ってらしたのね。凄いテンポ!〟
と、兄のダンス技術に感心していた。
〝そういえば…。〟と、ララは会場内を見回した。
〝ファモアーゼ侯爵子息様がどこにもいらっしゃらないわ…。こういう場ってエスコートする人がいないと入場出来ないのでは…。〟そう思いながらファモアーゼ侯爵子息、ルシアンを探し始めた。あれだけの容姿だ。きっと令嬢達が放ってはおかないだろう…。
〝前から思っていたけど、侯爵子息様も私と同じ髪色なのね…。〟ララは何だか嬉しくなった。父から「汚い髪」と言われ続けてきたのだ。自信をなくしていたが、侯爵子息様も同じとなると、少し安心した。
その場から離れることが出来ない分、会場内をキョロキョロと見回してみたが、見つからず。
〝もしかしたらまた庭園にお戻りになられたのかも…。あれだけのお方、恋人と楽しまれてるのかもしれないわね…。〟
そう思った時、ララの胸が少し〝チクン〟とした。が、ララ自身は気付いていない。
そうこうしているうちに中央ホールでのダンスが終わったようで周りからは拍手が沸き起こっていた。踊っていた人たちは互いに挨拶をしてその場を後にしていく…。
シャルルとリアンヌ嬢も戻ってきた。
「すみません、勝手を言いました。」
「いいえ、かまわないのよ。ね?リアンヌ。」
「ええ、お母様。シャルル様、お誘い嬉しかったです。ありがとうございます。」
リアンヌはそう言ってシャルルにカーテシーをした。
「おいおい、僕に対してそれはないよ?もうすぐ僕らは夫婦になるんだから。」
シャルルがそう言うとリアンヌ嬢は顔を真っ赤にして口元を覆った。そしてその場にいた両家の家族が「おおー」とか「ついに!」とか言って賑わっていた。
ララも「お兄様、素敵ですわね!」と言ってシャルル達を祝福した。
一方、ルルはというと、ダンテと二人でダンスをしていたかと思うといつの間にか中央ホールから消えていて二人で会場から抜け出してきていた。そう、二人で庭園へと来ていたのだった。
「ダンテ様…。今日は沢山ダンテ様とダンスが出来て嬉しかったですわ!」
「僕もだよ、ルル嬢。」
「もう、ダンテ様ったら、その〝嬢〟はそろそろ無しではいけませんか?」
「……!!」
「ふふふ。」ルルはご機嫌に笑った。
「あぁ、ルル。今すぐ君を抱きしめたいよ。」
「ダンテ様!」
「ほら、ルル。僕に対してもその〝様〟は不要だよ?」
「でも…私は侯爵家。ダンテ様は公爵家。爵位が………………。」
そう言ったルルにダンテは口づけをした。とっさのことでビックリはしたものの、ルルもその口づけに応じた。二人はお互いに唇を重ね合わせ、庭園は静かさを取り戻した。
その時間は長くも感じるし、短くも感じた。
唇を離したあと、ダンテはルルの頬に両手を添えて
「じゃあ、こうすればいい。誰か人がいる前では今まで通りで僕ら二人きりの時はダンテと呼んでくれ。」
ルルを見つめながらそう言った。
ルルはうっとりとダンテを見つめて「はい…。」と返事をした。そして再び二人は熱い口づけを交わした………………。
ルル達がそんな風に過ごしているとは思わずに侯爵はリアンヌ嬢のビステア家との会話で盛り上がっていた。どうやら挨拶周りはここが最後のようだ。
クレハトール家がその場で長く留まっているのを見てララをダンスに誘おうとする男性たちが近づいて来た。
「ララ嬢、どうか私とダンスをお願いします。」「いいえ、私とお願いします。」「どうか私と…!」
なんと三名同時での申し込みが来てしまった。しかしララは先程の事があり、複数人で来られると足がすくんでしまった。
戸惑っていたララを見て
「すまない、今日は初めてのダンスで疲れてしまったようだ。またの機会にしてもらえないか?」
シャルルがララの代わりに返事をした。
男性陣は悔しそうにしながらも、相手がこの国で人気1、2を争う人物で爵位もそれなりにあるシャルル相手には何も言えなかったようで、大人しく引き下がっていった。
「ララ、怯えていなかったか?大丈夫か?」
「ありがとうございます。お兄様、お陰で助かりました。ちょっと戸惑ってしまいました。」
「慣れれば君なら簡単にあしらう事が出来るさ。元気出して。」
そう言って励ましてくれた。
時計が21時を指していた。舞踏会は夜遅くまで開催されているが、デビュタントを迎えた子息、令嬢たちは21時に会場をあとにするのが大半だった。
「僕はララと共に今日は戻ります。父上たちは最後までいらっしゃるのですか?」
「ああ、そのつもりだ。ルルは…、ダンテ殿が送ってくれるからかまわないだろう。」
「ハハハ、本当にずっとダンテと一緒だなんて、あいつらしいな。ではお先に。リアン、そういう事だから今日はすまないね。」
「いいえ、シャルル様。」
「明日は共に参加してくれるかい?」
「大丈夫ですの?」
リアンヌはチラっとララの方を見た。
「ああ、僕の親友が役目を買って出てくれたんだ。」
「そうでしたのね。でしたら楽しみにしております。」
そう言って二人は見つめあい、静かに頷いた。
そしてシャルルは両親とリアンンヌの両親にお辞儀をした。ララも一緒にお辞儀をしてシャルルと共に侯爵家の馬車に乗り込んだ。ララにとって夢のような時間があっという間に過ぎていった。
ご覧下さりありがとうございます。ララは何気にルシアンの事が気がかりな様子。そしてルルはダンテとラブラブな時間を過ごしてご機嫌な様子。二人とも、無事に社交界デビューを果たしました。




