第48話:二人っきりの庭園でのひととき
ララはファモアーゼ侯爵子息に向かってカーテシーをして丁寧に助けて頂いたお礼を述べた。
ファモアーゼ侯爵子息、ルシアンはララがお礼を言いながらも、まだその手が震えているのを見つめていた。
「怖かっただろう………………。僕が安全な場所まで案内致します。」
そう言ってララの目の前に手を差し出した。
ララはちょっと戸惑っていた。ファモアーゼ侯爵子息とは何回か面識はあるが、それは全てルルとしてだ。今回、ララ本人として初めて会うのだからどういったリアクションをすればいいのか正直困ったのだ。
「………………?令嬢?」
目の前のファモアーゼ侯爵子息が不思議そうにキョトンとした顔でララを見つめた。
「あ…、はい、失礼しました。よろしくお願いします。」
そう言ってサッと手を差し出して彼のエスコートを受けることにした。
その様子を見てルシアンは目元が緩んだ。
〝本当にこの女性はビックリする程ララによく似ている…。彼女が生きていたらこんな風になっていたのかな。〟
そうララへの思いを重ねていた。本人だとは知らずに………………。
「ところで令嬢はどちらの?」
ルシアンはひょっとしたらクレハトールの親戚なのか?と思いつつララに直接聞いてみた。
「あ、はい。私、クレハトール侯爵が娘、ララと申します。」
〝─────ララ?!〟
その名前を聞いてルシアンは驚きを隠せなかった!
こんなにも外見が似ているのに名前まで同じだなんて…!!これは運命なのか?!とすら思えた瞬間だった。
「私、ルルとは双子ですが、産まれた時から病弱で遠い親戚の元で療養しておりました。ですが、身体も丈夫になりましたので、デビュタントを首都で行う事をきっかけに家族の元で暮らすようになったのです。」
「そうですか…。ルル嬢と双子ですか。どうりでどこか見覚えがあると思ったのです。」
「フアモアーゼ侯爵子息様はルルとは親しいのでしょうか?」
「いいえ、友人の婚約者という程度で特に親しくはないですよ。何度か共に行動する事もありましたが、ダンテと一緒でしたしね。」
そう言ってルシアンはニッコリと笑った。
「そうでしたか…。ルルはダンテ様ととても仲良くて素敵な夫婦になるのではないでしょうか…。」
「あぁ、そうだね。ダンテの方もルル嬢をとても気に入っているようだし、このまま結婚するんじゃないかな。」
そうして二人は広間近くの庭園にある噴水まで戻って来た。噴水の水が
静かに流れているが、時々大きく〝サアァァァ………〟た吹き出したりした。その様子をマジマジとララは見ていた。
そんな彼女を優しく見つめるルシアン。〝もっと彼女の事を知りたい…〟その思いからララに向かって尋ねます。
「ララ嬢は婚約者とかはいないのですか?」
噴水の水が〝シャアァァァ…!〟と噴き出した。二人はビックリしたが、落ち着いてララが答えた。
「えぇ。私はまだ首都に出てきたばかりですし…。」
と、はにかみながら…。
何故だかルシアンは少し嬉しくなって
「そうですか。先程からお話をしているとあなたの知的な部分が見え隠れしていますね。僕はもっとお話しをしてみたいと思いました。令嬢、このあとのご予定は?」
思い切ってララを誘ってみた。ララは少し驚いた顔をしたが、ララ自身もルシアンとの会話は楽しかった。しかし今日は兄と一緒なのだ。勝手は出来ない。
「今日は兄がエスコートしてくれておりますので…。」
「そうですか。それは残念だ。あなたの兄君、シャルルとも仲の良い友人だ。ぜひ、明日は私がエスコートさせて頂きたいと思っているのですが、お話を通してもよろしいでしょうか?」
ララはドキっとした。男性慣れしていないというのもある。もっと話をしてみたいとも思った。だけど淑女というもの、こんなに簡単に誘いに乗っても大丈夫なのかと不安になったのだ。
「あ…、兄が認めるのでしたら………………。」
そう言って顔を赤らめてしまった。
ルシアンはそんな彼女を見て胸が高鳴った。僕の知っているララとは違うララ。彼女はいも自身に満ち溢れていた。そんな彼女を重ねてみるのは失礼かもしれないが、余りにも彼女にそっくりなんだ。もっと彼女を知りたい!そう思っていた。
「では、シャルルに話をしてシャルル経由で連絡をさせて頂きます。」
「はい…。」
二人がそう話をしているところにちょうどシャルルがやってきた。
「こら!ララ。探したぞ?!どこ行ってたんだ!?─────って、ルシアン?!」
シャルルの目にはララは映っていたが、ルシアンは見えていなかったようで、途中でルシアンの存在に気付いたようだ。
「あぁ、シャルル。ちょうどいいところに。」
「─────?」
「明日の舞踏会だが、ララ嬢のエスコートをさせてもらえないだろうか?」
「は?ララの?お前、初対面だろ?」
「あぁ、ちょっと訳あって知り合ったんだけど、話をしていてもっと話してみたいと思ってな。君の許可があれば彼女もいいって言ってくれたんだ。」
そう言って満面の笑みをシャルルに向けるルシアン。
〝ルシアンのやつ、いつララに会ったんだ?!ってか、その笑み、怖いって!微笑の圧を掛けんなって!〟と、シャルルは顔には出さないが、心の中で思っていつつ
「そうか、ララはそれでもいいんだな?」
「ええ、お兄様。」
「じゃぁ、許可しよう。父上には俺から話しておく。」
「ありがとう!じゃぁ、明日の夜、ファモアーゼ侯爵家の馬車で迎えに行くよ。ララ嬢、楽しみにしてる。」
「はい。よろしくお願いします。」
そうしてご満悦な様子でルシアンは去って行った。シャルルは不思議そうな顔をしていた。
〝まさか、ルシアンがララを速攻で気にいるとは…。アイツ、忘れられない女性がいると言ってなかったか?〟
ご覧下さりありがとうございます。ララとルシアンがやっと近付きました。今後、二人があの時の二人であると気付くまで、まだもう少し月日が必要なようです。




