第46話:デビュタントの為の舞踏会の始まり
王城の大広間ではそろそろ皆が集まってきたようだ。床は大理石。天井にはキラキラ輝くシャンデリア。そして大広間の中央のサイドには階上へ続く階段がある。階段には赤い絨毯が敷かれており、その絨毯の端には金色の刺繍でラインが入っていた。その階上には王家の人間が登場するための扉がある。扉の頭上にはテラス状になっており、時と場合によってはそこに王家の人間が姿を現すこともあるのだった。
どうやらそろそろ開始のようだ。
その階上のテラスに王家の人間が現れた。
会場内はざわめき始める………………。
中央に国王、その横に側妃、そして側妃の斜め後ろに第一皇子が立っていた。
皆口々に
「陛下、万歳!スクラバ皇国万歳!」と歓声を上げ始めた。そんな中、「今年も第二皇子は姿を現さないのか…。」そういう声も静かに出ていた。
皆の歓声を聞きながら国王が静かに手を挙げた。すると歓声が沸き起こっていた会場は瞬時に静まり返った。皆、国王からの〝言葉〟を待っていた。
「皆、ご苦労である。これより今年のデビュタント舞踏会を開始する。本来であれば私と側妃が始まりのダンスを行うところだが、何分、私が足を痛めてしまった為、私の代わりに我が息子、第一皇子であるパドルと婚約者がおればその者とのダンスとなるのだが、いない為、我が側妃との親子で踊ってもらおうと思う。」
ザワザワ………………。
「それでは二人とも、準備を。私はここで見ておる。」
側妃と第一皇子は国王に対してペコリとお辞儀をしてその場をあとにした。
少しすると扉から二人が現れて、階段をゆっくりと降りてきて、広間の中央へと歩んで行った。その間、皆静かにその様子を見守っていた。
時々小声で「この様子だと王位継承は第一皇子になるのか?」という言葉も聞こえてきた。
ララはシャルルに小声で尋ねた。
「お兄様は確か第二皇子様の傍仕えをなさっているのでは………?」
「ん?あぁ…。ちょっと第二皇子には事情があってな。お身体が元々弱い方なんだ。」
「それで公の場にあまり出られないのですか?」
「そうだな。」
ララはこういう場には初めてきた。しかし学園に少しだけ行った時に色々聞いたりした話で疑問に思っていたことだった。
しかしララは自身には到底関係ない人物であることですっかり頭の中から消えていたのだが、今日この場に来てそのことを思い出したのだった。
「第二皇子様ってどんな方なんですか?」
「ん?あー、それは俺の口から言えないな。王家のことはどんな情報であれ、トップシークレットなんだから。一般的に公開されてる情報以外で知り得た情報は例え家族であっても言えないことになってるんだ。ま、そのうち会えるんじゃないか?」
「そうなんですね。仕方ないです。あぁ、単純に興味があっただけでそんな深くは…。」
「ハハハッ、そうか?案外いい男だから惚れるなよ?!」
「まぁ!そもそも私とだなんて不釣り合いですわ!」
「シーッツ!」
シャルルがそう言いながら手を口元に充てた時、〝ハッ〟と今静かにすべき状況だったということを思い出した。
「ほら、曲が始まった。側妃ドロシア様と第一皇子パドル様のダンスだ。それが終わったらデビュタントを迎える子とその相手とのファーストダンスが始まるんだ。心の準備をしておけよ?」
シャルルにそう言われて段々緊張してくるララ。視線を会場中央の二人にむけて気持ちを落ち着かせようとした。
〝わぁ。流石親子。息がピッタリ。しかもよく似てるわ。〟
ララはドキドキしながらダンスを魅入っていた。そんなララを横目に見ながらシャルルの口角が上がっていた。
〝側妃様、本当にお綺麗な方だわ…。わぁ、あのステップ、難しいのに全然そんな風に感じないわ!素敵っ!〟
ララは興奮していた。そもそも他の人のダンスを見るのは今日が初めてなのだ。自分と比べるものだから誰であっても「素晴らしく素敵」なのだ。
そうこうしているうちに始まりのダンスが終わってホール中央の二人は互いにお辞儀をした。そして注目している皆に対してもお辞儀をし、顔を上げてから静かに手を振った。
静かになっていた会場が一気に歓声で溢れ返った!そして惜しみない拍手が続く。側妃と第一皇子がその場をあとにし、階上へと消えて行った。
まだ会場内はザワザワと興奮状態が続いていた。
そしてデビュタントの為の曲が準備される。
「さあ!行こうか!」
そう言ってシャルルはララに手を差し出した。
「ええ。」
ララはその手を取ってふたりで会場の中央部へと歩んで行った。
そのふたりの様子を遠くから見ていたのはルシアンだった。
〝シャルルの連れている女性は誰だ?!〟
ルシアンは凄くドキドキした。それは彼女が美しいからではない。ルシアンにとっての命の恩人でもあり、会いたくてたまらない〝ララ〟にそっくりだったからだ。きっとあの頃のララが成長していたらあんな感じなんだろうなと思うほどに………………。ただ、その肝心のララは既に亡くなっているのだから………………。
ご覧下さりありがとうございます。とうとうデビュタントが始まりました。何も知らないララはひたすら側妃のダンスに見惚れています。




