第44話:初めてのデビュタントに向けて!
そんなドタバタな日から数日後、ドレスの採寸が行われた。
ララの公表については慎重に計画をした侯爵。どうやらデビュタントの日に公表するようだ。
だからそれまでにララの存在がバレないように邸宅内でも最重要事項となった。
採寸に関してもルルよりもサイズが一回り小さかった。それは単純に子爵家から侯爵家に移ってきてからろくに食事が出来ずにいたから痩せてしまっていたのだった。
正式に娘として公表することになった限りはララにもしっかりと食べさせることになった。だからドレスの制作もルルと同じサイズで作ることになったのだ。
デザインはルルと色違いにしようということで話がついて夫人がルルの予備として注文した。
そしてシャルルによるダンスの特訓も相変わらず続いていた。また、当日は色んな貴族から話かけられるのが想定されていたので貴族の詳細を頭に入れることも怠らなかった。
この三年で学園に通ったのは一度だけ。他はずっとルルが自分で勝ち取ったものだった。
ルルは学年3位内こそ逃したものの、10位内にはいつもいて、最高ランク5位まで成績が伸びた。これはシャルルが諭した結果とララへの対抗心とがそうさせたのだった。ルル自身が実力をつけたから、だから入れ替わりがあったとしてもさほど問題はなかったのだ。
学園に通わずともララはシャルルがつきっきりで勉強を見たり、独学で勉強をしていた。
そして一人でテラスでボーっとしていた時、ララはつい独り言を呟いていた。
「お兄様って…いつデートしてるのかしら…。」
あの侯爵からの無理に家族扱いさせられた日からシャルルに対しては自然と「兄」として接する事が出来たのだった。
そんな思わず呟いた言葉に対して
「ん?俺の心配してくれてるの?優しいな、ララは。」
誰もいないと思っていたら突然本人が現れてビックリするララ!
「び…、びっくりした!」
「ハハッ、今日は早番だったからね。本当はこういう日にこっそりデートしてたんだよ。」
「そうなんですの?それならよかったですわ。」
「婚約者を悲しませるのは紳士のする事じゃないからね。わきまえてるよ。」
そう言ってシャルルはニカッと笑う。
「でもよかったですわ。本当に〝妹を連れて行く〟と言うことが出来て。」
「そうだね、リアンヌ嬢には嘘をつきたくないし、これでスッキリだ。」
「私もあの部屋の持ち主になるリアンヌ様に会ってみたいわ。」
ララがそういうとシャルルは嬉しそうに笑って
「あぁ、そのうち会えるさ!」
そう言った。
そして2人でテラスに通る風を感じていた。
「いい風だな」
「ええ、本当に…。」
ようやく本当の兄妹となった二人でした。
そんな二人を遠目に見ていたのはルルでした。以前ならその場に乗り込んでヒステリーを起こしていたが、さすがにあれから3年近く過ぎたのだ。ルル自身も少しは自重してきたし、あの時以来、気を付けてきたからだ。だが、本心では二人がどんどん仲良くなっていくことに嫉妬していたのは間違いない。
「お兄様ったら…。ララばかり。もう私には前ほども構ってくれないのね………………。」
そう思ってシュンとなったり、イライラっとしたり………………。とても複雑な感情を抱いていました。
彼女自身、必死にその思いをどうにかしようともがいている様子。
〝きっと器用なララならダンスだって上手くこなすでしょう。それに今回はララの紹介も兼ねているデビュタント。どうしても私よりもララの方が目立ってしまうのは間違いないわ。それも何だか悔しいわね。〟
ララ目線でいくとルルのこの感情は理解しがたい。だが、ルル目線でいくとせっかく楽しみにしていたデビュタントをララの紹介を兼ねているために自身に注目してもらえないかもしれないのだから、心中穏やかではないのは理解出来るだろう。しかし、この時の侯爵家の人間には残念だがルルのこうした気持ちを理解出来る者がいなかったのだ。今まで傍にいた兄でさえも………………。
そうするとまたララへ怒りの矛先が向きそうだ。
ルルはイライラしつつも、グッと我慢をしてその場を後にした。
木々の葉が青々と茂り、ほんのり暑さを感じ始める頃、その歳のデビュタントを迎える子息及び令嬢の為の舞踏会がある。それを皮切りに3日間舞踏会が王城にて行われる。初日はデビュタント、二日目は普通の舞踏会、そして最終日は仮面舞踏会となっている。
ララのデビュタント参加が決定してからはララの髪色は染めずにいた。この頃にはルルの髪色に染めた部分をカットして耳の下あたりまで髪が伸びていた。貴族令嬢の髪は皆、長いため異例ではある。しかし、ララの設定が病気療養だったため、短くてもその分の言い訳としては成り立つというわけだった。
王城にクレハトール侯爵家の馬車が到着する。
クレハトールも上位貴族なので下位貴族からは憧れの的で皆、馬車から降りて来るのを待っていた。
一番最初に降りたのは兄のシャルルだった。シャルルが馬車から降りた瞬間、「きゃー!」という声が挙がった。シャルルは社交界でも人気者なのだ。
そしてシャルルが手を差し出して降りてきたのはルルだった。
「きゃー!ルル様ぁ~!」
ルルも学園でそれなりに人気を集めている。ルルが降りてから父母を待つために移動したのかと思って見ているとシャルルはそのままその場にいたので見ていた者たちは皆不思議そうにしていた。
「次は侯爵様が降りて、婦人をエスコートなさるのではなくて?もしかして侯爵様がお休みなのかしら………………。」
などと口々に言っていた。
馬車のステップにはヒールの脚が見えた。
周りがざわつく………………。
「あぁ………………。侯爵様はおやすみなのね………………。」
しかし、そのあと降りてきた人物を見て皆が更に戸惑うこととなった!
そう、ララだ。
耳下までの髪を結いあげて付け髪を付けてドレスに合うヘアスタイルにしていた。
皆、初めて見る髪色に魅入っていた。
〝まるで月の女神のようだ………………。〟
どこからか、そういう声すら出ていたのだ。
ご覧下さりありがとうございます。ようやくドレスアップして本当の家族との舞踏会に参加となりました。
今回はルルの心境を多めに書きましたが、このあとの舞踏会も無事こなせるでしょうか。




