表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】助けた女の子が実は皇子だなんて誰が思いますか?!  作者: 慧依琉:えいる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/108

第34話:本当のパドルがそこにいた




その頃、城を抜け出していたパドルは子爵家子息という体で街の酒場をうろついていた。パドルの行きつけの酒場は2~3軒あるのだった。特に贔屓にしていたのはマリーが務める酒場だった。マリーというのは平民の娘だった。しかし彼女の容姿は誰もがうっとりするような気品を持ち合わせており、その酒場でも人気の看板娘となっていた。


「よぉ、来てやったぜ!マリー!」


酒場にやってくる男どもはほとんどがこういう言い方をして入ってくる。


店主はいつもぼやいている。


「おいおい、うちはマリー以外にもカワイ子ちゃんもいるし、何たって俺が提供する酒がこの辺りじゃ一番うまいに決まってるじゃないか!」


そう言ったところで男たちは笑うだけだ。


「ハハハッ!店主、それもそうだが、俺はマリーに会いにきたんだ!あぁ、まずそのご自慢の酒を一杯くれ!」


そう言ってイスを〝ガッ!〟と荒々しく引っ張り、その上に〝ドカッ!〟と、これまた荒々しく座った。ここでは身分を下げているし、上位貴族はこない安心感からか、パドルはいつも以上に横柄な態度を取っていた。日頃の母からの執拗な監視に嫌気をさしているからか、本来の性格なのかはわからないが、ここではバドルは驚くほど荒い気性で通っている。



暫くすると


「はいよ、」と、給仕にやって来たのはお目当てのマリーだった。


「よぉ、マリー。今日も綺麗だな。」


「ありがとさん。」


「お前のその言葉遣いさえちゃんとしてたら貴族にだって見えるのにな、ハハッ。」


そう言ってパドルは〝グビッ〟と酒を飲んだ。



マリーはその様子を見ていた。パドルがこのままマリーを厨房へ帰すはずがないということを知っているからだ。


「プハーッツ!」


「今日もすごい勢いだけど、なんかあった?」


マリーが聞いた。



「いや、いつものことすぎてな、この歳になってもまだ母親ってのは口出ししたくなるものなのか?!」


と、つい、口から不満が出てしまっていた。



「あん?パド(パドルのここでの名前)、あんたまだ母親の監視下にいるのか?もう20歳だろ?」


「ケッ、そうだよ。俺はもう20歳なんだ。立派な大人の仲間入りしてるのにまだ子供扱いしやがるんだ。」


「んー、それはパドにも何か問題があるんじゃ?いくら何でも20歳になった大人のする事を一々言うなんてさ、」


マリーとパドの会話を周りはヒヤヒヤしながら聞いていた。

そう、こんな会話を堂々と出来るのはマリーだからだ。それだけパドルがマリーに気を許しているということだ。他の人間なら、言葉遣いからパドルをイラつかせるのだった。


だが、流石に今のマリーの返答には周りは大丈夫かと不安そうに見守っていた。



「あん?マリーもそんなこと言うのか?俺ショックだぁー。」


と、予想外の反応を見せた。



「え…まだ1杯だよな?」と、周りは驚いていた。

パドルはお酒が進むとドンドン弱気になっていくタイプだったのだ。普段は5杯を越えたところで変化が表れ始める。しかし、今日は〝まだ1杯〟。



「は?どうした、パド。お前らしくないな、」


「マリー、たまには優しくしてくれよぉ~~~。」


「やだよ、私の意に反する。ほら、おかわりいるのか?」


「頼む…ついでにつまみも…。」


「ちょい待ちな。」


そう言ってマリーは厨房へと消えて行った。パドルは一人その場に残って思い出していた。


〝そりゃ俺だって母上には感謝してる。だけど、俺は王に就くよりも剣術を極めたいんだ。何なら騎士になったっていいくらいだ。そんな俺の気持ちを知らずに勝手に暴走ばかり…‼〟



そんなパドルの本心は誰にも言えない状況からくる不満だったのだ。王の子だから王位を継げと、周りから言われて好きな事に集中出来ない。政務に興味がないから勉強だって苦手だ。


〝王位なんていらない!ルシアンにくれてやったっていい!〟


本音はそうだが、幼い頃から母から聞かされてきた言葉が素直にそうさせてはくれなかった。


「お前が王位に就かなければあやつがお前を殺すだろう!だからその前に殺すか、お前が王位に就いて、あやつを排除せよ!」


何度も何度も繰り返し聞かされてきた言葉だ。幼いパドルからすればそう呟く母がおぞましい何かに見えて怖かっただろう。母の言う通りに勉学に励んできたが、思うように成果が出ず…。落ち込んでいたパドルに剣を教えたのは宮殿に迷い込んだ知らない子供だった。あとでその子がルシアンだと知って会わなくなったが、パドルに剣の存在を教えてくれた、そんなルシアンを排除なんて出来ないと思った。


〝俺にとって母の言葉は毒だ。あの頃、ルシアンに会っていなければきっと今はルシアンを殺す事ばかり考えていただろう…。〟


パドルの側近でさえ、母の手駒の一人だ。全部筒抜けでパドルは宮殿の中では気が抜けない状況だったのだ。そんなパドルの心境も状況も知らないルシアンは調査報告のまま、パドルを見ていて、彼に王位を渡せないと判断していたのだった。








ご覧下さりありがとうございます。ここではパドルに迫ってみました。母の野望のために幼い頃から随分苦労していたようです。本当ならパドルとルシアンは兄弟手を取り合って国を守っていけたでしょうに、勿体ない話です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ