第29話:あの贈り物がまさかの………………!?
「あんた、何でそれを付けてるのよ?!」
そう言ってルルはララの耳にあるピアスを無理やり取ろうとした。
「……………ったっ!!何するの?!」
「返しなさいよ!! それは私の物よ!!」
ララにはルルの言っていることが理解出来なかった。
「どうしてコレがあなたの物になるの?」
「あんたには関係ない!それはダンテ様が私にくれた物なんだからっ!!」
「な…!!」
驚くララ。
そう、このピアスは昨日、シャルルがくれた物だったからだ。それがダンテがルルに贈ったものと同じだったということだろう。
「待って…!待ってルル!これは違うの!」
「違わないわっ!身代わりの分際で私からダンテ様を盗ろうとするの!?」
ルルは侯爵令嬢らしからぬ勢いでララを責め立てながらピアスをもぎ取ろうとしていた。
「聞いて!ルル!!これはシャルルにもらった物なのよ!!」
ルルの手が一瞬ピタリと止まった。
「……………。お兄様の名前を出したらそれで済むと思ってるのね?」
そう言ってワナワナと震えて再びララを攻撃し始めた。
「本当なの!だからシャルルに聞いてよっ‼」
「なんで私がわざわざ聞くきに行かなきゃならないのよ!?それを返せば済む話でしょ!!」
埒が明かない…。このままでは耳についたピアスをもぎ取られてしまう。ルルはララの事を人間だと思ってもいないのだから…。
「ここで何を騒いでいる!?」
二人の騒ぎが邸内で響き渡っていたのだろう。秘書のサラマンと共に侯爵がそこにいて声を荒げて言った。
〝これは…助かったの?それとも状況は酷くなったの…?〟ララは混乱した。
「お父様っ‼」
ルルは侯爵に駆け寄った。
「あいつが酷いんです!ダンテ様から頂いた大切なピアスを勝手に盗んでつけてるんです!」
「何!?それは本当か!?」
「私が嘘を言っているとでも?」
侯爵は少し黙った。元々この状況ではララの方が不利なのだ。
「お前、そもそも何でこの場にいるのだ?お前に対してこの場の出入りは許してはいないはずだが?」
侯爵はドスの効いた低い声でララに言った。その声を聞いてララは身体が震えるのを感じていた。
「シャルル様に講師をして頂いておりました。ソフィーも立ち会っています。シャルル様にご確認下さいませ。」
「シャルルが?………………。まぁいいだろう。お前のことはシャルルに任せてあるからな。しかし、そのピアスはルルがダンテ殿にもらったものだ。盗むなど言語道断!すぐさま返しなさい。それから罰として地下牢へ3日閉じ込めておきなさい。」
「待って下さい!侯爵様!! このピアスはシャルル様が下さった物です!」
「あんた!さっきからそればっかり!お兄様の名前を出せば何でも通ると思わないで‼」
「うるさい!ルル、お前も令嬢としてもうちょっと淑やかにしろ!」
「……………!!」
ルルは悔しそうに黙り込んだ。そして続けて侯爵はサラマンに言った。
「シャルルをここへ。」
サラマンが侯爵にペコリとお辞儀をしたあと、シャルルの部屋に向かって行こうとした。すると向こうからシャルルが歩いてくる。
「父上、ララが今付けているピアスは僕が昨日彼女に報酬として与えたものです。間違いありません。」
「ではお前はルルが嘘をついていると?!」
「それは僕にもわかりません。ルル、部屋に戻って見て来なさい。」
ルルは先程の侯爵の言葉がよっぽど効いたのか、黙って自室へと去って行った。その後をサラマンもついて行くようにと侯爵からの指示でサラマンもついて行った。
その場に残された侯爵、シャルル、ララは一言もしゃべらずに沈黙が続いた。
〝この親子、ずっと共に暮らしてるのにこんな時でも一言もしゃべらないなんて………………。〟とララは驚愕していた。裏を返せば侯爵のララへの対応も納得出来るというものだ。
暫くしてからサラマンだけがその場に戻ってきた。
サラマンが伏目がちに
「ダンテ殿がルルお嬢様に贈ったとされるピアスはルルお嬢様のお部屋にありました。確認しましたが、全く同じデザインでした。きっと混乱されたのでしょう。」
「……………‼」
一番驚いていたのはシャルルだった。まさか自分が選んだものでルルがララを責めることになるとは………………。
「ララ、すまない。俺のせいで………………。」
「いいえ、シャルル。でも、こんな偶然あるんですね。驚きました。ふふ。」
二人はそう言って和やかな雰囲気になっていた。侯爵は黙って二人の様子を見ていた。
「シャルル。あまり甘やかすなよ。」
と、一言だけ言ってその場を去って行った。
シャルルの手が、拳を作り、ギュッと強く握っていたのをララは見逃さなかった。
〝シャルル……………。〟
ご覧下さりありがとうございます。ピアス騒動はこうして無事落ち着きました。しかし、今後ララはこのピアスを付けるのをためらってしまいますし、ルルもきっと同じ心境になることでしょうね。




