第28話:シャルルからの課題
邸の窓を通して中に薄っすらと明かりが射し込む頃、シャルルが目を覚ました。どうやら考え込んでいるうちにそのまま眠ってしまったのだろう。
〝ん…………。朝か?〟
起き上がり、部屋の中に目をやった。
〝あぁ、夜明けすぎか………………。ん?ララの部屋の方、燈が漏れているな。ずっと起きていたのか?〟
スタスタスタ………………。サッ…………。ピタ…!
続き扉の前まで歩いてきてノックをしようとして手が止まった。
多分、間違いなく起きているだろうが、万一眠っているのだったら起こすのも悪いな、と考えたからだ。また、起きていたならきっと集中しているはずだからその手を止めるのも悪いと考えたからだ。
〝ララを信じよう!〟 そう思ってシャルルは静かに顔を洗ってお風呂を温めなおした。昨夜、考えすぎて用意してもらっていたのに入りそびれてしまったからだ。
その頃ララは本を手に集中していた。〝ちゃんとシャルルの期待に応えなくちゃ!〟と思っているからだ。自分の精一杯を出さないと命の保証がないからだ。
それから窓から差し込む明かりが部屋の中を明るく照らし始めた。夜が明けたようだ。
ララのいる続き扉をノックする音がした。
コンコンコン!
ララは急いで扉まで行き、鍵を開けた。
「おはよう、ララ!朝食を運んできたよ。だけど、確かめもしないで鍵を開けるのは危険だぞ?!」
朝食を手にしたシャルルが言った。
「こちらの扉から来られるのはシャルルだけですよ。」
そう言って笑った。
「そっか?」
そう返事をしたシャルルはテーブルに朝食を置いて、ララに座って食べるようにすすめた。
「今日は俺は非番だから昨日の課題のテストをしてやる。だから食べたら教えてくれ。あっちの部屋にいるから。」
そう言って自分の部屋に戻って行った。
〝温かいうちに頂くとしよう…。〟 貴重な非番を自分のため使ってくれるシャルルに感謝しながら食事を済ませた。
いつもとは逆に今度はララから続き扉をノックする。
コンコンコン! 「シャルル。」そう声をかけた。
シャルルは続き扉を開けてララをシャルルの部屋の隣にある応接室へと移動させた。
成人した、もしくは成人に近くなった貴族女性は例え兄弟といえども二人きりにはならないようにという教えがあるからだ。これは連れ子同士の再婚もあるし、妾や後妻などの諸事情から淑女を守るそういう暗黙の決まりのようなものが作られているのだ。
「さて、ここならいいだろう。ソフィー、君も立ち会っていてくれ。」
「はい、ご主人様。」
「ララ。ソフィーに立ち会ってもらうから、いいな?」
「はい、シャルル。ありがとうございます。ソフィー、ありがとう。」
ソフィーは少し驚いた。ルルと瓜二つのララ。別人であると理解してはいるものの、やはり容姿が一緒だから絶対にあり得ない態度のルルを見ているかのようだったからだ。だから反応に困って黙ってララにお辞儀をした。
そしてソフィーの見守る中、シャルルがララに問題を出す。
「歴代の国王を順番に…………。」
「はい、初代国王は……………。」
「ではこの国の上位貴族の名前を全て挙げろ。」
「はい、まず公爵家は……………」
シャルルの問にララはほぼ間髪を入れずに答えて来る。
〝一晩で…って言ったものの、本当に一晩でここまで答えられるとは思っていなかったな。凄いぞ。〟
「貴族の成り立ちは?」
「はい、まず…。」
「あぁ。そこはちょっとニュアンスが違うな。もう一度復習しておいてくれ。」
「はい。」
「まあ、重要な部分は答えられている。大したもんだ!あとでティータイムが終わったらダンスの指導にうつるよ。踊りやすい…、いや、実践兼ねてドレスアップしておいで。ソフィー、支度を頼むよ。」
「はい。ご主人様。」
「さあてと、それじゃあ、ララ。ティータイムが済んだら俺のダンスをする為の衣装を選んでくれ。これも課題だ。」
「はい…。」
「手渡した淑女のための基本に少しだけ相手男性のことも書いていただろう、それを参考にするといい。じゃあ、またあとでな。」
そう言ってシャルルは応接室を出て自室へと戻って行った。ソフィーも応接室を出た。一人残ったララは取敢えずシャルルからの課題をこなせた安心感から一気に肩の力が抜けたのだった。
「ふぅ~~~~。一晩気合を入れた甲斐があったわ。」
そう気を抜いてララも応接室を出ると廊下でバッタリとルルと鉢合わせをしてしまった。
うわぁ、ルルだ。面倒だわ…。 そう思った瞬間、ルルがララに向かって手を伸ばしてきた。
ご覧下さりありがとうございます。シャルルとの平穏な時間を過ごしていると、ついルルの事を忘れてしまうララ。まさかの鉢合わせでララの身に何が起きるのか?!




