第27話:シャルルがララに出来ること
ララは夕食の時間になっても無我夢中でシャルルに渡された本を読んでいた。
シャルルはちょっと無茶すぎたか?と内心では思うものの、今後他の令嬢からの招待に応えないわけにはいかない…。それはルルの代役としてもそうだが、最終的にララとして参加する時がいつかくるかもしれない。その時のためにも必要だと思ったからだ。
ララに衣装はプレゼントしない。それはルルに奪われるか破かれるだろうからだ。
しかし、本などの知識は一度頭に入れ込んでしまえば誰にも奪うことが出来ないからだ。ララとして人前に立った時、恥ずかしくないように、知識は必要だ。
そうこうしているうちにどうやらルルが帰ってきたようだ。またもや階下が賑やかになった。
ダンテがルルを送って来て侯爵が挨拶をしているからだ。
言葉は聞こえない、声が聞えて来る程度だ。だが、ララは違和感を覚えた。
〝あ…れ……?ダンテ様ってこんな声を張り上げるようなしゃべり方だったかしら…?〟
直接その場で聞いたわけでないし、音が響いていただけなのかもしれないと思ってそれ以上は考えないことにした。
しばらくすると静かになった。
〝今日はこのままルルも寝るかもしれない。明日は学園があるからきっと私と会うのは明日の夕方ね。〟
ララは安心して本のページをめくっていった。
ララの予想通りにルルはその日はララの元を訪れなかった。多分、シャルルも帰宅して部屋にいたからというのもあるだろう。
──────────ポタ…。
〝ハッ〟
インクが紙に落ちた音でララはウトウトしてしまっていたことに気付いた。
〝いけない。染みになっていないかしら…。〟 ララはランプを片手に周辺を見たが、紙が汚れただけで済んでいたのでホッとした。
〝眠気覚ましにお風呂に入ってこようかしら…。〟
この将来の奥さんのためのお部屋にはお風呂場への扉もあっていつでも好きに入ることが出来る。
〝やっぱりお金があるって凄いわ。蛇口からちゃんとお湯が出て湯舟に湯を張ることが出来るんですもの…。子爵家も裕福ではあったけど、侍女のみんなが湯場から湯を運んで湯舟に溜めてくれていたものね…。こんな贅沢に慣れたらもう前の生活が出来なくなるかもしれないわね。ふふ。〟
ララはこのひと時を楽しむことにした。
〝広い湯舟~。あぁ、だめだわ。これだと気持ち良すぎて逆に眠ってしまうかもしれないわね。〟
風呂場には小さな小窓がついており、そこから空が見える。
〝ちょっとお風呂場の明かりを落としたら星が見えるかもしれないわね。〟
ララは試してみた。ランプの明かりを調整して、消してしまわないように…。
すると
「わぁ!すごいわ!星がよく見えるわ!あぁ…、子爵家で見た星空とそんなに変わらない。シアンと一緒に夜中にそっと抜け出して見に行った事が懐かしいわね。」
ララは小窓から見える星空を見て心の疲れが吹き飛んでいった。ただ気がかりなのはシアンのことだけだ。自分のように利用されているのではないか、そればかりが気になっていた。
〝そうだわ。シャルルに話してシアンの無事を確認するのはどうかしら…。〟
ララにとってシャルルは徐々に信頼できる人間へと変わっていた。
〝きっと私が外に出ることは難しいだろうし、今の髪じゃぁ、会ってもわからないかもしれないわね。〟
心が浮足立ったかと思ったらルルの身代わりとして髪染めしていることで落ち込んだ。
〝いつか、ここから逃げ出さなくちゃ!このままだとルルの代役が必要なくなったらまた地下室なんかに閉じ込められる可能性だってありえるわ。〟
ララは身震いをした。そう、学園を卒業したあと、嫁いでしまえば代役は不要になるのだから。
〝今、13歳だから…、あと5年!それまでに何とか逃げるか生き延びる術を考えなきゃ!…と、その前に今与えられたことをしなくちゃ!〟
ララは温かな湯舟から上がって再び本を頭の中に叩き込むためにページを開いた。
ララは本を読みながら紙にまとめることで覚えるタイプだからペンを片手に本のページをめくっていた。
今度はウトウトしないように気合を入れて………………。
そんな風にララが頑張って覚えている時に隣の部屋のシャルルはどうにかララを自由にしてあげる事が出来ないか考えていた。ララが考えた答えと同じことを恐れていたからだ。
〝この家の中だとあいつに人権なんてないからな。いつだってすぐに消されるだろう………………。〟
シャルルは自身とは半分しか血が繋がっていないが、それでもこんな感情になるのに本当の家族である父を始め、母と妹があの態度であることに納得がいっていなかったのだ。だからと言って今は当主である父の言葉一つで何でも決まってしまう。
ララが処分されないようにするためには彼女の価値を示すしかないのだった。
ご覧下さりありがとうございます。ラストの通り、血縁でいえば半分しか繋がっていないシャルル。それなのに本当の家族はララを人間扱いしていないのだ。流石に胸を痛めたシャルルはどうにかしてララを自由にしてあげたいと考えていた。




