第24話:ルルとダンテのデート
ガラガラガラ………………。馬車の車輪が軽快なリズムで回っているように感じる。この馬車の中にはお互いに想いあうダンテとルルが乗っていた。ルルはダンテの見た目と彼が公爵家の長男ということですぐに彼のとりこになった。かくいうダンテの方はルルの美貌とダンテの前で猫をかぶっていたその行動が彼にとっては慎ましく思えたようで、ダンテの方もルルのとりこになって、ダンテ側からの申し入れにより、正式に婚約を結んだという経緯だ。
無事婚約者の立場に収まったルルだが、それ以降もずっとダンテの前では本来のキツイ性格は隠しているようだ。
「ダンテ様、今日は街を案内して下さるのですよね。私、楽しみで…。」
「ルル殿。楽しみにして下さっていて僕も嬉しいです。行きたい場所はありますか?」
「そうですね…。私、あまり外に出た事がなくて、お勧めの場所があればそちらに…。」
ルルにそう言われてダンテも悩んでいた。ダンテが街に行く時はいつも武具店だ。女性の好みそうな場所なんてわからない。だが、ダンテはルルの装いを見て思いついた。彼女の耳元で小さく揺れるピアス…。彼女に贈り物をしたくなったのだ。
「では、ルル殿。ちょっとお付き合い下さい。」
「はい…。」
そうしてやってきたのはアクセサリー店だった。
〝え…小さいお店ね。〟ルルは心の中で思った。公爵家なのだからもっと大きな宝石商にでも行くのかと思っていたのだ。ダンテは公爵家の人間ではあるが、自身は貧乏でこそないが、まだそんなに金持ちでもない。爵位を継ぐまでは家門の方針で自身で稼いだお金しか自由に使えなかったのだ。
「これなんて、どうですか?ルル殿にとってもよく似合います!」
そう言って差し出してきたのは薔薇とリボンをモチーフにした小さなピアスだった。
〝可愛いのは可愛いけど、小っさ…。〟ルルは目を一瞬細めてしまったが、大好きなダンテが選んできた物だ。
「わぁ、ありがとうございます。ダンテ様!とても可愛くて私、すごく気に入りました。」
と、笑顔で答えた。
その笑顔を見てダンテは満面の笑みで「じゃあこれをあなたにプレゼントします。今日のデートの記念に!」と言った。
「ありがとうございます。」と、ルルはお礼を述べた。
〝その気持ちは嬉しいのだけど、今度はもう少し考えてもらわなくちゃ。〟と本心では思っていた。
そして二人でアクセサリー店を出て少し歩いていた。そんな二人の前に馬に乗って目の前をルシアンが横切って行った。
〝あれは…。ルシアン…。〟ダンテはルシアンなら自分たちに気付くはずなのに気付かずに駆け抜けて行ったことに少しびっくりしていた。
ララはそんなダンテを見て「どうしたのですか?」と声を掛けた。
ダンテは「いや、大丈夫だよ。向こうに公園もあるし少し歩こうか。」と言ってルルをエスコートした。
街は活気にあふれていた。先程のアクセサリー店のある通りは貴婦人がよく来るから市民はあまり通らないが、噴水のある大広間まで来ると色んな人が歩いている。
〝もう…。こんなとこ、長くはいたくないのに…。〟そう思いながらもダンテのエスコートで通りを歩いて行くルル。
噴水の所まで来ると一人の男が座っていた。
ダンテはその男が誰なのかすぐに気付いた。
「ルシアン…。こんなところでどうしたんだ?」
そう、その男はルシアンだった。
「……………。ダンテ…。」
ルシアンはとても元気のない声でダンテの名前を呟いた。ダンテは驚いた。
「な…!何があったんだ?ルシアン!」
そして横からルルが顔を出した。
「あのぉ…。どうかされましたか?」
その声にルシアンはルルの方を見た。
ルルとハッキリと目があった。
紅い瞳!髪色はつややかな金色だ。だが、顔立ちはララにそっくりだった!
ルシアンはルルの顔を見て目を細めて眉が曇る…。今にも泣き出しそうだ。
ルルはそんな顔をされたことがなかったので驚いた。
〝なんなの?こいつ、私が声をかけてあげたのに…。〟
「クレハトール令嬢…。ありがとう、大丈夫だ。」
ルシアンは声を振り絞ってそう答えた。
「……………?誰?」もちろん、ルルには返答のしようがない。ルシアンとは初対面なのだから。
その反応にダンテもルシアンも驚いた。
「ルル殿、この前、テスト初日に僕と一緒にルシアンに会ったのを忘れたのですか?」
「……………‼」〝ララってば、こういうことはちゃんと言っておきなさいよね!〟
「あ…、あぁ、思い出しましたわ。ルシアン様。」
ルルは周りの反応からそう答えた。が、これも不正解だ。
「初対面に近い状態で名前で呼ばれるとは…。あなたは侯爵令嬢なのですよね?」
ルシアンはイライラしていたのか、ルルにそうきつく言ってしまった。
「ご…。ごめんなさい、あの日はテスト初日で緊張していて、ちゃんとお名前を憶えていなくて…。」
と、上手く言い訳を考えた。
「ふん、今回だけは許そう。私の名前はルシアン・ファモアーゼだ。」
「ファモアーゼ?」
「ルル殿、彼は侯爵家のご子息だ。」
「あぁ、同じ侯爵家同士、よろしくお願いしますわ。」
サッとルルは腕を差し出した。
〝なんだ…?この前とはまるで別人かと思うくらいの反応が違うぞ?〟ルアシアンはルルの行動から違和感を覚えたのだった。が、ここスマートに対応するべきだと判断してルルの差し出した手の甲にそっと口づけをして挨拶をした。
「こちらこそ、よろしく。クレハトール令嬢。私はダンテとは長い付き合いなのでね。」
と言って牽制した。
ご覧下さりありがとうございます。ルルとダンテのデートの様子を描きました。ルルは可愛い姿とは裏腹に思うことはかなり強欲で見栄っぱりで我儘です。いつかダンテもそれに気付く時がくるのでしょうか…。




