第22話:初めて〝侯爵令嬢〟として扱ってくれた人物…
カン、カン、カン…………………!
最終テスト終了の鐘が鳴った!今回も手応え抜群だったララはやっと終わったことに安堵した。
窓の外に見える木々が青々として爽やかな風がその葉を揺らして通り過ぎていく………………。
〝あぁ…、こんな風にゆっくりと外を堪能することすら忘れていたわ。心が洗われるって、こういう瞬間なのね。〟
しんみりとやり遂げた感に浸っていたララだったが、シャーリーが声を掛けてきて現実に引き戻された。
「ルル様っ!やっとテスト終わりましたね。これで安心してダンテ様とデートできますわね!」
「あは…。そうね、シャーリー。私は急いで帰るわね!また明日、ごきげんよう。」
「ルル様、ごきげんよう!」
〝ん…?「帰るわね」「わね」?〟シャーリーはふとその言葉が気になった。が、〝きっとダンテ様に会えるのが嬉しいからね。〟ということで勝手に解釈して納得していた。
そう、本来のルルなら、「帰るわ」なのだ。「帰るわね。」などという柔らかい表現をすることはなかった。だが、まさか交友関係も知りえた他人であると誰が思うだろうか。だから皆、〝気のせい〟となってしまうのだった。
そのころ、クレハトール侯爵家では、ルルがダンテとのデートのために着飾ってララが帰ってくるのを待っていた。
「遅いわね!もう帰ってきてもよさそうなのに!」
ルルはイライラしていた。ダンテの方が先に邸に着いたりしてもルルはララが帰らないと会うことすら出来ないのだ。先に会いに行けばどこかでララとすれ違うことになるかもしれない、そうすると入れ替わりもバレてしまうかもしれないからだ。流石に心を寄せるダンテにその事実を知られたくないらしい。
「只今戻りました。」
そう、先にやってきたのはララだった。
「もうっ!どれだけ待ったことか!さあ、もうすぐダンテ様が見えるからあんたは早く消えていてちょうだい!」
ルルはそう言うとララを〝ドン‼〟と突き飛ばした。
「あ…っ、」
カバンを持っていたララはそのまま壁に肩から激突した。「……………ッウッ‼」
肩を押さえながらうずくまるララをそっちのけでルルは玄関へと走って行った。きっとルルにとってはララの存在なんてどうでもいいのだろ。それにララが発したうめき声すらも聞こえていないのだろう。
ララは肩を押さえながら立ち上がり、カバンを拾ってゆっくりと借りているシャルルの奥さんのための部屋へと歩いて行った。その間、運がいいのか、悪いのか、誰にも会うことなく部屋に辿り着いた。
カバンを荷物置き場に置いて、服を脱いで激突した肩を鏡で見てみた。青く…痣になっていた。
〝これは痛いはずだわ。冷やすもの探さないと。〟そうしてララはタオルを冷水に浸してから絞って幹部に充てた。氷を使えればいいのだけど、ないよりはマシだ。
〝私は一応、シャルルの管理下になるから下働きはどうなるのかしら…。〟
とりあえず、自分が使っているこの部屋は綺麗に保つようにしなくちゃ!とララは考えて掃除をしだした。
しばらくすると下の階が賑やかになった。
どうやらダンテがやってきたようだ。そしてそのダンテと共にシャルルも帰ってきたようだ。だから賑やかなのだ。
三人は少し話をして、その後シャルルがダンテとルルを送り出したようだ。
ゆっくりとシャルルは中央階段を登って自分の部屋へと戻ってきた。
隣にいるララはシャルルが部屋に戻ってきたことが聞き取れていた。いつもなら真っ先にこちらに声をかけにくるのに、その日は違った。
「……………。」 〝そういうこともあるわよね。〟とララはきにしないで掃除の続きをしていた。
シャルルは窓からルルたちの馬車が出発したのを見送ってからララの部屋の扉をノックした。
コンコンコン!
ララはびっくりして慌てて続き扉へと向かい、扉を開けた。
「あぁ、ララ。お疲れ様!これ、報酬代わりに受け取ってくれ。」
シャルルはそう言ってララの手に小さな箱を乗せてララに握らせた。
「え…?シャルル?」
「ルルには内緒な!今出てったから気付かれないと思うけど。」
「ありがとう…。」
「あ、それと。俺の前で下働きは禁止な!しかし俺の為にお茶を淹れて、あとは衣装選びを頼む。お前、貴族令嬢としての教育、あんまり受けてないだろ?ちゃんと茶葉を覚えておかないと茶会に呼ばれたら苦労するぞ。それに、その時、その場、によって衣装はちゃんと考えないといけないから、その訓練を兼ねてお前に任す。食事のマナーはまあまあだったな。」
「では、お部屋もこのまま…?」
「そうだな。お前の部屋に戻ったらまた俺の目が届かない間に虐めようとするだろ?ここにいる方がまだ少しは安心だと思うから、このままここにいればいい。あぁ、汚れとか心配するな。いざ、妻を迎え入れるようなら、また一からあつらえるから気にせずに使えばいい。」
シャルルはとんでもないことを言い出した。確かに侯爵家ともなれば簡単にお金を使えるのかもしれないが、ララからすればそんなことをして大丈夫なのか、まず不安になる。
「大丈夫。俺が責任を取るからお前は安心して侯爵令嬢としてのマナーを身につければいい。」
ララは〝侯爵令嬢としての…〟という言葉にドクンとした。
ご覧下さりありがとうございます。無事テストも終わり、これから自分はどうなるのか不安な中、シャルルによってララは安心して暮らしていけそうです。




