第20話:本来だったら…。あり得ない事への思いを馳せるララ。
その頃、ダンテはクレハトールからの馬車を帰してルルであるララを自分の家の馬車に乗せた。
クレハトール侯爵家までの馬車の中で、ダンテは気前よくルル(ララ)にテスト範囲の勉強を見ていた。揺れる馬車の中、文字を見るのは少々キツイが、二人は熱心に、勉強をしていたため、すぐに侯爵邸に着いてしまった。
「あぁ、もう着いてしまったようだ。残念。」
本当に残念そうに笑うダンテ。
「ダンテ様、本当にありがとうございました。お陰様でとてもわかりやすかったです。またいつかお願いしたいくらいですわ。」
「おお、お役に立てたのなら嬉しいです。ルル嬢の為でしたらいつでも見て差し上げますよ。」
「いえいえ、ダンテ様のお手を煩わせるわけにはいきませんから、ここから先は一人で頑張ってみますわ。」
「そう…ですか………………。」
落ち込むダンテ。
「で…、では、テストが終わりましたら今度また街を案内して頂けますか?」
ララがそう言うとダンテは喜んで頷いた。
「ええ!わかりました。その日にまたお迎えに伺います!」
「ふふっ。」
そうしてダンテは機嫌よく帰って行った。ララは馬車が門をくぐるまで見送った。
そして、姿が見えなくなって、邸へ戻ろうとした時、背後から声を掛けられた。
「そんなに熱心に見送って、まさか、ダンテ様にまた色目を使ったわけじゃないわよね?」
ルルだった。
「お勉強を見て頂いていたのです!」
「ふぅ~~ん。お勉強なんてつまらないじゃないの。」
「テストが終わった日に、また街をご案内下さるそうです。」
ララがそう言うとルルが
「街~~?!あんた、もっといい所へ誘導してよ。ホント、田舎者はっ!」
と言ったが、言葉とは違って顔はどこかにやついている。
〝あらら………………?さっきは物凄い勢いで迫ってきたのに、デートの約束をしたのが功をなしたのかしら…?ルルも意外と可愛いところある?〟
ララがそう思っていたのもつかの間、
「ところで、今日のテストの手ごたえはどうなの!?」
「全部解けたから多分、大丈夫だと思うわ。」
「ふぅ~~~ん。ま、今日は何もしないであげるわ。まだ大事なテストが残っているものね。それに私もあんたを構ってられる程暇じゃないんだから!」
そう言ってルルはくるりと向きを変えて邸内へと戻って行った。
「もうっ、外なんて出たからドレスの裾が汚れちゃったじゃないの!」
と、一人ブツブツと言っていた。
ララはその様子を見て心の中で〝ぷっ〟と笑っていた。
〝きっと両親があんなでなければ私たちはそれなりに上手くやっていたのかもしれない………………。いつか、ルルも私に対しても優しくなってくれたらいいのだけど…………。難しいのかな。…。〟
ララは呆然とルルの後ろ姿を見ていた。
それからララはシャルルの将来の奥さんの部屋に行き、汚さないようにと、丁寧に机を使って勉強を始めた。
〝ルルの身代わりとしてこうして勉強してるけど、私は勉強するのが好きだからより一層意識の高い勉強が出来てそれはそれでラッキーだわ。身代わりなんていうやり方には賛成できないけど…。〟
そう思いながら問題をスラスラと解いて行った。一問でも多く問題を解いて自信をつけたい。それがララの今の精一杯だった。
コンコンコン!
シャルルの部屋からノックが聞えた。
「俺だよ。ララ。夕食を運んできたよ。」
「……………‼」
ララは勉強していた手を止めて続き扉へと駆け寄って、慌てて扉の鍵を開けた。
「シャルル様!すみませんっ!」
ララが慌ててお詫びをするとシャルルは笑ってララに言った。
「ハハハ!気にするな!」
ララは上目遣いでシャルルを見てほほ笑んだ。
シャルルは一瞬ドキッとした。ルルの姿であるが、ルル本人からはこんな顔、こんな仕草をされたことがなかったからだ。
「君はルルと似ているのに、似ていないね。」
シャルルがポツリと呟いた。
「え?」
ララが聞き返したがシャルルは慌てて「何でもない。」と言った。
「双子と言っても私もルルも違う人間ですから…。」
と、ララは答えた。どうやら聞こえてはいたようだ。驚いてそういう反応だったのだ。
「ちぇ、聞えてたのか。まあ、そうだよね。違う人間だ。なのに君をルルの代わりに虐めようとしたなんて俺も浅はかだったよ。あぁ、今は反省してそんな気にもならないから安心しろ。」
「……………。はい、シャルル様。」
「んー、その〝様〟ってのも、兄妹なんだからおかしいぞ?」
「でも…。」
「俺の前では禁止!」
「では、何と呼べば…。」
シャルルは考えた。
「普通に、兄さま、兄さん、シャルル、あたりでいいんじゃないか?」
「…………………。シャルル………。兄さまと呼べるほど、私にとってはまだ身内感がなくて…。」
シャルルは驚いた。
「あぁ、それで構わない。お前が俺の事を兄だと認識出来た時に兄予呼びしておくれ。」
「わかりました。」
ララはそう返事をした。本当にシャルルは考えを改めたようだ。
「あー。それからその敬語も。すぐにとは無理だろうが、失くしていってくれ。家族なんだ。」
「ええ、わかったわ。」
シャルルはびっくりした。
「言葉はすぐに変えられるのか?」
「なんとなく………………。」
申し訳なさそうにララが答えると、シャルルは笑い飛ばしながら「それでいい。」と言ってくれた。ララはシャルルといると心がほんの少し、温かくなる気がした。
ご覧下さりありがとうございます。明らかにシャルルのララへの対応に変化が訪れました。ララにとっては思っていなかった展開です。ルルや他の家族もシャルルのように心を開ける相手になれれば…………、そう考えますが、中々上手くはいかないようです。




