第13話:キーパーソンはシャルル?!
カチャ…。キュッ、キュッ……………。カチャカチャ……………。
クレハトール侯爵家の食堂では無言で家族が揃って食事を摂ることが多い。
ここでは未だにララの存在を認めたくない侯爵を筆頭に、子供たちを溺愛する侯爵夫人、同じ顔のララに激しい嫉妬を燃やすルル、何を考えているのかわからないシャルル、そしてルルとシャルルの弟ビター。
シャルルにとってルルは可愛い妹ではあるが、その我儘な傲慢ぶりな性格には反吐が出るほど嫌っている。今回、ララがやってきたこでルルがララを日頃の鬱憤のはけ口に使おうとしていることを見抜き、最初は関わらないでおこうと思って見て見ぬふりをしていた。が、あまりにもの理不尽な扱いに見かねて今回声を掛けたのだった。
〝初日に食事を運んでいる侍女に賄賂を持たせて中断させたのを見たからにはきっとそのあとも虐めているのだろうと思っていたが……………。ルルは腹違いの妹、つまりあのララとも異母妹ということ……………。〟
シャルルはララに妹以上の感情が芽生えてきそうな感じだった。それは単なる同情なのか……………。
翌朝、シャルルの命令でシャルルの身支度の手伝いをララがすることとなった。
「まあ、シャルルお兄様、そんなにその子がお気に召したの?私にそっくりですものね、放っておけないのね。ふふ。」
ルルがシャルルに言った。
「ルル。」
「なあに?お兄様。」
「僕の留守中にララを虐めないようにな。もし彼女を傷つけたりしたらドレスの件はなしだ!」
「きゃぁ怖い!お兄様、そんなんのあんまりですわ。それはそれ、これはこれ。それに私、あの子を虐めてなんていなくてよ?」
「ルル。僕を怒らせないように!」
「わ……………。わかったわよ。」
そうルルが返事をすると安心したのか、シャルルはララに向かって
「僕が戻るまでに部屋を綺麗に片付けておいてくれ。それから部屋からは一歩も出ないように!これも俺からの命令だ!」
「わかりました。シャルル様。」
ララはそう返事をしてシャルルを見送った。
シャルルが見えなくなり、邸の中へと戻ろうとした時
「あなたねぇ、お兄様を上手く取り込んだみたいだけど、いい気にならないことね!あなたなんてどこに行っても私の身代わりでしかないのだから!」
そう言ってルルは自室へと戻って行った。
〝あの子は本当に嫌味を言うしか出来ないのかしら…。〟と、あきれ果てていた。
〝で、この部屋のどこを片付けろと?〟
それは誰も文句の言いようがないくらい綺麗に整理整頓された本棚。定位置に置かれたテーブルと椅子。ゴミ一つない綺麗に使われている部屋。ホコリすらも見当たらない。
〝これは新手のいじめなのかしら…?〟とララは思った程だ。
シャルル様の几帳面な性格が見え隠れするわね。ふふっ。
ララは安心した。
◆ ◆ ◆
ここは王城。シャルルが執務の為に登城した皇子の執務室だ。
「シャルル……………。何だか今日はいつもと違うな、どうした?」
「いえ、皇子殿下。僕の妹がダンテ公爵子息と婚約しているのですが、どうやら昨日上手くデートする事が出来たようで、兄として微笑ましいと思いまして…。」
「あ…、あぁ…。昨日はとても楽しかったよ。」
「……………。はい?何か勘違いされてるようですが、我が妹とダンテ公爵子息ですよ?」
「……………!あ、あぁ…。ダンテ公爵子息ね。」
何故か皇子殿下は焦っていた。
「殿下、どうかなさったのですか?先程から様子がおかしいのですが…。」
「あ、いや、何でもない。お前の妹にも一度会ってみたいものだな。」
「殿下…。駄目ですよ。うちの妹はもうダンテ殿にメロメロなんですから…。」
「そうなのか…。皇子命令で…。」
「殿下‼ 」
「ハハハ…冗談だよ、冗談だ。そんなに怒らないでくれ、シャルル。」
「はぁ、いくら幼なじみだとしても言っていい冗談と悪い冗談があります!ルシアン。」
「肝に銘じておくよ。」
皇子ルシアン。彼はこのスクラバ皇国の皇子だ。
王妃、フラシアの一人息子でこの国の第二王子となる。実はルシアンには兄、第一王子がいる。第一王子
パドルは側妃の息子だ。先に産まれたが、のちに正妃が男児を産んだが為に皇太子にはなれない可能性が高いのだ。そのため、側妃が小さいルシアンに毒を盛ったり暗殺者を向けたりと色々してきたのだった。が、証拠がないため、今も状況は変わらない。更に国王が皇太子を決めないから未だに水面下では争いが続いている気の抜けない状況だ。
ルシアン(20歳)はエルフ族の母を持ち、魔法を使うことが出来、その為に自分の姿をも変える事が出来るのだ。時には親友の姿にだって成り済ませるが、それは親友の為に親友から依頼がない限りやらない。そう、この前のダンテを名乗る男はこのルシアンだったのだ。
ルシアンの容姿はララの本来の髪と同じ銀髪だ。瞳はシアンブルー。一見、冷たい印象を受ける。
ご覧下さりありがとうございます。とうとうシアン=ダンテを名乗る男=ルシアン皇子殿下ということが判明しましたね。しかし、ララがこのことを知るにはまだまだ先の話になります。




