第102話:ルシアン!渾身のプロポーズ!
侯爵邸の庭園は王宮のように広くはなく、温室もない。だが、育てている花は優しい雰囲気の花が多い。夫人は紫の花が好きでルルは特に花にこだわりがなく、豪華な薔薇やカサブランカなどを要望していたようだ。だが、ララはラナンキュラスのような優しい花が多く、同じ薔薇でも淡いピンクのバラを好んだりする。
そんなララの庭園を歩いているとララの存在をより近く感じるルシアンはそれだけで幸せを感じていた。
だが、これからララに話をすることが頭に過った瞬間、大きく心臓が〝ドキッ〟と飛び跳ねて鼓動ば早くなっていく………。ドキドキドキドキ………………。鼓動が早くなるのと同時に緊張して手に汗を握った。
そしてひたすら庭園を歩いてララを探す。今日に限って見当たらない。
〝もう部屋に戻ったのか?〟
そう思って引き返そうとしたら、その先にララがいた。〝見つけた!〟
ララは花を愛でていた。ルシアンが来ていることに気付いていなかった。ルシアンは恐る恐るララに声をかける
「ララ…。」
その声はまるで震えているかのようにか細く感じた。
ルシアンの胸はドキドキ激しく高鳴っているが、肝心のララは振り向かない。どうやらルシアンの声が聞こえなかったようだ。
────ゴクッ…!
ルシアンは生唾を呑み、意を決してもう一度ララに声をかける
「ララっ!」
ふわりとララが頭を上げて反応した。今度こそ聞こえたようだ。ルシアンはララがこっちを見るのを楽しみにしていた。そしてついに………
「ルシアン…様?」
振り向いたララはルシアンの存在に気付いて、いつもの時間でないのにそこにいる事に少し驚いたようだった。だが、ルシアンはララの声を聞いて安心したのか、口元が緩みそしてララの元に走り出していた。
「ララっ!」
そう言ってララを〝ガバッツ〟と抱きしめた。思いっきり抱きしめた。ずっとずっと触れたくて我慢してきたからこの瞬間がすごく大切で一瞬一瞬を一生忘れないとさえ思ったほどだ。
「ルシアン様!く、苦しいですわ、」
余りにもきつく抱きしめたためにララが苦しがっていた。
「ご、ごめん!」慌ててララから離れるルシアン。ララは〝ふっ〟と笑って
「どうされたのですか?いつもの時間にはまだ早いように思いますが…?」
落ち着いてそう言った。
ルシアンは自分の今の気持ちとララの気持ちに温度差があるように感じて、そのおかげで冷静になった。
「あー、コホン。すまない、本当に。いい知らせがあってつい………。」
ルシアンがそう言ったのでララはドキンとした。ルシアンの言ういい知らせとは二人の婚姻に関係することだろう。
「いい…知らせ?」
ララは恐る恐るルシアンに聞いた。
「ああ、とうとう大臣全員の賛同を貰ったよ。これで僕たちは婚姻する事が出来る。」
弾んだ声でそう言った。
「まあ、本当に?」
ルシアンは静かに笑って頷いた。それを見てララは歓喜のあまり涙ぐみながら口元を両手で覆った。
そして次の瞬間、ルシアンがパッとララの足元に跪いた。驚くララ。そしてララの左手を手にとり、ララを見つめながらララに熱い眼差しでとろけそうに優しい顔でララに求婚する。
「ララ、どうか僕と結婚して下さい。共に人生を歩んでいきたい。」
そう言ってララの手の甲に口付けをし、再びララを見つめた。
ララはルシアンの真っすぐなその言葉に感激し、我慢していた涙が溢れて頬を伝った。
太陽は輝きを増し、陽射しは優しく差し込んでいた。そして温かく優しい風が二人の間にかけていった。時々、庭園の花びらを連れて………。
ララが返事を返すまでの間、とても長く感じたルシアンは心臓がドキドキと強く跳ねていた。〝きっと大丈夫だ〟と思いながらも万が一………。という気持ちも彼の中で湧き上がってくる。
ララにとってはただの〝結婚〟ではないのだ。王妃となってこの国を一緒に守っていくという使命が発生する。それがどれだけ覚悟がいるのだろうか………。断られても仕方ないくらいだ。
沈黙が続く………。ララはまだ涙を流したままだった。
「ララ………?」
段々心配になってきたルシアン。そっとララの顔を覗き込む。
「ごめんなさい。」
「えっ!?」
やっとララが言葉を発したかと思うと「ごめんなさい。」だった。思わず聞き返したルシアン。
「ごめんなさい、あなたの事は好きだけど王妃になるのが怖いの…。頑張って教育を受けているけど私にそんな大役が務まるのか、それを考えると本当に怖いの…。」
ララの本心がそこで初めて告げられる。ルシアンの事は好きだけど王妃という責務がやはり重荷だと言うのだ。そりゃそうだ。簡単には決められないだろう。ララは産まれてすぐに子爵家に出され、侯爵家の都合で戻されて、ようやくその生活に慣れてきた頃なのに…。
「そうか…。すまない、また僕が暴走してしまったようだ。」
ルシアンは彼女の気持ちが痛いほどわかるので無理に彼女を責める気にはなれなかった。
「だったら…。何年待てばあなたは僕と結婚してくれますか?僕はそれまであなたを待ちたい…。」
ルシアンはそれまで彼女を待つつもりだった。しかしララが出した答えはどうやら違うものだった。
ご覧下さりありがとうございます。とうとうルシアンは感極まってララにプロポーズしました。しかしララは王妃になることの重大さに怖気づいて断ってしまいます。




