第100話:とうとう大臣に賛同を得るルシアン!そして………?
どうやら上手く準備が進んでいるようだ。手付金も支払い、会場も手配し、参列者の名簿も作成し、招待状も作成した。あとは出すだけだ。そして衣装も既に注文し、縫製に入っている。こんなに順調で大丈夫なのかと不安になるくらい順調に準備は進んで行った。
そんなある日、大臣が年間予定表を見て全員が空白になる部分に気付いてルシアンに質問してきた。
「陛下、この部分…………、皆予定が入ってございませんが、何かありましたか?」
──────────きた!予定通りだ!
ルシアンは振り向いて大臣に向かって胸を張って堂々と宣言をする。
「ああ、その日は僕の婚姻式だからね。よろしく頼むよ。もう会場も手配してるし、あとは招待状を発送するだけだ。」
その言葉を聞いて他の大臣たちも一斉に「はあ?!」という声が漏れた。
「陛下!そんな大切な事をお一人で勝手に決められては…………!」
そう詰め寄る大臣。「招待状を発送するだけって…、どこまで準備が済んでいるんだ?!」「我々が気付かない間に一体誰が…?!」など各々口にしていた。そんな大臣に向かってルシアンは表情を氷のように冷たくしつつ言い放つ。
「ああ、議会は皆で話あって決めるが、これは僕の生涯を共にする伴侶のことだ。こればかりは僕に決めさせてもらう。だから異論のある者は議会から追放する!」
「そんな横暴な……………。」
そう言う大臣もいたが、ルシアンの表情は変わらず冷酷な様子で一歩も引かないという気迫が感じられた。焦る大臣たち。自分たちの目論見が外れる………。反対すべきだがで反対して大臣でなくなるのは意味がなくなる………。そんな大臣たちが自分の進退を決め兼ねている時に一人の大臣が言葉を発した。
「私は陛下のお気持ちに賛成致します。陛下は婚姻以外はわれらの意見をしかと聞いて下さった。たまにはわれらが陛下の意見を聞くべきでは?」
これは助け船だ!と感じた者たちは順次その意見に賛同していく。
「そうだな……………。私も陛下に賛成するよ。」
そこには〝追放〟という言葉に反応してなのか、そうでなのかは読み切れないが、一人を除いて最終的には賛成の意見になった。そうなると残った一人の大臣はより一層焦る。そんな大臣の前にルシアンは一歩一歩ゆっくりと詰め寄り、強い口調で再度問いかけた。
「さて、そなただけが反対のようだが……………。それでもそなたの気持ちは変わらぬのか?」
すると大臣は表情が見る見る変わり俯いた。そしてポツリと一言、
「私も陛下の意見に賛成致します。陛下のお気持ちを考えずに行動してしまい、申し訳ごいませんでした。」
そう言ってルシアンに頭を下げた。大臣の心境としてはすごく悔しいのだろう。彼の握った拳がプルプルしている。ルシアンはそれをわかった上で表面上は賛同を得たことで取り敢えず良しとした。
「ああ、良かったよ。僕も大臣の皆さんを失うのは本意ではないのでね。結果、全員賛同してくれて本当に良かった。皆にいい席を準備しておくからその日は参加してくれ。」
「はい、陛下。」そう言って大臣たちはルシアンに頭を下げた。
議会が終わり、ルシアンが退出したあと、大臣たちはシャルルやシビルに詰め寄った。
「お前たちは陛下の行動を知っていたはずだ!何故阻止しなかった!」
あの一番最後まで賛同しなかった大臣がそう言ってシビルに手をかけた。その瞬間大臣の手を〝サッ〟と払いのけるシャルル。大臣はその素早い動きに驚いた。シャルルは文官だからだ。それなのにまるで訓練のされた騎士のような動きだったからだ。
「大臣、私はあなたよりも年下ではありますが、爵位も職位も上ですよ?それでもまだ〝お前〟呼ばわりなさるのですか?」
シビルがそう言った。実を隠そう、このルシアンの側近であるシビルはプロトテンファ公爵家の次期公爵なのだ。頭脳明晰でものおじをしない芯の通った性格だ。だが剣術はどうやら護身術程度にしか習わなかったようだ。
そしてこの大臣、シャルルのクレハトール侯爵家とは同等の侯爵なのだ。あのクレハトール侯爵に直接嘆願しに行った人物であった。
「チッ。」
大臣はそう言って、手を沈めた。
「失礼した。だが、臣下ならどうして陛下の横暴な行動を止めなかったのだ?」
シャルルもシビルも二人してため息をついた。そしてシビルは先にシャルルに言いたいことを言う機会を与えるために黙ってシャルルに目配せした。
「大臣、王妃候補であるララは私の妹です。双子のもう一人の妹は醜聞を起こしましたが、ララはそれこそ、真面目に暮らしてきたのです。それに彼女は廃側妃の陰謀に巻き込まれた被害者であり、彼女自身には一切醜聞はございません。それなのにどうして妹を否定されるのですか?」
そうシャルルが言うと大臣は「うっ。」と言って黙ってしまった。そんな大臣に追い打ちをかけたのはシビルだ。
「大臣、隣国からまさか賄賂をもらったとかないですよね?」
そう指摘され大臣は慌てて否定する。「ち、違う!」
だが、シビルは何も根拠なくそんな事を言う人物ではなかった。大臣を睨みつける。
「違う、違うんだ!あれはそんなんじゃ………っ、ハッ!」と大臣が口を滑らしかけた事に気付いて黙ってしまったが、シビルは見過ごさない。
「そんなんじゃ?!………ほぉ~、ではどういう意味があるんですか?」
グイグイと迫り、この機会にこの大臣を排除しようと思っていたのだ。国益を優先するならまだしも、私的事情で陛下の妨げになるような人物は早めに処理すべきだと………。
ご覧下さりありがとうございます。ルシアンが一度は許した大臣に対して、今度はシャルルとシビルが追い詰めるという二段階手法で排除することも計画のうちだったようですね




