表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
7/37

竜騎士見習いのリュート

 サモルの王都は、城壁で囲まれている王都と西側にあるフィールドイン。そして、フィールドインの更に西、つまり海側にあるスラムへと続いている。南に澄み音川という大河が流れていて、対岸にも町があったそうだが今は寂れて住んでいる人が殆どいない。そこには、入植に失敗した廃墟後や原野が広がっている。更に南にグラン森林がある。王都の人は、グラン森林のことを魔の森と呼び恐れている。森との境は、永遠と続く大きな壁で遮られており、魔獣が、王都側に入り込まないように防衛している。そして防壁を飛竜騎師団が見回っている。川を挟んだ王都側に戻る。王都の北は田園地帯。東は、葡萄畑や野菜畑などの農村地帯になっている。その先は、フォレスト山脈になる。


 リュートは、海岸近くの洞穴に師匠と住んでいる。師匠のシドは、リトルリザードマン。リュートは、リトルサウンダー(砂塵族のことを一般的にはリトルサウンダーと呼ぶ)。シドの相棒のワイバーンは、ブルー。海で漁をするのが得意なブルーワイバーンだ。逆にリュートの相棒のワイバーンは、山岳地帯で狩りを得意とするメトセラ山脈のレッドワイバーン。どちらも種族の名前を冠している。メトセラ山脈は、サモル王国の北東、フォレスト山脈の北。


 オレは、城壁で囲まれている王都からフィールドインに入った。入り方は、港と中央の正門の二つある。今回は、正門からフィールドインに入った。門番には、ここから先は治安が悪いから気をつけるように言われた。親に聞いた話では、サモル王国が帝国に恭順するまでは、フィールドインまでが王都だったと聞く。フィールドインには、人魚族や鬼人族が多く住んでいる。同じように人族も少し住んでいる。フィールドインに住む人族は、人種差別をしていない。こちらの方が住みやすそうだがオレは、王女の護衛のために、魔法学園の寮に入ることになった。残念なことだ。


「パア!」

「うわっ」

 ぺちょ。

「あらごめんなさい」


 人魚の子供が、抱きついてきた。なぜかオレは、人魚の子供にもてる。


「なんだ。高い高いをして欲しいのか。そら!」

「きゃっきゃっ」

「こら、こんなに潤滑水出して。大丈夫ですか?。いやじゃないですか」

「自分も出せますよ。確か子供の方が治癒力高いんでしたっけ。丈夫に育てよ」

 そう言って、子供の頭を撫でてやった。すると、子供が嬉しそうに母親に抱きついて後ろに隠れた。

「あらあら?。急に恥ずかしがって。お兄さんに頭をなでてもらったの。良かったわねー」

「うん!」

「何歳ですか?」

「3歳です」

「いい潤滑水ですよ。健康に育つと思います」

「ありがとう。ロイも、ありがとうは?」

「ありがと」

 オレは、手を振って人魚の親子と別れた。


 潤滑水は、人魚族や魚人族が当たり前のように出している滑っとした体液だ。オレもシーラカンスに鍛えられて魔法で出せるようになった。潤滑水は、水中で泳ぐときに水の抵抗を減らすだけでなく癒し効果があって皮膚を保護してくれる。地上だと放っておくとすぐ乾く。乾いた後は、さらっとして癒し効果も相まって皮膚がつやつやになる。


 正門を地元の人は凱旋門という。凱旋門に続く大通りを並木通りと言う。名前の通り立派な楠が並ぶ。フィールドインの特徴は、運河が張り巡らされた水彩都市なのだが、ここだけは、立派な大通りとなる。父さんは、「まさか、凱旋門が閉まるのを見る日が来るとは思わなかった。うちにある絵と大違いだ」と、言っていた。オレが通った門も大門の横の通用門からだった。これは帝国のせいだ。帝国に恭順しなくてはならなくなって300年経つ。だけど凱旋門を閉めろと言ってきたのは近年のことだ。近年帝国は、こ辺境の、このサモル王国に更なる圧力をかけてきている。


 フィールドインとスラムの間には、大きな運河がある。澄み音川に対して垂直方向。フィールドインとスラムを横たわるように走っている。この大筋運河は、真っすぐ東の山脈側に向かって走っている。太陽は、王都側から昇るわけだが、フィールドインの碁盤の目のような道の関係で、この多くの橋から朝日をいち早く見ることができる。元旦などは大変な賑わいになる。その一番の大通りにある橋が並木通りの並木橋。ここに多くの老舗が集まっている。大筋運河のフィールドイン側の通りを骨董通りという。骨董通りというのは、スエディッシュ共和国のエランという街の骨董通りにあやかった名前だ。ここは、運河側に多くの露店が並ぶことで有名だ。この通りは、古い、古ーい老舗が軒を連ねている。


 スラムに行くと、亜人や獣人や魚人が多い。亜人や獣人たちは結構まともな家に住んでいるのだが、一番人口が多い魚人たちが、雨漏りのひどい安普請に住んでいるものだから、ものすごいスラムっぷりを発揮している。魚人たちは、雨漏りがするのを良しとしているのだから仕方ない。


 大筋運河のスラム側は、露天ばかりが並んでいる。でも旨そうだ。オレは、オークがやっているトンテキ屋の匂いにつられて、ふらっと店に座ってしまった。


「おう、親父、トンテキ丼をくれ」

「よっしゃ、って。そこのてめえ人間だろ」

「人間だけど?」

「さっき聞いたぞ。オークのトンテキ丼は、最高なんだろ」 


「そりゃそうだろ。いいから「黙って食え」」

ドン

 勝手に座った席の前に大盛りのトンテキ丼をドンと置かれた。

「仕方ねぇ。人間、おめぇ食え」

「オークのおっさんって、王都の人間より、面白い」

「あんな面白くない連中と一緒にするな。ほらよ、特盛だ」

「特盛ってこれ!」

 普通の特盛の倍はある。オレは、目を丸くした。

「兄ちゃん。これ行けるか?」

「死ぬ気になれば」

「それなら、いけいけ」

「いくけどさっ」

「これを全部食ったら、他の屋台でも食えるように言ってやる。ここは、人族に飯を出さねぇんだ。向こうもこないけどな」

「こんなに旨いのに?」

「いいこと言うねー」


 本当に死ぬ気で食べた。トンテキ屋のおやじは、目を丸くしてオレの食いっぷりに感心して、他の屋台にも吹聴してやると請け負ってくれた。

「完食か」

「いててて完食、お腹っぱい」

「ワハハハ、すごいぞ、おまえ」

「いててて、もう食えない」


「スゲーな兄ちゃん」

「名前は?」

「ダークだ」

 いつの間にか近所の屋台の店主が、オレの食いっぷりを見に来ていた。

「うちの野菜炒めも食べてくれ」

「うちの串焼きも旨めーぞ」

「今日は無理」

「「「「ワハハハハハ」」」」

「「「次来たらうちに寄ってくれ」」」


 スラムの屋台最高!

 オレは、お腹を抱えながら、海岸へと向かった。

 途中桟橋があり、ここに市場があるのか、ここにも旨そうな飯屋が軒を連ねている。今日は、無理だけど、そのうち寄ろう。



 海岸縁の洞窟は、小山なようなところにあった。中からレッドが出てきた。


ドーン

カーオン、カーオン

「ワハハハ、大きくなったな」

「もう、おれを乗せて飛んでいるからな」

「リュート!」

 久々の友だ。抱き合って、お互いが壮健なのを確かめ合った。

カオーーーン

「レッドも来い」

ド、ドーーン

「おい、何食わせてる。この間会った時の5倍はあるぞ」

「それを受け止めるお前もとんでもなく強くなったな」

「グラン森林は、デカいのばっかだからな」

「恐竜のことか?」

「サウロポセイドンのことか?。あんなの無理だ。若い個体でも30トンあるぞ。泣き虫だがな。この間、棘が刺さって泣いてたよ。オレが取ってやった」

「そりゃあ見たかった」

「オレのことを仲間だと思ってくれているから、今度紹介するよ」


「おまえら、修行は、まだ、半年あるぞ。そう言うのは、半年後にしろ」


「師匠!」

「シドさん、こんにちは」

カオーーーーーン

「ブルーも」

 シドのブルーは、海に潜れる美しい竜だ。オスのワイバーンが放っておかないが、ブルーの方が強くて、釣り合う相手がいない。


「レッドの奴、魚をちゃんと食えんのだ。だが、最近、魔海獣を狩るようになってな」

「魔海獣は、陸の魔獣肉のようにうまいのに柔らかいんだ」

カーオン

カオーーーン

「旨そうだな!」

「夕飯は、スラムの店に、魔海獣料理を食いに行こうぜ。ありぜんって店の裏メニューであるんだ」

「行く。鉄鉱石は、水道管分以上集まったんだ。しばらく王都にいる」

「本当か!」

「ここの姫さんの護衛をすることになった。乗り気じゃなかったんだけど」

「親父から聞いているよ。ダークは、サモルとローマン王家の・・」

「まあ、そういう事だ。父さんもやってやれってさ。両国とも、帝国にいいようにされているんだってな」

「酷いもんだ。やるのか?」

「面倒この上ないがな」

「なんの話だ」

「シドとブルーには、話してなかったな。オレ、サモル王国とローマン王国の王家と親戚なんだよ。帝国の話は聞いているか?」

「皇帝の無茶ぶりの話か?。いやというほど知ってる。人族至上主義をわが国に押し付けおって。おかげで、王都は大変なことになっとる。それにしても王家と親戚なんか。わしら、頭を下げんといかんな」

 カオーーー

「いまさら言わないでくれ。親戚と言ってもオレは平民だろ」

「だが、レンジャーだ。グラン森林を縦横無尽に歩けるのは、お前さんぐらいだ。それだけで価値がある」

「そうだぞ」

「ローマンの姫も、ここに来ているんだ。父さんだと、二人の姫を助けてやれって言うだろうな」

「じゃあそうしよう。ですよね師匠」

 カーオン

「簡単に言うな。レッドも」

「おぅ?。もう直ぐレッドもフォレスト山脈越えができるようになる。いいんじゃないか。帝国に一発かましてやれ」

 シドもリュートの話に乗り気だ。

「そう簡単な話じゃないんだ。聖女が人質になっている話は知っているだろ。だから、みんな言いなりになってる」

 この話が既成の話。実は先がある。

「知ってる。ダークが聖女を救うんだろ。手を貸すぞ」

「それがちょっと違うんだ。帝国に捕まっているとされている聖女のシーナが、帝国侵攻の主犯なんだ」

「「どういうことだ」」

 カオーーー

 カーオン

 4人に迫られた。

「長い話なんだけど聞く?」

「そりゃ、聞くだろ」

「話せ」


 長い話になった。明日は、姫たちの、入学式前の挨拶に同行しなくてはいけない。自分の編入の話もある。リュートの言う魔海獣の肉が気になったが、王都に引き返して宿をとることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ