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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
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海王とライブクリスタルのヨナ

ライブクリスタルは、話す賢者の石だ。人魚の王様ポセイドン王は、海の王様つまり海王でもある。

 ポートレイのヤブ爺の所に、ラグーたちを返して、港に向かう。港の近くに、猫の額ほどの砂浜があり、そこから海中に進む。港から少し行ったところに、ポー王国の廃棄された街があり、そこにサルベージ業者が群がっている。この海中都市は、遷都のために廃棄されたもので、めぼしいものは、ほとんど残っていない。それでも、偶に変わったものが上がる。ちょっとした魔道具もその一つだ。だからと言ってサルベージの彼らが、町を壊して迄お宝を探そうとしない。そんなことをしたらポー王国の攻撃を受けて海に出られなくなる。ポー王国の人魚たちは、前の街を未だに監視しているということだ。


 水中で長時間生きていけるようになったオレにとって、この遺棄された街は、今でも住めそうなぐらい綺麗で魅力的なところだ。ここに住もうかなと思ったこともある。だけどポートレイの人たちがオレのことを変な目で見ると思ってやめた。


 サルベージ船に見つからないように海中を進み、旧ポー王国市街を抜けて大陸棚を見下ろすところまで来た。ここからは崖になっていて急に海の深度が上がる。それでも深度100メートルはいかないので、海底は、まだ明るい。更に進むと深度が上がり薄暗くなる。


 新首都の水深は、200メートル。光が届くギリギリのところだ。途中からは、首都の明かりで周りが明るくなる。ここは、高度に発達した深海都市なのだ。


 都市の入り口近くに行くと人魚の衛兵がイルカと共に巡回していた。


「ようダークじゃないか。海王様に呼ばれたか?」

 クルックー

 人魚の王ポセイドンが、すべての海の海王。


「呼ばれていないけど、オレ、サモル王国に行くことになったんだ。それで挨拶しに来た」


 クルックー、クルックー

「そうか。フラッパーがクラッパーに聞いてくれた。王は、シーラカンス様と迎賓宮にいるぞ」


 イルカのフラッパーは、イルカの間だけだけど、テレパシーが使える。竜宮にいる仲間と連絡を取ってくれた。


「ありがと」


 イルカの情報網はすごい。これで、ポー王国の首都を守っている。

 オレは、手を上げて、二人にお礼を言った。竜宮は、町の奥にある。広大な首都を眺めながら、先を急いだ。


 竜宮の門にたどり着いた。門で、竜宮の門番と、さっきフラッパーに海王のことを教えてくれたクラッパーに、お礼を言って竜宮に入る。竜宮は、クジラとか、海の巨大生物も入れるように作っているので目茶目茶広い。見たことはないが、シロナガス族は、体長が最大1キロメートルになるそうだ。彼らを式典に呼ばないといけないので、人魚族が海王になった何千年も前に、ここに竜宮を作っていた。

 もう一つ、ここに竜宮を作った理由がある。ここには、魔力だまりがある。地下のライブストリュームが、溢れているところだ。これを汲み上げて都市の明かりや、大型魔道具を動かしている。現ポー王が、ここに遷都した理由だ。


 今度は、女中を捕まえた。

「ポー王は?」

「迎賓宮よ。ダーク君も普通に泳げるようになったわね」

「シーラカンスの鱗を持ってやっとみんなと同じぐらいだよ」

「じゃあ、もっと頑張らないとね。何か持って行ってあげようか?」

「海ブドウがいい」

「分かったわ」


 竜宮付きの女中達には、ライブクリスタルのヨナを作らされた時に、ずいぶん世話になった。あの時は、無理やり作らされたので、まったく動けなくなり、竜宮に4週間も滞在していた。ライブクリスタルのヨナは、海の宝だ。それを作る触媒になるオレは、竜宮で有名人だった。ただ、4週の内、2週間寝たきりだったので、情けない方で有名人な気がする。何か困ったことがあったら、みんな助けてくれる。人族の成人は15歳だ。ライブクリスタルを作ったときは12歳。オレは、今年16歳になる。なのに、大人になった今でも、みんな子ども扱いしてくる。まあ、18歳ぐらいまでは半人前。普通に子ども扱いなんだけどね。


 シーラカンスの体長は50メートルぐらい。中途半端に大きいので、竜宮だと迎賓宮ぐらいしか居場所がない。ここに、ライブクリスタルのヨナもいた。彼はテレパシーで話す。


「ダーク来たか」と、オレの気配を感じてポセイドン王が振り向いた。

― ドラグーン王家の姫の護衛をするんだって?

と、ヨナが話しかけてきた。


「もう、話したの?」


「そうじゃ」

「行くのなら、ドラグーン王家の姫とローマニア王家の姫を、ここに連れてきてくれ」


「ローマニア王家の姫?」


― ローマン王国の姫君は、サモルの魔法学園を受験したそうだぞ。

「ローマニア王家も親戚だ。ついでに助けんか」


「何で王家の姫が、他国の学校に行くんだ」


― エマ・レイ・ローマニアは、聖女の卵だよ。それがわからんローマン王国のラクト魔法学園が、エナに入学試験を受けさせなかった。特待生だということにしてな。それが、本人にバレたわけだ。攻撃魔法を重視しているラクト魔法学園だとエマは落ちるからね。


「サモルの学園も大概なんじゃが、ギリギリ実力で受かる仕様じゃ。それで、姫自らの希望で、サモルに滞在しとる」

「ポー国が、サモル王国とローマン王国との国交が途絶えて300年。いいかげん、国交を回復したくてな。良いか、秘密裏にだぞ」


「この情報って、全部ヨナの話?」


― 友達のピクチャーロイドから聞いた話しだよ。ダークの話をしたら助けてほしいって言ってきたぞ


 ライブクリスタルのヨナは、魔結晶の塊。ヨナという魔結晶のコアに800万もの魂の残滓が結晶化して宿っている賢者の石だ。賢者の石のなかでもライブクリスタルは、話す賢者の石で、ライブストリームの旅人と言われている。

 ピクチャーロイドは、絵画の中の住人。生きた絵のことだ。絵の中だと、どこにでも移動できる。海の中にもタペストリがあるので、海にも偶にやってくる。


「助けろってどういう事?。今もサモル王国にいるってことは、魔法学園に受かったんだろ」


― ギリギリね。でも、ギリギリだろ。彼女、自信を無くしているみたいなんだ。

「そんなの友達ができれば大丈夫じゃろ」

「レジーナとエナは親戚だ。引き合わせろ」


「なるほど。それならできそうだ」


「よし、この話は終いだ。ダークは、グランの呪いの話が聞きたかったのだったな」


「そうです」



 ずいぶん呪いの話をしたが。海の王と惑星バースの最長老と賢者の石が集まった知恵でも答えが出なかった。


「ハー疲れたわい。ダークや、この話はここまででええか」

「我ら歴代の海王は、ずっと気にはしいた。だが、原因がわからんのだ」

― ごめんな


「そうでもない。飛びサソリが多い理由を調べてみるよ。オレたちが生きていけるだけ繁殖しているんだ。そこが手がかりだよね」


「何か分かったら話に来てくれ。出来ることがあったら協力する」

― 姫たちのことも頼むね

「もうすぐ日が暮れる。今日はここに泊まっていくか?」


「そうだね。古代の魔王の話とか、今の魔族の話も聞きたいし」


「わしは公務がある。またなダーク」


「ありがとうございました」


― じゃあ二人の飯を持ってきてもらおう。俺が頼むよ

「すまんの」

 ヨナはそう言ってイルカのジョーを呼んだ。彼がヨナの移動を助けている。ヨナは、移動しなくてもテレパシーで話せるのに、いちいちジョーを呼んで竜宮をうろうろする。


 この後、ヨナとシーラカンスと3人で、色々話すことになった。



 翌日オレは、ポートレイから、グラン森林に旅立った。海路を行けば、3泊4日で着くわけだが。それならオレにとって陸路と日数が変わらない。途中白い巨狼のホワイトにも会いたいし。

 昼過ぎにグラン森林の入り口に入って驚いた。ホワイトがオレを待っていた。狼というのは、仲間を大切にする。ホワイトにとってオレが身内だという事だろう。ホワイトと、拠点にしていた森の中央にある岩場に行った。そこでホワイトに、「自分の家族を作ってここを守れ」と、指示した。そう言うとワオーーーンと吠えていたから了解したのだろう。ここには、2年もかけて集めた鉱石や貴重な素材がある。2年の間オレがいたせいで、オレがいなくなると、ここのテリトリーは、ぽっかり空いている状態になってしまう。これをホワイトに任せたい。

 そして、中央の岩場を超えて王都側に走る。今日はもう4月の初めだ。森でのんびりしているとエマがローマン王国に帰ってしまう。


 翌日、森の端近くにたどり着いた。話しに聞いていた巨大な壁が遠くに見えるから間違いない。王都は、この防壁で、魔獣を食い止めている。壁を見ながら海側に行くこと1時間。王都の冒険者ギルドが運営している魔の森の門にたどり着いた。


「止まれ!。冒険者証を見せろ」


「ないよ。オレはポートレイの人間だ。陸路で王都に来ただけだよ」


「噓を着くな。もしかして魔物が変身しているのか」


 ここでもめる気はない。相手に従う事にした。


 検問所の控室で、名前とかいろいろ聞かれた。そこで、メルド大尉の名前を出して迎えに来てもらうことにした。そこから待つこと3時間。やっとメルド大尉がやってきて無罪放免になった。


「ダーク、この間言っただろう。魔の森を超える人間は王都に居ないんだ。何かの証明を持たせればよかった」

「ありがとうございました。ところで、なんで使い魔を使って連絡しないんですか。王都なのにポートレイより効率悪くないですか」

「人種差別の弊害だよ。亜人が良く使う使い魔を貴族は嫌うのだ。これでも異例の速さで伝わったのだぞ。普通だと、この倍の時間かかる」

「連絡って、あれですか?」

 上空を飛んでいるワイバーンを指さした。

「私が軍人で良かったな」

「メルドさんもワイバーンに乗れるんですか」

「一応な。こら、そんなキラキラした目をしても乗せてやらんぞ。ここには馬車で来た。澄み音川はフェリーだからな」

「残念。オレの友達が竜騎士見習いなんです。今度会ってやってください」

「砂塵族のリュートだったか。はぐれ竜騎士のシドの見習いだったな。今度そうしよう」「ありがとうございます。それで至急のお願いがあるんですけど。今日レジーナに会えますか?」

「どうした」

「故郷で頼まれた話です。ローマン王国のピクチャーロイドが言うには、エマ姫は、聖女の卵だそうです。聖女のスキルって変わっているでしょう。ローマン王国のラクト魔法学園ではちゃんと受け入れてもらえなかった。それで、サモルのサウザンド魔法学園を受けて合格したんですが、ギリギリの合格だったみたいで、自信を無くしているそうなんです。このままだと落ち込んで国に帰ってしまうそうです。ローマン王国の姫と言ったらレジーナの親戚じゃあないですか。ピクチャーロイドが言うには、エマに友達ができれば、普通に学園生活を送ることができるって言うんです」

「内緒だがダークは、両国の本家だったな。わかった。話してみよう」

「もう4月です。帰国するかもしれないので、エマの滞在先も調べてください。レジーナが会いに行ってもいいと言ったら、連絡も」

「急ぎか。仕方ない」

 ピューーーイ

 メルド大尉が口笛を吹くと上空にいたワイバーンが下りてきた。ワイバーンに乗っている竜騎士にメルド大尉が指示を出す。

「了解しました」

「頼んだぞ」

 指示を終えたメルド大尉がオレに振り返った。

「普通要人が滞在すると言ったら。みゆき通りのウッドホテルだ。今から行くぞ。姫が来られなくてもダークが会いに行け。身元は私が保証する」

「オレですか」

「ダークが言い出したことだ」

 メルド大尉は、姫の近衛というより軍人と言った感じ。竜騎士の従い方を見てもそうだ。竜騎士の雰囲気だと、大尉を相手にしているというより少佐を相手にしていると感じた。


 有能すぎて上に嫌われるタイプかな。


 オレは、王都に来た早々グラン家の末裔を名乗ることになってしまった。

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