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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
海底編
36/37

BD2-1

ピクチャーロイドのエリートグリーンが突然いなくなった。居なくなった。居なくなって1か月。姫たちが必死になって二人を探しているが見つからない。帝国がピクチャーロイドの情報を隠蔽しているからだ。

後は、帝国の息がかかっていない国で調べるしかない。姫たちは、海の国を目指すことになった。

世は、闇と光。昼と夜に分かれる。しかし、漆黒の闇の中にも輝く新星が現れるものだ。



 最近エリーを見ない。そして見なくなって1カ月が過ぎようとしていた。いるとうるさい姉のようで、鬱陶しいと思うのに、いないと、それは、とても寂しい。エマにも、グリーンがいないと訴えられた。それは、同じ時期だ。いったい二人は何処に行ったのか。絵の中に入れないオレは、戸惑うばかりだ。


 学園の図書館で、レジーナとエマが必死になってエリーのことを調べてくれている。分かったことは、300年前どころか、3000年前にもエリーの記録があることだ。これより古い記録は、帝国によって消されている。知ろうと思ったら、帝国の手が及んでいない国の記録を調べるしかない。オレたちは、益々、人魚国に行くことを願うようになった。


 梅雨は、終わりに近づいている。しかし、この長雨で澄み音川が増水し、漁をするのが大変だとニッチがぼやいていた。地下の水路は、いたって平和。これぐらいの増水ぐらい、へでもない。水門を預かっている。リバーリザードマンが、水量を調節しているからなんだけど、魚人たちは、それも含めて自分の手柄のように言う。


 この1ヵ月で、オレたちは、大気のマナを自分に取り込むことを意識できるようになった。それは、姫たちが考えていたような魔力を全部消費して魔力が空になったら、マナの吸収を感じられるというものではなく、呼吸法から入るものだった。その呼吸法は、前世の修行法に似ていた。空気を一瞬で吸い込み、長く息を吐く息吹き。気を感じ深く取り入れ操る気巧法など、オレは全て知っていた。つまりオレは、それらを幼い時からやっていたことになる。これらのことは、レジーナとエマに言われてすぐ気づいた。でも、みんなに合わせて何も言わなかった。


 魔素を感じられるようになって、オレの見る風景は一変した。まるで、海の中にいるような濃い大気。魔力を体に充実させるだけで浮くようになり、思い通りに移動できる。そこには、全く違った世界が広がっていた。

魔法を発動する前に魔素が集まるのを感じる。攻撃魔法を防ぎたいと意識すると現れる魔力のシールド。すべての質感が鮮明になった。

 王都から遠くにある魔の森からは、魔素の湯気が立ち上がり弱く輝いて見える。それは、目を凝らすと、人からも立ち上がっていた。人々は、魔素の雲を身にまとっている。魔力を製造しているのだ。


 ここまで感じられたのは、オレだけでみんなは、意識して魔素を集めることができるようになって疲れにくくなっただけ。それでも格段の進歩だと思う。



放課後の図書館


「どうだ、新しい記事は見つかったか」


「ダメ」

「ジョーンズに、本国で調べてもらっていますが内容は、ここと変わりません」

「帝国の奴ー。なぜか、大事そうなところは抜け落ちているのよ」


「そうだな。でも分かったこともあるじゃないか。ピクチャーロイドは、帝国にとって、ここ迄隠さないといけない秘密だったってことだろ」


「そうね。だから、他のピクチャーロイドの記事を探していたの」

「他の人に会えたら、グリーン様の行方が分かるかもしれないじゃないですか」


「ないんだろ」


「ええ・・」

「これ以上、根を詰めるより、ポー王国〈人魚の国〉に行く努力をした方がいいと思います」


「ダークの方はどう?BD2は完成した?」


「もう直ぐ完成だ。もう話しているんだけど、いきなり海に連れて行くって話しだろ。すごく嫌がってる。ドロイドって言うのは、錆びるのが嫌いなんだ」


「グリーン様とお話ししたかった」

「エマ、これからよ」

「ええ・・」


「週末にでも王宮に連れて行くよ。エマの方は、学園でいいか」


「お願い」

「私の方は、メアリの部屋にドロイドを置くことになりました。私の部屋に置きたかったんですが、メアリが譲らないんです」


「まあ、いろいろBD2と話してみなよ。執事ドロイドだから、お茶とか結構おいしく入れてくれるよ。メアリと話が合うんじゃないか。じゃあ、エマは、今日でいいよな。ヒパティア先輩のラボにおいでよ。BD2に引き合わせるから」


「行けば私も会えるんでしょ」


「じゃあそうするか。30分後でいいか。今日会うんだったら、レジーナも呼び名を決めろよ」


「30分後ですね」

「そっかー、名前か」


「30分で決めろよ」


「いじわる」

 レジーナが図書館の机の上でぐでーとした。なかなか、名前が決められないお姫様だ。



 オレは、ヒパティア先輩のラボに急いだ。まだ、二人には、MR1がいる地下に連れて行ったことはない。それは、内緒で、地下を掘っているからだ。北の湖迄貫通させて、そこから宇宙に出る予定。宇宙空間は、魔素が無くなるので、従来通りのシステムになる。そうなると魔石で動いているMR1も従来通りの半導体で作った集積回路が必要になる。まだまだ、問題山積で、ちょっと事情が分からない人には見せられない。

 幸いなことに、姫二人は、ヒパティアに弱いので、わがままを言って地下を見せろとか言ったことがない。その割には、よく先輩のところに遊びに来る。


「先輩、30分後に二人が来ます。エマは、今日、BD2を連れて帰ります」

「わかったわ」


 ヒパティアは、優雅にお茶を飲んでいるが、頭の中は大変だ。今は、脳を動かすだけで、宇宙ステーションを操縦するという超高度なシミュレーション中。


「今はディフレクターの調整中なのね。悪いけど、二人を地下から連れてきて」

「了解」


 地下に行くと、BD2を作るための機材でごった返していた。


「「「マスター!」」」


「やあ、調子はどうだい」


「「「良好ですマスター」」」


「分かった。BD2二人は、先輩のラボに上がってくれ。MR1はごめんな」


「小型ドローンは、いいですよね」

「オレの視覚に、アクセスすればいいだろ」

「えーーー。今日BD2が誕生したと言っても過言ではないのですよ」

「分かった。1センチの大きさまでだからな」

「ありがとうございます」


 BD2は、チタン製。チタンメッキというのは、どんな色にでもすることができる。そこで、姫二人に、色の希望を聞いた。エマは、すかさず、モスグリーンを選んだ。国の色だしね。BD2は、儀礼や祭礼用にも使われるし。ところが、レジーナが悩んでしまった。サモル王国のカラーは、水色。レジーナの本名のレジーナ・ノバ・ドラグーンのドラグーンは、竜ではなく龍。それは川の龍だったり、梅雨時期に雨を呼ぶ偏西風の蛇行するジェット気流の龍だったりする。だから水色。それなのに、なぜか嫌がる。祭礼用にも儀礼用にも申し分ないと思うんだけど。レジーナは、悩んだ末、メタリックシルバーに青いストライプの模様を施したデザインにした。メタリックの銀〈サテンシルバー〉とは渋い。オレは賛成だけど、なんでこうなった。その上、いまだに名前で悩んでいる。レジーナに仕えるBD2にとっても名前は一生ものなので、これだけ主が悩んでくれるのは嬉しいことだけど、そろそろ決めてほしい。


「BD2、私の後ろに立って」

「「はい、ヒパティア様」」

「二人が来たら、エマ、そしてレジーナと紹介するわね。名前を呼んでもらうから、声紋とかもセットするのよ」

「「心得ておりますヒパティア様」」


「そろそろ来るぞ」


「「おおっ」」


コンコン「エマです」


「どうぞ入って」


「おじゃまします」

「私も会いに来ました」

 二人が軽くスカートを上げる仕草をしてラボに入る。


「ようこそ、そこに座って」


 ヒパティアの後ろには2体のドロイド。二人とも色を心得ていて、自分のBD2の前に座った。


「じゃあ、エマからね。BD2の名前を決めましたか」


「はい」


「では、このモスグリーンのBD2に向かって名前を呼んでください」


「ジャック・グリーン。エマです。いつもは、ジャックって呼びますね」


「はい、マイレディ」


 エマにはわからないが、ジャックの中は、ものすごいことになっている。マスターがすべて、エマに書き換わる。エマが、ダークを通り越して最優先人物となった。ただ、ダークが「BD2緊急事態だ」と言って呼ぶと、優先事項か考慮され、ダークの指示にしたがうことになる。


「次は、レジーナね。BD2の名前を決めましたか」


「はい」


「では、このメタリックシルバーのBD2に向かって名前を呼んでください」


「レノ・シルバー。レジーナよ、仲良くしてね」


「はい、マイレディ」


 レノの中も、ものすごいことになっている。マスターがすべて、レジーナに書き換わる。レジーナが、ダークを通り越して最優先人物となった。ただ、ダークが「BD2緊急事態だ」と言って呼ぶと、優先事項か考慮され、ダークの指示にしたがうことになる。


 二人とも、普通の名前にしたなと思う。レジーナは、自分の名前を1字使った。一生懸命考えたんだなと思う。


「本当に人型なんですね」


「月に1回は、このラボに連れてきてメンテナンスしてくださいね」

「動きが、まだぎこちないんだ」


「そうは見えないわ。それにしても二人とも黙ったままだけど」


「マスターをすべて、ジャックがエマ、レノがレジーナに書き換えているところなんだ。ただ、緊急時に、おれが「BD2緊急事態だ」って呼べば、考慮して、オレの命令に従うけどね。そんなの、よっぽどのことがないと、無いと思うよ」


「BD2って思ったより大きかったのね」180センチある。


「いろいろ、オプションをつけたんだ。機能停止にはなりにくいと思うよ」


「メインはもう書き換わっているけど、サブルーチンは、オールドPCって言う古いタイプなのね。安全のために、もうちょっと待ってね」


 先輩もずいぶん、前世言語を使ってしまっているな。二人が目を白黒させているんだけど。

「他言語を学習し続けるドロイドだから、膨大な記憶量になるんだ。そのベースを全部、レジーナとエマにしているところだからね」


 待っている間、オレがお茶を入れに地下室に降りていく。MR1は、ハエのドローンで、映像を撮りまくっている。

 BD2達は、オールドPCのCPUのコア数が1000しかないので、ちょっと苦戦しているがすぐだろう。ところが魔石を使ったCPUのほうは本当に優秀だ。メインの量子コンピューターは、もうシステムの再構築を終えている。だから、優先順位の高いものだけやって後はじっくりでもいいと思うんだけど。古典CPUやGPUが使っている記憶装置の方は、検証しながらやっている。


 お茶を持ってラボに上がると、思った通り、BD2が、自分のマスターと話している。オレもMR1もほっとした。

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