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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
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フリーな1日

 この後は1日フリーになった。まずは、リュートのところに行こうと思う。フィールドインのトンテキ屋で、これでもかというぐらいトンテキを買った。親父に、「誰がそんなに食うんだよ」と聞かれたので、事情を話すと、「飯も食わないと元気が出ないぞ」と、大量に付けてくれた。


スラムを超え海岸辺りの洞窟に行くと、オレのにおいじゃないな。トンテキの匂いを嗅ぎつけてレッドが洞穴から出てきた。この間会った時は体長120センチしかなかったのに、もう体長150センチぐらいになってる。赤鼻が、レッドを甘やかせてなければいいと思うんだが。レッドは、山のワイバーン。魚が苦手だったので、赤鼻に金貨5枚渡して、魚に慣れるまで、離乳食代わりに魔海獣肉を食わせてくれと頼んだ。でも、親代わりのブルーやシドに、魚に慣れさせないといけないと釘を刺されている。


カオーーン、カーオン、カーオン。

 飛びついてきた。

「アハハ。レッド、デカくなったな」

「まだまだだ、これからもっとデカくなる」

 オレとリュートが話している横で、レッドが、オレの持っている土産に頭を摺り寄せている。

「なんだ、腹減ってたのか」

「さっき食ったばっかりだぞ、こいつ」

「どうだ、魚は食べられるようになったか」

「もうちょっとって感じかな。肉が離乳食って、どんだけだと思うけどな」

「シドは居るか?」

 レッドが、早く土産を出せと頭をオレにすり寄せてくる。

「ああ、漁を終えて帰ったばっかだ。ブルーもいるぞ」

「ちょっと話があるんだ。リュートも聞いてくれ」

「おう」


 それでシドたちに、今までの経緯を話した。加奈一家と闇ギルドの抗争はよく知っていた。赤鼻が話したのだろう。そして、人魚姫の話。さらに、うちの姫たちが海に潜ろうとしているので、助けてやってくれと話した。レッドには悪いが、話が終わってから土産を出した。

 シドは、姫たちを守ってくれると約束してくれた。リュートとレッドは修行中で、「姫と、どっちが先に海に潜れるようになるか競争だ」と、鼻息が荒い。オレが、人魚たちと変わらない泳ぎをするのを二人は知っている。オレは、「頑張れよ」と、洞窟を後にした。



 次は、赤鼻のところだ。赤鼻は、スラムに冒険者ギルドを立ち上げようとしている。ここが、スラムとフィールドインの治安も守る。


 スラムの加奈邸に行くとちょっと様子が違った。いつも閉められていた門が開いていた。いつもの小鬼に声をかけると、加奈の執事のサルマンがやってきた。


「ダーク、相談がある。お嬢様に言ってくれ。ここに入り浸るなって」

「仕方ないんじゃないか。これからギルドを興すんだろ。赤鼻1人じゃあ無理だろ。じゃあ、加奈もいるのか」

「もう、3日目だ。越国屋だって再興したばかりだぞ」

 サルマンは鬼族で実際の字は沙流万。加奈一家の中で顔が通っているから、要望とか苦情が全部サルマンに行くのだろう。

「ちょっと頼みたい仕事があるから、そのとき言うよ」

「すまん。来てくれ、案内する」


 加奈邸に入ると、仕切っていた部屋の壁をぶち抜いて広間を作り、ギルドらしくなっていた。その仕上げの職人がまだ働いている中で、加奈一家がせわしなく動いていた。掃除やら、机の手配やら、大工にカウンターを作らせたりと忙しそうだ。

 何より驚いたのは、2階の階段に人が大勢並んでいることだ。それは、1階もそうだった。


「サルマン、この行列は?」

「2階に続いているのが、事務員の面接で、お嬢様がやっている。1階が冒険者登録で、赤鼻がやっている。普通は、事務員の募集が済んで、教育も終わってから冒険者登録だろう。あいつはバカなんだよ。お嬢様に甘え過ぎだ。あいつが事務員の面接をやらないといけないのに」

「分かる分かる。じゃあ、赤鼻から行くか」

「ああ、頼む」


 冒険者登録の方は、オープンでやっていたので声をかけやすかった。赤鼻と話している間に、サルマンに、加奈に会いに来たと伝えてもらう。こっちの話も込み入っている。


「赤鼻ー」と、手を振った。


「ダークじゃねえか。悪い、青字、代わってくれ」

「俺が?」

「いいから」


「詐欺師の進展があったんで」

「そうだ。加奈も交えて話しがしたい」

「了解しました」

「冒険者登録はいいのか」

「なーに、登録だけでさ。ギルド開始は、まだだって言うのに、押しかけてくるから、名前を書いてもらっている。細かいことは、後日でいいでしょ」

「そうだな。加奈の方は、事務員の面接だろ。サルマンに話を通しに行ってもらっている。ここで待っていようぜ」

 それで、レッドの食事の話とか、ギルドに、もう依頼が入っている話とかを聞いていたらサルマンが来た。


「もうちょっと待ってくれ。もう直ぐ昼だろ。昼飯でも食べてきなってこれを」

 サルマンが、銀貨2枚くれた。

「そうするか」

「スラムも旨い飯屋がありますぜ。魚だったら大概旨い」

「1時間したら戻ってくるんだぞ」

「へい」「わかった」


 スラムは、魚人が多いところだ。彼らは、雨に濡れても平気なので、本当にあばら家が多い。そうでない亜人や獣人の家はまともだ。赤鼻が連れて行ってくれた飯屋は、ありぜん。魚人がいっぱいいるあばら家の街並みの中で、立派な建て構えだから目立つ店だ。店主はリザードマンのザリガ。火に強いサラマンダー系のリザードマンだ。


「ザリガ、来たぜ。お任せで頼む」


「待ってな」


 奥から大きな声。席に着くと、リザードマンの給仕が、水を持ってきてくれた。


「赤鼻さん、今日は?」

「今日は、本当に飯を食いに来ただけなんだ。この人はダーク。姐さんのお気に入りだ」「まあ、ダークさん、うわさは聞いてます」

「どんな噂です?」

「お強いんですってね。うちのに、腕によりをかけてもらわなくっちゃ」

 サリサは、嬉しそうに、いそいそと厨房に向かった。

「サリサさんちょっと。あー、話が大きくなっちまった。ここの親父も、トンテキ屋の親父と変わらないですぜ」

「言っている意味が分かったよ。量が多いんだろ」

「今日は、あっしも覚悟しないと。ギルドで、魔海獣狩りをするって言いましたよね。うちのにちょっと狩らせて、ここにもってきて料理を試行錯誤してもらっているんでさ。なかなか旨いですぜ」


 赤鼻の予告通り、ものすごい量のおかずが出てきた。給仕のサリサさんに、料理の話を聞きながら食べる。魔海獣は、魚というより、肉の味がした。これならレッドも海でやって行けそうだ。


「旨いけど」

「美味しいでしょう」

 サリサにニコニコ近くにいられると、箸を休めることができない。オレも、赤鼻も覚悟した。


 何の話をしに来たか、話すのがすっ飛んだころ、食事が終わった。銀貨2枚を払って、加奈邸に戻ると、加奈邸の中にできていた行列がはけていた。サルマンに、「お嬢様が待ってる」と、言われて、いつもの加奈の部屋に行った。

 オレは、王都に来て食事で一度も困ったことがない。別の意味で、すごいけどね。


「二人ともお腹を膨らませちゃって。ありぜんに行ったのかい」

「すいません」

「でも旨かったよ」


「詐欺師の進展があったんだろ」

「昨日、詐欺師に会って話をしたよ。こっちが知っていることは全部話した」

「それで」

「家に帰した。そしたら、今日、宰相のマトバに王宮に呼び出された。詐欺師と、アウグストと宰相は繋がっていたよ。アウグストも詐欺師も帝国への楔だろうな。雰囲気からすると、アウグストの嫁は帝国だ。みんな表立って味方になってくれないだろうけど、敵じゃあない」

「宰相様がねぇ」

「マトバさんは、加奈に感謝しているって言ってたよ。フィールドインとスラムの治安は加奈のおかげだって」

「そう言ってもらえるだけでも嬉しいね。赤鼻、このままギルドを盛大にやるよ」

「へい」

「それもそうなんだけど、オレは、これから海に潜ろうと思うんだ。姫たちがやる気だからなんだけど、人魚姫の話を直接人魚の国で聞く。アウグストとは別ルートで、人魚国と連絡出来るようにしてくれ。そのうち姫たちを連れて訪問に行くとね」

「また、大変なことを言う。越国屋も盛大にやれってことだろう。私の体がいくらあっても足りないじゃないか」

「一つ考えがあるんだ。オレ、バザールにいる小間物職人のスミスと仲がいいんだけど」

「腕がものすごくいいって言う」

「でも堅物なんだろ」

「それが、仕事欲しいってさ。出目金屋の真珠はどうなった?」

「親父が、全部ため込んでたぜ。越国屋の再興のために使えって、二束三文でくれた」

「その真珠で、スミスを死ぬほど働かせるっていうのでいいんじゃないか」

「面白そうな話じゃないか。商売が広がる。ギルドのめどが立ったら、海の仕入れをやるよ」

「姐さん、・・・(もうちょっとギルドにいてくれると思ったのに)」

「情けない顔するんじゃないよ。赤鼻も覚悟を決めな」

「へい」



 ツインには、加奈が話してくれるって言うから、次にボルケーノに行った。やはり、詐欺師の顛末を話して、加奈に頼まれたことを伝えた。


「詐欺師のことは、私からバルトロに話しておくね」

「もう一つ、加奈から伝言なんだけど」

「加奈からぁ?」

 いやな顔をされた。そういや、加奈とアマンダは、仲が悪いんだった。

「小間物職人のスミスを知っているだろ。働きたいって言うから、加奈になんとかならないか話したんだ。真珠だったら仕入れられるって言うんだ。その真珠、相当あるらしいよ。でも、スミスは働き者じゃあないし、王都に住んでいるだろ。アマンダに間を持ってほしいってさ」

「私が、スミスの尻を叩けってことね」

「いいんじゃないか。腕がいいのにもったいないと思っていたんだ」

「ニッチ、ありがとう。スミスが言うには、アウグストと闇ギルドの仕事を全部断ってたらこうなったって言ってたよ、仕事が、嫌いなわけじゃあないんだから働くだろ」

「分かった。仕方ない。一度、加奈のところに行くよ」

「アマンダが、うんて言わなかったときの話をしなくて済んだよ」

「なんだいその話」

「あー、本格的には、来年からだけど、ドラゴンレースを小規模でも今年からやろうかって話」

「本当か!!」

 ニッチの目がギラギラしてきた。

「なるほどねぇ。うちの旦那を出汁に使う気だったんだ。あの女」

 二人の仲が悪い理由がちょっとわかった。 



 最後に、学園の寮に帰ってエリーとグリーンとMR1を交えて今日の話をすることになった。そこに、研究室にいたヒパティアが加わった。


 ヒパティアが、内情をよく知らなかったので、MR1に解説させながら話すことになった。なので、いつもの3倍ぐらい時間がかかる。これで、ヒパティアも全面的にオレたちの仲間になったと言える。


「ライト様を助けるのは大賛成」

「私もよ」

 ヒパティアの意見にエリーも賛同する。ライトとは、本当に帝国で人質になっているライブクリスタルのこと。ライトをさらって300年も生き続けている主犯が、人魚姫のシーナと皇帝ジャジーラ。

「でも、どうやって救出するの?。相手は帝国だよ」

 グリーンは、それが成功するか懐疑的。

「それはそうね」

 ヒパティアがすかさずグリーンに相槌を打つ。ヒパティアに、グリーンの声が聞こえるわけじゃあないのに、なぜこんなことができるかというと、MR1の同時通訳レベルが上がっているからだ。MR1は、姫たち二人のために率先して、同時通訳技術を上げている。


「オレの頭の中に、転送装置って言うのがあるんだ。例えば、宇宙ステーションを作ったら地上とステーションを瞬間で行き来できる。でも、遮蔽物があると近くに本人確認できる発信機を持っている人がいないと、転送する人物を特定できないんだけどね」

「マスター、ライト様の位置さえつかむことができたら、遠隔でも転送できます」

「そうだね、MR1。転送装置の設置の優先順位を宇宙ステーションの次に設定してくれ」

「了解しましたマスター」


「宰相のマトバさんなんだけど、グリーンと話したいってさ」

「BD2がエマのところに来たらでしょ。いいよ」

「王宮に来てくれるのならぜひエリートとも話したいってさ」

「レジーナのところにBD2が来たら、いいわよ」


「ヒパティア先輩には悪いんだけど、宇宙ステーションとか転送装置の操作法をMR1から学習してもらえないかな。その後の仮想でシミュレーションも」

「いいわ。ダークはどうするの?」

「全然未定だけど、ライトを救出するときは、帝国に潜入する」

「危ないわよ」

「位置の特定がある程度できても、誰かが行かないと転送は、難しいんだ。それって、オレしかいないだろ」

「でも、どう思う。エリー、グリーン」

 ヒパティアが、エリーとグリーンに助けを求めた。

「仕方ないわね。応援する。そうでしょうグリーン」

「そうだね」


 みんなの意見がまとまったところでこの話は、お開きになった。



 夜中、眠れないエリーのところにグリーンがやってきた。


「エリー、夜は寝た方がいいよ。まさか、ジャジーラのところに行くつもり」

「ええ」

「自分の子どもを8人も手にかけたんだよ。会ってもいいことないよ」

「少し見てあげようかなって思って。いまさらいい結末なんて、虫が良すぎるけど、悪い子じゃあなかったのよ」

「話せると思う?」

「さすがに無理だと思う。あの子から光を感じないもの。でも・・・ダークは、レンジャーよ。あの二人が出会うと、よくないことが起こる気がするのよ」

「分かった。付き合うよ。危なくなったら引っ張るからね」

「ごめんね」



 その後、二人を見ることはなくなった。

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