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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
33/37

詐欺師2

 6月になった。王都は、故郷の荒野と違い偏西風が西海上の湿気を強く含んで運んでくれる為、もうじき梅雨に突入するそうだ。水のなかった故郷と違い、王都は、本当に水が豊かだ。偏西風は、王都付近の西アルプスをかすめて、また海に戻っていく。その風が、故郷にも吹いてもらいたいと思う。


 ボルケーノで朝飯を食べながら、アマンダにぼやいた。


「いいな王都は。この時期、オレの故郷なんか殆ど雨が降らないんだ」

「残念ね。荒野を南下すると、赤道からの循環風が吹くから、ここと同じぐらい雨が降るわ。荒野の方が、異常気象地帯よ」

「悪かったよ。そういえば、ローマン王国も稲作地帯だったな」

「雨が良く降るから、川も多いでしょう。魚人たちも住みやすいみたいよ」

「なるほど。そういえば、魚人とマブダチのバルトロは、何か言ってきたか」

「いいところまで行っているみたいよ。昨日は、総力戦だったって、うちの旦那も駆り出されたわ」

「いいね」


「姉御、ダークいる?」

「いるわよ」

 カウンターの裏から、噂のバルトロが出てきた。

「すまん、ダーク。金貨をもう2枚追加してくれ」

「昨日ダメだったのかい」

「絶対あと少しだと思うんだ。バザールの長屋街で見失った」


「分かった。金貨を2枚用意するよ。長屋と言ったら、小間物職人のスミスしか知らないけど。ちょっと聞いてみようか」


「本当か。助かる。ごめんな、俺は、もう寝るよ。チャンスってそうないだろ。俺だけ見失ったところで残って張り込んでいたんだ」

「ゆっくり休みなよ」


「「お疲れ様」」


 バルトロの頑張りを見て、オレも動かないとと思った。

 フレイとロイスは、もう部活を始めている。放課後は時間があるので、久しぶりにスミスの長屋に行くことにした。小間物職人のスミスって人は、とても頑固で、職人気質が過ぎる人なので、ヒパティア先輩とは違うが、やっぱりちょっと世捨て人みたいな人だ。あまり、近所付き合いがあるとは思えなかったけど、何もしないよりましだと出かけた。


「スミスいる?」


「誰もいないよ」


「いるじゃん。相変わらずだな」


「おっ、ダークじゃないか。どうだった仮面は?」


「最高の出来だよ。声も変わるし。折畳めるからかさ張らないし」


「そうだろ、そうだろ。お茶飲んでいくか。今日は何しに来た」


 そんなわけで、長屋に上がった。


「今日は、人探し。狐人を探しているんだ」


「悪いやつか。仮面と関係あるんだろ」


「ちょっとだけね」


「ちょっと待て、面白そうな話じゃないか。茶を入れる」


「はは」

 MR1が言うには、真実を全部話しても86%の確率で問題ないそうだ。スミスを巻き込むつもりはないけどね。スミスは、オレが王都に来た時から助けてくれている。MR1なんか、産みの親同然なんだけど。


「きつねびととは、また希少種だな。どんな奴だ」


「闇ギルドの元番頭。この間、加奈一家が闇ギルドを潰しただろ。その加奈一家から逃げおおせた人だよ」


「加奈一家が闇ギルドを潰した話は聞いたぞ。王都でも有名だ。加奈が、仇のガップ〈闇ギルドマスター〉を討って店を再開したんだろ。あの出入りを逃げられたやつがいたんだ。ボルケーノも1枚かんでたらしいじゃないか。水路に逃げ場はないだろ」


「だから、狐人じゃないかって話なんだ。狐人は変身できるやつがいるからね」


「なるほどな。それで、どんな奴だ」


「名前はわからないけど、詐欺師って呼ばれてた」


「そのまんまだな。ひねりがない。で、なんで、ダークが探しているんだ」


「オレの友達のリュートの話はしたよね」


「竜騎士のシドに弟子入りしたって言う」


「リュートは、普段加奈一家の世話になっているんだ。だからオレも、加奈のところに出入りしてる。それで、いろいろ事情を知っているんだ。聞く?」


「聞く聞く、店屋物を取ろうか。腹減ってるだろ」


「天丼がいいな」


「かー、高くつくぜ」


「腕がいいんだから、もっと仕事をしなよ」


「ガキが俺の心配をするなって。待ってろ直ぐだ」


 スミスが、長屋を飛び出した。大声を出しながら飛び出したので、何事かと近所の人が出てきた。オレは、苦笑いをして、近所の人に愛想を振りまいた。スミスの家は、それなりに防音も効いているが、窓を開けっぱなしているので意味がない。


 スミスが天丼屋まで走ったわけだけど。すぐそこだから。


「すぐ持ってくるってさ。海老をおまけしてもらったぞ。それで、事情ってなんだ?」

「最初、詐欺師は悪いやつだと思っていたんだ。でも、おかしいんだ。もしかしたら、いいやつかもしれない」

「詳しく話せ」


「最初敵は、アウグスト騎士伯爵だと思っていた。気分が悪いことは、全部こいつが関係してくる。そのアウグスト騎士伯爵の収入源は、帝国に売りに出している宝飾類。闇ギルドは、この原料の宝石や原石をアウグストに流していて、その責任者が詐欺師だよ」

「そうだな。俺もあいつらは嫌いだ。だから、あいつらに仕事を頼まれても断り続けているぞ。だから、このざまなんだがよ」

「そうなんだ。スミスは、やっぱりオレ等の味方だね」

「まあ、そうなるかな。俺はなんもやってないけどな」

 そうでもないと、ちょっと手を上げて話をつづけた。実際、オレはすごく助かっている。

「加奈は、宝石の仕入れを復活させて、アウグストに対抗したいんだけど、詐欺師を逃がしてしまっただろ。今派手に動いたら、あいつらにすぐばれる。だから、消そうと考えた」

「そうだな、親の仇うちの続きだ。幹部は皆殺しにしたいんだろう」

「フィールドインもスラムも衛兵がいないからね。加奈たちがそれを肩代わりしてる。近いうちにスラムにギルドを立ち上げるってさ」

「なるほど」

「詐欺師は、宝石が入荷した時いつも、バザールの魔石屋で、幾つか必ず鑑定しているんだ。だから、奴らが宝石を仕入れた時、バザールを張り込んで捕まえようそしているんだけど、いつもまかれる。王都で、何か事を起こすわけにいかないだろ。だから屋さを見つけて捕まえようとしているんだ。どうも、この長屋に住んでいるみたいなんだ。それで、探しに来た」

「変身能力を持っているんだろ。どうやって探す気だ」

「それが、バザールの時も闇ギルドの時も同じ顔をしているみたいなんだ。そうなると長屋もそうだろ」

「どんな顔だ、言って見ろ。長屋で知らない奴なんかいないぞ」

「待ってよ、話は続きがあるんだ。さっき、宝石の仕入れの線から詐欺師を追いかけたって言ったよね。闇ギルドがつぶれたのに、普通にアウグスト騎士伯爵邸に地下の水路を使って運び込まれているみたいなんだ。だから、ここまで追いかけることができた」

「?。話が合わないな。闇ギルドが仕入れていたんだろ」

「そう思うよね。それで、もう一回順序立てて、アウグストの事を聞いたんだ。そしたら、フィールドインからもスラムからも、アウグストの悪口を聞かないんだって。その上魚人からもそうなんだって言うんだ」

「益々つじつまが合わないな。王都じゃアウグストが悪いって広まっているぞ。嫁が帝国だから、完全にやられたって話だ」

「だから、詐欺師を殺るんじゃなくって、話が聞きたいと思ってここに来たんだ」

「何でダークがそんなことをする。そんなの加奈一家に・・・、そうか、あいつら亜人や異人種だもんな。でもよう、幾ら友達が世話になっているからって、そこまですることはないだろ」

「オレは、帝国が嫌いだ。人種差別をあおっているのはあいつらだろ。友達のリュートは、故郷の砂塵族だ。種族が違ってもオレたちと同じ感情がある。なんで差別されないといけない」

「帝国は嫌いだけど話が大きすぎるだろ。そんなのは国に任せればいいだろ」

「オレが、レジーナ姫と友達なの知っているだろ。国が動けないから、帝国に恭順しているんだろ」

「どういうことだ?」

「スミスならいいか。帝国は、うちの国と隣のローマン王国が仲良くしている人魚国の姫を人質に取ってる。人魚姫は聖女で、皇帝はどうやってるか知らないが人魚姫を使って寿命を延ばしているそうだ。もう、300年も生きてる。だから、うちの国は帝国の言いなりなんだ」

 この話の先は、また今度。


ポロッ。

 スミスがたばこを落とした。


「すいません、遅くなって、店が急に立て込んじゃって。エビ2匹おまけしましたんで」


ビクッ「お、おう」


「どうしたんですか、旦那」


「うるせえな。俺のことは若様って呼べっていつも言っているだろ」


「若様って年じゃあ」


「俺は独身だ。いいから帰れ」


「後で、器を取りに来ますんでー」


「ふう、ダークも食え。なんかすげえ話を聞いちまったな。それで、その話と詐欺師がどう関係あるんだ」

「スミスはすごいな。この話を聞いたとき、アマンダたちは、動きが一瞬止まったぞ」

「偶々茶々が入ったからだ。俺もたまげてる。続きは、飯を食いながらでいいだろ」

「やっぱり肝が据わってる。ここからは、オレの想像なんだけど、アウグスト騎士伯爵は、帝都にいる人質の人魚姫の居場所を探っているんじゃないかな。それか人魚国との連絡役か。それだと、海の宝石が手に入る理由にもなるし、フィールドインとスラムで悪評が立っていないのも納得できる。どっちも人魚と魚人がいっぱいいるところだからね」

 その人魚姫が主犯だと認識しているのはごく一部。

「連絡役と探りの両方だろ。帝都で商売しているんだから」

「でも帝都は、アウグストを利用していると思っていると思う」

「まあな」

「だから、詐欺師と話がしたいんだよ。もし詐欺師が、オレの想像通りだったら。オレの事も知っていると思うんだ。王家と直で話せる民間人なんて、今言った立場だったら、知らないわけないと思うんだ」

「わかった。協力する。詐欺師の特徴を言え」

「釣り目で、中肉中背で、抜け目ない感じかな。越国屋のツインも同族なんだけど。ツインの背を低くした感じ」

「うん?。ツインは知らんが、両吉の事か。呼んでこようか。そんな奴には見えんがな」


 スミスが、また、すっ飛んでいった。近所に聞こえる大声で「両吉、両吉ー」と叫んでいる。


「何すか」

「両吉、お前と話したい奴がいるんだよ。俺ん家に来いよ」

「いいですけど」


 ツインの記憶に有った詐欺師が、そのままやってきた。ツインの記憶をリンクしているので、見間違えようがない。


「ダークこいつか?」

「両吉です」


「初めまして、ダークです」

 さっきすごく語ってた割には、唐突に、本人が来たので、気合の抜けた返事をしてしまった。


「どうだ。ダーク」


「本人だね」


「何のことです?」

「まあ座れや。ダークが聞きたいことがあるんだと」

「はあ」

 狐族だけに、キツネにつままれたような顔。


「ごめん両吉さん。ちょっとチクってするね」

 そう言って、ナノドロイドを両吉に仕込んだ。後は時間の問題だ。


「何するんですか!”」


「ごめんな。詐欺師が正直に話すとは思えないからね。ちょっと魔法をね。大丈夫、参考にする程度の事だから。これから話すことに、両吉さんがいちいち反応しなくていいよ。こっちがこうするって宣言するだけだから。まずオレなんだけど・・・・・・」


 そこからは、さっきスミスに話した通りのことを同じように順序だてて話した。両吉は、口をぽかんと開けて、他人事のように話を聞くだけ。さすが詐欺師。


「じゃあ何ですかい。私が、その詐欺師だって言うんですか」


「そうだよ。ツインの記憶とここまで一致する人物はもういないだろうね。ツインも、店が戻るまで、バザールの近所に住んでいたって知ってた?」


 両吉の目が、かすかに上がった。


「それで、私にその話を聞かせに来ただけですか?」


「そうだ。出来れば情報を共有して協力したいかな。オレは、レジーナと学園で普通に話せるんだ。いろいろ役に立つと思わないか」


「言っている意味が分かりませんね。私は平民だ。貴族と関わりなんてないですよ」


「それなら、それでもいいんだ。ただ、覚えておいてもらいたいのは、オレの属性が光ってことかな。入学試験で魔力が520だった。オレなら頑張れば、瞬間移動魔法も使えるようになると思わないか。人魚姫を救えるのは、オレだと思うんだけど」


「ダークは、入学したばっかだろ」


「そうだね。まだ先の話だけど、3年なんて、あっという間だろ」

 実際は、半年しかいない。


「話は、終わりですか?。なんで私が、帝国の聞いちゃあいけない話を聞かないといけないんです」

「お、おう、悪かったな」


 MR1どうだ。

 ナノドロイドの数が足りません。ネットワークを構築するのに時間が必要です。

まあ、急がないさ。

 はい。


 両吉は、怒って帰ってしまった。


「ダーク、返してよかったのか。本人なんだろ」

「詐欺師が本当のことを言うとは思ってないよ。だけど、こっちの情報は、全部伝えたから。目標達成かな」

「ならいいけど。あいつは、メトセラ山脈から流れてきたやつなんだ。日雇いをやって、何とか食いつないでいるって言ってたぞ。後ろ暗いところはないと思うんだがな」

「メトセラ山脈か。ツインに聞いてみるよ。両吉さんは、そのまま放っておいていいから。悪い人じゃあなさそうだし、いつも通り接してやってよ」

「そのつもりだ」

「今日はありがと。天丼うまかった」

「いつでも来い。たまに仕事もくれ」

「それ、オレに言うんだ」

「いいだろ」

「越国屋に聞いてみる。ちょっとした宝石だったら、仕入れを復活できるって言ってたから」

「本当か、頼んだぞ」


 本人に会えたし、それにナノドロイドを仕込むことができたので、ボルケーノの仕事は、取り下げることにした。バルトロにも来てもらって、依頼達成ということで、金貨2枚を支払った。その足で、越国屋の加奈とツインに、このことを話してくれと頼んだ。バルトロは、自分で最後までやれなかったのが悔しかったのか、また今回のような依頼をしていいぞと言ってくれた。

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