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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
31/37

海に潜るには

 授業後、ちょっと教室に残って、魔力だまりの見学の話から、まったく違う話になった。


「ダークもフレイについて行って、魔力だまりを見学するでしょ」

「う~ん、パス」

「何でよ」


 実は、勝手に見に行こうと思っている。そうなると、ただの見学なんかしてもしょうがない。でも、他国だし、正直に言えないので、気になる話に持って行ってみた。


「最初に、ウシキ先生が言っていただろ。海にも魔力だまりがあるかもしれないって。おれたちの国とローマン王国は、そもそも、なんで昔は、人魚の国と仲が良かったんだ。稲作は関係ないだろ。魔力だまりがある国は魔法が盛んなんだよな。うちに魔力だまりはない。その割には、魔法師になれる人材が豊富じゃないか。じゃあないと毎年フットサルでうちが上位を占めることなんてできないだろ。昔は、海と魔法交流が盛んだったってことじゃないのか」


 姫二人が、ぽかんと口を開けて閉めない。どうやら当たりっぽい。


「ダークさん、海に潜りたいんですか?」

「人魚族や魚人と仲良くなりたい。だって、フィールドインにもスラムにもいっぱいいるからね」

 実際は、もう仲がいい。それは竜宮の人魚たちもそうだ。

「それは、賛成だけど、そっかー」

「じゃあ、風魔法を覚えないとですね。息できないと大変ですよ」

「それと水魔法よ。移動手段は水力じゃないと、人魚たちに喧嘩を売っていることになるわよ」

「珍しいな、親身になってくれるとは思わなかったよ」

「だって私たち、その勉強中ですよ」

「図書館で、だいたいの雰囲気はつかんだのよ。後は練習するのみね」

 エマが頷く。

「二人とも、海に潜る気なのか」

「内緒ですよ」

「お母さまにバレたら絶対怒られる」

 レジーナは、王妃に絶対服従かというぐらい弱い。


 オレの勘は外れたのかな。サモル王都の近海に、魔力だまりがあることを知っているのかと思って鎌をかけたけど、姫たちは、オレの勘の斜め上を行く。


「どうする。ダークは、フレイたちとフットサルをやっているんでしょ」

「それとも、私たちと、海に潜りますか?」

「どうするって、そりゃあ、姫たちと海にいくよ」

 ポセイドン王に姫たちを連れて来いと言われているし。願ったりかなったりだ。

「この裏切り者」

 フレイが、くってかかって来た。

「裏切者って、フレイは、もうすぐ入部するじゃないか。それこそ裏切り者だろ。オレたちと遊んでくれなくなる」

「月1回は、魔獣狩りに行くよ。その方が、フットサルも強くなるからな。分かったよ。裏切者は、俺でいい」

「じゃあ決まりね」

「オレ、風属性ないよ」

「ダークは、普通に息できますよね。風属性がないのに息ができているじゃないですか」

「そういうものなんだ」

 ここは姫たちに合わせることになる。が、そのうちバレルとも思う。

「そういうものよ」

「俺も海に行く」

「オビトもなのか」

「姫たちをほっとけるか。俺が親父に殺される」

「うんうん」

「くっそー、俺も息の練習だけしとこ」

「フレイはフットサルを頑張れよ」

 フレイが頭を掻いた。

「狭き門だからな。入部希望者は、もう30人を超えているんだ。その中で入部できるのは、7人。試合のレギュラーは、8人。ベンチの控えは、4枠しかないんだ」

「フットサルは、フィールド4人にキーパー1人の5人制だものね」

「部員は、全部で、21人ってこと?。ずいぶん少ないな。練習を見に行ったけど、結構いたよな」

「いや、特別枠が4人だったかな。プラス4人で25人。練習の方は、OB、OGが手伝ってくれているんだ。アステア大陸の魔法学園で最高峰のチームだから、先輩方の入れ込みもすごいんだ」

 おれはフレイの肩をポンと叩いた。

「入部に落ちたら一緒に海に行こうな」

「縁起でもないこと言うな」

「大丈夫、入部自体は試験なんかないから」

「そうなんですね」

「最初は、みんな入れるんだ。夏までだけどな。伸びしろがあるやつとか頭角を現すやつが、残るって感じかな」

 この中で、オビトが一番詳しそうだ。

「草フットサルが強いのは基礎がしっかりしているからね。でもその子たち〈貴族〉だけ優位なのはおかしいわ」

「そうです、そうです。それで敗者復活で、入部できることがあるんだ。その特別枠が4人」

「フレイみたいに、大器晩成型がいるってことだ」

「俺は普通にレギュラーになるつもりだ!」

「怒るなよ」

「レジーナ様、エマ様。悪いけど、今週末までは、フレイとフットサルをやっていいか。結構いい線いっていると思うんだ。ダークも付き合え」

「わかった」

「わかったわ」

「でも、雨の日は、図書館に来てください。空気を発生させるのって、大変そうですよ。ちょっとでもやり方を頭に入れといたほうがいいと思います」

「みんなで行くよ」

「そのときロイスも誘っていいですか。フットサル友達なんです」

「わかりました」

「そうして」



 翌日の放課後は、大雨だった。

 図書館には、王族用の閲覧室がある。王族は、禁忌の本も読めるのでなおさらだ。


「来たよ」

「おじゃまします」


 フレイとロイスが遅れて入ってきた。ロイスは、入り口で傅こうとするので、フレイが慌てて止めた。


「ロイス、俺たち、ただ勉強を教えてもらいに来ただけだから。姫様たちに仕えられるわけじゃあないから」


 ロイスはフレイと同じ男爵家。王族に呼ばれたこと自体誉なことだ。


「そんなことするんだったら、帰ってもらうわよ」


「すいません」

 ロイスは、慌てて立ち上がった。フレイがあらかじめロイスに話していたのに、姫を見た途端こうなった。二人は、姫たちを必ず、今年スエディッシュ共和国の星条魔法学園で行われるフットサル魔法学校対抗戦に来ていただこうと話し合っていた。そのためには、我が栄誉あるフットサル部に残らなくてはいけない。そしてベンチ入り。並大抵のことではない。ロイスは、姫たちを見てフレイとの誓いを新たにしている。


「じゃあ、まず風魔法の特性から話します」


 エマがものすごくやる気になっていた。将来先生になりたいんじゃないかな。


「風魔法は、気体を操る魔法だと決めつけてはいけません。なぜなら、気を操る魔法でもあるからです。風魔法の究極は、成長魔法になります」

「エルフの魔法よ」

「魔素も操れるんじゃないか」と、ダーク。

 こういうのは、ちょっと知ってる。シーラカンスのじいさんに鍛えられた。

「いい着眼点です。風の大規模魔法に気象を操るものがあります。私たちの中にある魔力だけでは無理です。魔素も操れないといけません。これは、空気を発生させるときにも理解していないといけないことです」

「全然実感がないから、私たちもこれから実践しようと思っているんだけどね」

「空気を発生させるためには、まず風魔法の基本中の基本。今ある空気を動かせなくてはいけません。見てください」


 二人が、この密閉された室内で風を起こす。物凄く微風なんだけどね。でも、ロイスは、感動して、目を輝かせている。いや、これは、生活魔法だからとオレなどは思う。


「どう?すごいでしょ、って言ってもここまでは、家庭で学習することよ」

「いや、こういうんだろ」と言って、普通の風を起こす。

 オレは、荒野育ちだ。暑い時に扇風機代わりに風を起こすのは当たり前だった。

「ダークさん、風魔法ができるんですか!!」

「いや、これは生活魔法だから。故郷の子供もみんなやってたけど?」

「地方独特の生活魔法ね。エマ、それに、いちいち反応しなくていいから。じゃあこれは?」

 レジーナは、今日のハイライトをもうやる気だ。深皿に水を入れて机の上に置いていたら、そうかと思っていた。

 レジーナが指を水の中に入れて、小さいながら空気を発生させた。

「どう?、ダークもやってみて」

「無理だよ。エマは?」

「出来ますよ」と言って、水に指を入れて、ぷくーと空気の泡を発生させた。

「オビトは?」

「俺もできるぞ」やはり空気の泡を出す。

「オビトは何でもできるな」と、感心した。

「ここ迄は、家庭学習で習うのよ。でも、この量だと息はできないし、ずっと指をくわえているわけにもいかないし」

「なるほど」

「俺もダークと一緒で出来ないです」「俺もだ」

「分かったわ。ダークとフレイとロイスは、空気を発生させるところまでね」

「じゃあ、最初からでいいですね。フレイとロイスは風を起せる?」

「起せます」フレイは風属性。

「すいません、家庭学習をさぼっていました」とロイス。

「じゃあ、風を起こすところから。これは基礎中の基礎なので皆さんも聞いてください」

「特にダークはね。風が起こせるからって、なんでって、分かっていないでしょう」

「そうだね」

「さっきの空気は、簡単に言うと魔素を空気に変換しています。自分の魔力を空気に変換しました。でも、自分の魔力を空気に変換し続けると、途中でへばってしまって、溺れることになります。それと同じで、風を起こすのも空気中の魔素を取り込んで、それを変換すれば、いつまでも空気を発生させることができます。実は私たち、そこまでは、自然にやっているみたいなんです。ところが、水の中の魔素を取り込むのには訓練がいります。でもまずは、空気中の魔素を変換していると自分が認識していないと、その先には進めません。なので、一番簡単な風を起こす魔法を使いながら、空気中の魔素を自分に取り込んでいることを認識すればいいんです」

 レジーナがエマの補佐のように、隣でノートを広げた。

「こうよ。まず風を起こす。次に強く起こす。外で魔力切れになるまで風を起こす。魔力切れになっても起こす。これで、魔素を取り込んでいると認識できるはず」

「それ、危なくないか。先生に教えてもらった方がいいんじゃないか」

「魔力切れを起こすと気絶する時もあるぞ」オビトも同じ考え。


「ちょっと聞いて。先生は心当たりがあるから。まずはロイスが風を起せないとでしょ」

「今のは、概要です。ここから本題です。風は、流れを司っています。手を前に押し出すと、少しだけ風が起こりますよね。手でそれを永遠にやれば風が起こりますけど、そんなことをやっていたら疲れるだけです。簡単に風を起こす方法は、魔力を放出して空気に、干渉すればいいんです。最初は魔力を開放しても微風しか起きません。それが今の私とレジーナです。それを効率化して生活魔法で簡単に使っているのがダークです」

 ロイスがやる気になった。

「魔力を開放すればいいんですよね」

 微風ーーーー

「ハアハア、風が起きましたけど、手を押し出しているのと変わらないんですけど」

「ロイス、1歩前進したじゃないか。風が起きたんだろ」

「あ、そうか」

「ダークは、どうして風が起こせるようになったんだ?」と、オビト。

 先生に聞くんじゃないのかよ。

「オレの場合は、必要に迫られてなんだけど、出来るようになったのは、飛びサソリで遊ぶようになってからかな。実家は荒野で水が少ない。飛びサソリは、朝露を逃がさないためにシールド魔法が使えるんだ。子供のころ、こっちもシールドを出して、こいつと対戦して遊んでいたんだけど、飛びサソリは、涼しいところだと、シールドを出さないんだ。だから、太陽が当たっているところでやることになるだろ。熱いじゃないか。それで、涼しいところの空気が欲しくて、引き寄せたら出来るようになったんだ」

「必要に駆られてか。ここじゃあ難しいな」

「どうして引き寄せることができるようになったの?」

「だから必要に駆られてって言っただろ」

「空気を引き寄せることができるようになった時の話が聞きたいです」

「えー、あー、空気の質感が変わった?。普通はつかめないけど、つかめる気がした。ちょっと引っ張ったぐらいじゃ涼しくならないから、雰囲気でいうと、どんどん手繰り寄せたんだ。それをやりながら飛びサソリと遊んでいたから、なかなか勝てなくて、本当に難しいよな。あいつら、シールドバッシュしてくるんだ」

「空気って魔力で掴めるんですか?」

「つかめるだろ」

「つかめるんだ」

「手繰り寄せ続けると風になる。逆でもいいよ、押し出し続けると風になる。でも生活魔法だよ」


「皆さん聞きましたか。魔力の放出で風が起きた人は、今度は魔力で空気をつかんでみましょう」


 30分後、まるで、フレミング先生の浮遊術の授業の時のように、全員が、オレ程度の風を起こせるようになった。流石、最難関の名門校に受かった生徒たちだけのことはある。


「みんなすごいな」

「俺は、ドキドキだったよ。得意属性が風属性なのに、強い風は、ロイスに先を越されただろ。出来なかったらどうしようと思ったさ」

「いい風じゃないか。フレイは、シューター向きかもしれないな」とオビト。

「キーパーやりたいんだけど」

「俺は、ディフェンダー」

 ロイスは土属性。盾役を狙っている。

「ダークはどう思う」フレイが助け舟を出せという。

「風魔法を使ってボールを引き寄せることができると、ボール奪取率が上がるだろ。キーパーも行けるよ」

「なるほど」


「はいはい、フットサルの話は、そこまで。続きよ」

「風属性は、流れをつかさどると言いました。ですから一定の範囲で風を起こすことがたやすくできました。これを広範囲にすると、すぐ魔力切れを起こすと思いませんか」

「だから、それ止めろって」

「危ないだろ」

「私の家庭教師だった先生は、風属性の人なのよ。私とエマが先に覚える事になるけど、やり方を教えてもらったら、お昼休みに、校庭でやってみない」

「「よろしくお願いします」」

 フレイとロイスはやる気だ。

「聞けたら、空気の発生も頼むよ」

「広範囲魔法が覚えられたらね」

「広範囲魔法は、3階位だぞ。斬撃技と同じだ」

「オビトは、全部攻撃の話に向くよな」

「そうですよ。今回は、魔力を気持ちよく放出できればいいんです」

「何度も会える人じゃないから、空気の発生方法も聞くね」

「どんな人なんだ」

「魔法師団の団長さん。オスカー・フォン・エドガー子爵よ」

「オスカー様が、家庭教師だったんですね。うらやましい」

「いちばん攻撃魔法が得意な人じゃないか。俺も会いたい」

「無理、2人が精いっぱいよ。私の魔法練習場は子供用なの。王宮の魔法練習場が使えるようだったら呼ぶね。ダークもそうしたい?」

「そうだけど、いやな予感がするよ。レジーナのお父さんって、オレを無理やり魔剣士科に入れた人だぞ。オレも行くって言ったら絶対何か仕掛けてくると思わないか」

「お父さまのことはあきらめて。お母さまでも止められないのよ」

「じゃあ行かないことにする。会えそうだったら、こっそり教えてくれ」

「わかったわ」


 レジーナたちが図書館で何やらやっていたのは知っていたが、こうやって形になって見ると、一生懸命やっていたんだとわかる。

 親友の竜騎士見習いのリュートと相棒のレッドは、海に潜る練習をしている。今のところ人魚と同じぐらい泳げることは内緒だ。だけど、この調子なら、公にオレも一緒に潜れることができそうで、とても楽しみだ。レッドは、ワイバーンの成龍になると、フォレスト山脈越えどころかメトセラ山脈越えができる。海も高山も行ける最強のワイバーンになる予感がする。

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