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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
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魔力だまり

 オレの好きな授業は、フレミング先生の浮遊術の授業と、軍から派遣されてくるウシキ先生の地政学だ。レジーナは、ウシキ先生をよく知っているみたいなので、そのうち紹介してくれと言っているが、「ダークがウシキに気に入られると、軍に引き抜かれるから嫌」と言って、相手にしてくれない。オレも将来商人になりたいので、それ以上話していない。


「今日は、魔力だまりの話をしよう」

 学園で2番の学科成績を誇る生徒が手を上げた。

「先生」

「なんだね、トーマス君」

「なんで、魔素溜まりって言わないんですか」

「ワハハハ、正しい指摘だね。それは、強そうに聞こえないからだ。魔素が、石にしみこむと魔石になる。鉄にしみこむと青鉄になる。みんな名前を変えるだろ。魔素は、気体だ。それが液状になって溜まっているのだぞ。そすると名前を変えるだろ。誰がその名前を考えたかは、歴史の授業で習いなさい」

「ありがとうございました」

「魔力だまりは、資源だ。それも、その国の国力を表す。世界最大の魔力だまりは、帝国にある。しかし、海の中にも魔力だまりがないとは限らない。陸地は、この星の1/3しかない。本当に帝国が1番かは、まだ決まっていないのだ」


 黒板の前に世界地図が広げられ、魔力だまりの場所が、ウシキ先生の魔法で、青く示される。そして、次に帝都シバの都市図が表示された。


「見たまえ、魔力だまりをオアシスのようにして都市が形成されている。アステア大陸の大きい魔力だまりは、全部で6か所。大きい順に、帝都シヴァ、大陸南側の中央に位置するサザン王国の王都サザン。東海岸のイスタル王国の王都イスタル。ハイランドの強国。スエディッシュ共和国。共和国とは、君主を置かない国のことだ。うちと交流もある。この国は、大陸の南西側にも勢力を広げているからね。我が国にとってもローマン王国にとっても帝国の盾の国となる。そして、帝国内にあるノア王国。ハイランドの西アルプスにある徐国。徐国もキョウ国を通しての間接的ではあるがうちと交流がある」


 キョウ国とは、西のフォレスト山脈隣接のケレマをふくむ首長国連邦。


「我が国にも隣りのローマン王国にも、魔力だまりはない。それに対してハイランドに、魔力だまりが4つある。帝国内には2つだ。この意味も分かるな」


「ちょっとダーク」

 手を上げた。オレの前世の知識から聞かないわけにいかない。

 レジーナは、おれが、ウシキ先生に目をつけられるのを嫌がっている。


「はい、ダーク君」


「魔力だまりは、地下にはないんですか。魔力だまりも、大穴の底じゃあないですか」


「いい質問だね。魔力だまりは地上にあると言ったが確かに、大穴の底だ。そこには、湖のように魔力水が溜まっているが、採掘は容易ではない。そこに行くまでに魔力で変化した多くの魔物や魔獣を相手にしないといけないからだ。この中には知性がある者もいて、この魔力だまりを守っている。では、これをなぜダンジョンと言わない。はい、トール君」


「魔力だまりには、ダンジョンのような魔核、ダンジョンコアがありません」


「教科書通りなら正解だ。しかし、我々は、魔核の更に底を調べたことがない。こういう話を生徒に吹き込むと怒られるんだが、ライブストリュームがあると思わんか。魔力の地下大河のことをわしは、そう呼んでいる。そのライブストリュームが噴き出しているところが魔力だまりではないかと考えているのだ。魔核もそうだ。三日月湖は知っているな。蛇行する河川に取り残された水が湖となる。これが長い年月をかけて結晶化したものが魔核ではないかという理論がある。これらは、理論として、こんな考え方もあるということだと覚えてくれ。ダーク君、この答えでいいかな」


 ライブストリュームと魔力だまりの関係は、そうだろうと思っていた。だけど、その流れの中に湖みたいな魔力溜まりがあるんじゃないかと思っていたが見当違い。ダンジョンはライブストリュームの三日月湖跡か。すごい話を聞いた。

「ありがとうございました」


 魔核とは、何かを核にして大きな結晶になっているものをいう(ヒュージ結晶)。しかし、小規模だが、結晶石の鉱脈のような魔核も発見されている。


 地下には、魔力の奔流がある、か。魔力だまりを実際は原油的な資源だと考えていたが驚きだ。ウシキ先生の答えは理論だけど、この世界は、オレの想像の斜め上を行く。


「ワクワクする理論だな」と、前の席にいるフレイが振り向く。

 そりゃそうだ。手に入れにくい魔力だまりの魔力が、自分の足元にも流れているかもしれないという理論には夢がある。魔力だまりがイコール国力というのならなおさらだ。

 自分の前世の知識から行くと、何かのきっかけで、ライブストリュームが地上に大量に噴き出したら、上空10キロの魔素圏の縛りなど吹き飛ぶ宇宙規模の現象になる。災害になるのか、不思議現象になるのかはわからないが、宇宙空間から見てみたい現象だ。

 まあ。ライブストリュームがあるのは、12歳の時から知っていたことだが。規模を想像できたのは、この授業からだ。水の話だが水蒸気は水の1700倍。その魔力水が惑星の地下全域にいきわたっている。もしかしたら地下に魔力水の海があるかも知れない。今の想像する規模だと、地上400キロメートルにあるスターダストベルト。つまり、古のころだとスターダストになったバースの月ラピュタまで魔素が覆っていたんじゃないかと想像できる。


「さて、どのように、魔力だまりの周りに都市が形成されているか話そう。これは、帝都シバの地図だ。魔素だまりを中心に都市が広がっているのがわかるだろ」


 帝都シバの簡略な都市図に代わって、詳細地図が黒板に張り出された。


「この丸いラインは、魔道列車だ。これで、帝都の6地区すべてに最早で行くことができる。なぜ帝都が6地区に区分けされているかというと、魔力だまりの魔力水を吸い上げる青鉄パイプのポンプが6基あるからだ。もし、5基が何らかの理由で使えなくなっても、1基さえ残っていたら、程度はあるが、帝都は都市の機能を失わない。つまり魔道列車は止まらない。それほどの力を魔力だまりの魔力水は持っている」


 魔道列車の絵が表示された。そして、魔力ポンプと共に、王宮が表示された。


「見なさい。この魔力ポンプ1号と共にある建物は、皇帝が住んでいるホーンブルク宮殿だ。帝国は、この魔力ポンプを作って今のような国になった。それまでは、鳥人族と共に、空中から魔力水を人力でくみ上げて使っていた国だ。このポンプができて皇帝は、鳥人を排斥した。魔力水を人族だけで独占したのだ。この流れで、異種族排斥運動を今でも主導している」


 ロア帝国の紋章は、ユニコーン。角と羽を持った馬が国の象徴。帝国になる前は、角と羽だけの紋章だった。この二つは、似て非なるもの。まったく違うものだとわかる。


「ダーク、機嫌が悪そうね」

「そりゃそうだろ」

「私もよ」

「私もです」


「逆に言うと、鳥人たちは、帝都を助けてくれない。もし、6基の魔力ポンプが一度に止まるような事態になったら、帝都は、当分の間機能しなくなる。そんなことは起きないだろうがな。地政学の授業では、2年生になったら仮想対戦というゲームを授業の中でやる。この授業で、ワシの率いる帝都を落とした生徒は一人もいない。王都サモルは、最短で、3日で落とした生徒がいたぞ。あれは、相手が弱すぎたせいもあるか。とにかく・・・・」


 ザワ、ザワ、ザワ。


「王都を出て戦えばいいのよ」

「帝都は、魔道船もあるんだぞ。制空権を取られたら終わりだよ」

「ダークは、どっちの味方っ!。うちのドラゴン隊も捨てたものじゃあないのよ」


 まずい、姫が熱くなった。と、思ったが、周りも、そんな感じで、ざわざわしている。


「みんな静かに。君たちは1年生だ。仮想対戦ゲームはまだ早い。食料などの物資の話しも授業で聞いていないだろ。我が国は、穀倉地帯だ。王都を攻められないように、友国を援助するというやり方もある。逆に帝国は、魔道船を持っていて西アルプスを空から越えてくることだって考えられる。ちゃんと授業を聞かないと、3年になると負けがこむぞ」


 やっぱり地政学は面白い。


「魔力だまりの話に戻すぞ。魔力だまりには、魔力水が溜まっている。帝国は、これをポンプで吸い上げて、魔道具の燃料にしている。ロア帝国は、帝国になる1300年前に、鉄のパイプを魔力だまりに浸していた。そして今から300年前に、この鉄のパイプが青鉄のパイプになった。この青鉄のパイプは頑丈だ。このパイプを使って魔道ポンプを作って魔力水を汲み上げるようになって、今のような強国になったのだ。だからロア帝都のことをミレニアム王国と呼ぶことがある。魔法で成り上がった国なので、魔導王国という者もいるな。皇帝は魔王と揶揄されることもある。しかし皇帝はその揶揄を罪に問うたことがない。秘かにそれを喜んでいるようだ」


 皇帝は、やっぱり魔王なんじゃないかと、思った。

 人の身で300年以上生きていると知ったら、誰でもそう思う。


「魔力水の研究も進んでいるぞ。鉄は、1000年で青鉄になった。同じように金や銀や銅も魔力だまりに浸され続けている。近い将来、魔力だまり産のアダマンタイト(魔法銅)が市場に大量に出回るかもしれんな。それは他の魔力だまりでもそうだ。他国も帝国に遅れを取っていないから今の状態にある。アダマンタイトが魔力だまりから産出されてみろ。経済の根幹が替わるかもしれん。これは、来年にも起きそうな事実だぞ」


 とんでもない話が、ウシキ先生の口からポンポン出てくる。これら情報を駆使して対戦ゲームをしろということだろう。姫たちが2年になるころには、本当に魔力だまり産のアダマンタイトが出回るかもしれない。状況は常に変わる。


「アダマンタイトの話は朗報だが、いい話ばかりあるとは限らない。帝国は魔力水で、生体実験をしている。生き物を魔力水に浸すと、魔獣になる。じゃあ、亜人や人を魔力水に漬けるとどうなるか。これは、許されない実験だ。帝国は、異人種を差別させているだろ。なぜ執拗にこんなことをしていると思う」


 教室が、しーんとなった。


「すまん、脅し過ぎた。今の話は、動物実験までの話で、それ以上の話は、漏れ伝わっていない。帝国が人道的であることを祈ろう」


 誰もが、帝国ならやりかねないと思った。また、貴族とは何かということが根本的に揺らぐ話だった。貴族という立場に胡坐をかいていたのでは、有事の時に自分を守れない。帝国は、帝国の欲のために、助けてくれるかもしれない亜人との溝をわざと作っている。そんな話だった。

 レジーナとエマが真顔な顔をしている。人体実験の話は、本当かもしれない。


 ウシキ先生の魔力だまりの話は、他の魔力だまりの話に移った。他の魔力だまりも帝国に対抗して青鉄パイプを魔力だまりに浸していた。でもその吸い上げた魔力の使い道が、各国ともそれぞれ特徴がある。どれも興味深い話ばかりだった。

 特に友国であるスエディッシュ共和国は、修学旅行で、魔力だまりを見学できるという。そして運が良かったら一部の者だが、1年生も見学するチャンスがあるかも知れないと言われた。それは、フットサルの魔法学校対抗戦が、今年、スエディッシュ共和国の星条魔法学園で行われるからだ。行けば、ベンチの1年も魔力だまりを見学できるという。フレイとロイスは、部活に入って、絶対ベンチ入りすると意気込んでいる。もしフレイがベンチ入りすれば、友達として応援に行けるという名目が立つので、姫たちもスエディッシュ共和国行きが許されるという。

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