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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
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古のグラン王国の口伝

魔族とは、元々間族と言われ弱い存在だった。彼らは、魔法があるこの世界のイレギュラーだ。

 砂塵族というのは、ドワーフと一緒で小さい。そしてドワーフと一緒で力持ちだ。ドワーフと違うのは、すばしっこいことと。生活魔法だけど、みんな風魔法が得意だとという事だろうか。オレもそうだけど、昼間は暑いところなので、自然と風魔法を覚える。もう一つは、シールド魔法だ。ここいら一帯に生息している飛びサソリは、貴重なたんぱく源。飛びサソリは、シールド魔法を使える。これに対抗できないと生きていけないので、これも覚えることになる。子供のころは、飛びサソリに勝負を挑んでは負ける日々だった。他にも足上げ蜥蜴とか色々いるが、子供のころの遊びは飛びサソリだ。リュートもオレもシールドバッシュの名人だ。

 更にオレは、シーラカンスに鍛えられて、水魔法が色々使える。殆ど生活魔法の類だけど、合わせて使えるところがすごいと思う。オレは、海中で息ができるし水流操作や潤滑水を出すことによって、魚人や人魚の様に速く泳ぐことができるようになった。少量だけど水も出せる。これを自慢したくて、グラン森林の資源調査の話をリュートの親父さんのところに行って報告した。


 砂塵族のリュイ族は、鍛冶ができる。鉄鉱石を持ってリュートの親父さんに会いに行った。


「族長」

「ダークじゃないか。いつ帰ってきた」

「一昨日。一昨日からグラン家の口伝を聞かされていて、グラン森林の報告が遅くなった」

「ダークもそんな年になったか。まあ上がれ。遠くからよく来た。パメラ、ダークに水をやれ」

「あっ、オレ、自前で水を出せるんだ。族長も飲む?」

 コップに水を出した。

「お兄ちゃんすごい」

「お前、自慢しに来ただろ」

「へへっ、当たり。それよりこれ、土産だよ」

「鉄鉱石か」

 鉄鉱石を値踏みする。

「良い鉱石だ。どれぐらい集まった」

「崖に露出していた鉱脈を見つけたんだ。修業を終えたリュートとレッドが、何往復もしないと持ってこれないぐらい採掘した」

「よくやった。当分材料に困らないな」

「うちの水道の面倒も見てよ」

「当たり前だ。焼き入れをするのに水がいる。サンドストーム家を大事にするに決まっているだろ。フハハハ半年後から忙しくなる」

 族長が高笑いしだした。

「お兄ちゃん、飛びサソリで対戦しようよ」

「久しぶりにやるか」

 対戦とは、自分の飛びサソリを用意して、相手の飛びサソリと対戦させること。まずは、自分の飛びサソリを捕まえに行かないといけない。

「ダークも大人になったんだろ。この鉄鉱石の質を見るぞ。鍛冶場に来い」

「お父さん、私の約束が先よ」

「仕方ない、後で来い」


 オレの方が、パメラより大きな飛びサソリを捕まえたんだけど、長年の勘で、負けるような気がする。村の中央に行ってパメラと勝負した。すると、村中から人が集まってきた。人族が久々に村に来たのが珍しいのと、みんな飛びサソリ対戦が好きだからだ。


「パメラちゃん頑張れ」

「ダーク、大きな飛びサソリを捕まえて大人げないぞ」

 オレだけ酷い言われようだ。

「わしが行事をしてやる」

 勝手に審判を引き受けるおっさん。待ったなしになった。


「お兄ちゃん勝負よ」

「よし行け」


「残った残った」

バシュッ

「パメラちゃんの勝ち」

 オレの飛びサソリは、一回りも小さな飛びサソリにシールドバッシュをやられて仰向けに倒れた。

ワーーー

「私の勝ちね」

「まいりました」

 オレの飛びサソリは、パメラにとられた。それを見た他の村人が、自慢の飛びサソリを出してくる。

 いつでも来いというパメラに、村の青年が挑む形だ。


「パメラ、リュイ村長のところに行ってくる」

「うん、後でね」


 負けても楽しい。ここは、いいところだ。


 村長の鍛冶場に行くと弟子のケインが、炉の火入れを終えて、ふいごを踏んでいるところだった。

「ダーク兄遅いぞ。水を出せるんだって。くれ!」

「今ふいごを踏み出したばかりだろ。代わってやるから壺を持ってこい。入れてやるから」そう言って、ふいごを替わってやった。

 オレが踏み出して直ぐ村長が鉱石を炉にくべた。

「村長、交代できなくなるだろ」

「火を読んでみろ。今がくべ時だった」

「仕方ない」

「これでナイフを作ってやるから」


 村長が使っている古い炉は、炉壺ではないので、最初、鉄鉱石から出る鉄を少しずつ取り出す。これが玉金だ。この玉金をまとめて低温で溶かして薄く延ばす作業をする。今作っているのは刀なので、弟子のケインは、村長の鍛冶をまだ見ているだけ。この鉄にふくまれる炭素の量で鉄の硬さが変わってくる。峰側が硬く、刃側が柔らかい。二つの素材を合わせて刀にする。


「ケイン、ローマン産の藁を取ってくれ。お前が合いの手だぞ」

「本当ですか」

「どうせダークのだ、好きにやって見ろ」

「酷いな」

「ダーク兄。そんなことには、しないって」

 藁、つまり炭素を混ぜることによって、この刀に斬鉄が生まれる。結構大事なところなんだけど。

「どうです師匠」

「わしが打ち手でなかったら粗い仕事になっていたぞ。ダークや3日後に来い。大きさはナイフだが立派な刀になりそうだ」

 村長は、オレを出汁にしてケインを誉める。ケインがメチャメチャやる気を出していた。

「そうだね、まだ口伝を聞かされている最中なんだ。そうするよ」

「俺も頑張るからな」

「お前は、調子に乗り過ぎだ」

 ケインは、村長に頭を小突かれていたが、まるで自分の子供のように愛情を注いでいる。村長の息子は、竜騎士になって鍛冶屋を継がなかった。弟子のケインが可愛いのだろう。




 3日後、族長のところに行って短剣をもらった後、ラグーとパグーを連れてポートレイに戻る。二人とも充実した新婚旅行に行けて足取りが軽い。このスピードで問題ないと思い、帰りは二人に任せてラグーの上で思案にふけった。昨晩の父さんの話は、魔族に関する話しだった。オレの父の名前は、スクネ・サンドストーム。母は、ミコト・サンドストーム。ちょっと世人離れした人たちだ。


「魔族とは、太古、間族と言われていて弱い存在だった。弱いがゆえに、人の心の隙間に入り込んだり耳打ちしたりして悪さをする。弱い存在ゆえに、我々を羨望のまなざしで見つめる。弱いゆえに、嫉妬し、妬み、嫉やむ存在だった。彼らの一番強い魔術は呪術だよ。その魔法の意味が分からないから、我々は、結果を見て恐れた。そんな存在だった」 


「故郷が荒野のままだもんね。でも弱い存在だったのにどうしてこんなことになったの?」


「魔族が進化したんだ。それから実力行使をするようになった。強くなったと言っても、エルフほど、知恵や魔法に長けているわけでない。ドワーフのように、技術力があるわけでもない。人族のように、勇気があるわけでもなかった。中途半端に強くなったから、嫉妬が無くなるどころか激しくなった」


「弱いままじゃないか」


「さっき言っただろ。弱い時でも呪術はすごかった。それに拍車がかかったんだ」


「うわー、それでどう進化したの?。魔族は、国を作ったんでしょ。また戦うことがあるかもしれないから、よく知りたい」


「また戦わないことを願いたいが、そうだな。向こうから仕掛けてくるからな。魔族は、元々、死者から蘇った種族だ。そう聞けば聞こえはいいが、見た目は醜く、匂いも臭い。彼らは、我々の様に次世代を生まない。育てもしない。蘇りはしたが、元は死者だ。魂も残りかすしかない。今は死者を火葬にするだろ。そうしないと、ゾンビになって甦るからな。我々としたら、魔族の中には、ご先祖様っだった人もいるから丁寧に扱っているつもりでいた。だが彼らが、それを憐れみと思ってしまった。太古、ある者は人里離れたところで、ある者は、生存が厳しい魔の森の中で生活していた。第2の死を迎えるまで、ひっそりとね」


 彼らは、この魔力がある世界の仕組みからくるイレギュラーだ。魔力は、霊から生み出される。生きている人なら、霊は成長するし魔力を生む。それとは逆に、死んでも魔力が霊を支えることがある。それが、生き返り。生き返りだと言い方はいいが、ゾンビとか生霊とかそういう類だ。普通そういう状態になると、記憶が飛んでただのモンスターになる。だが、偶に一部の記憶を残して蘇る。


「ところがだ、あるとき彼らは共食いを始めた。それでレベルが上がりだしたんだ。我々も魔物を殺すと強くなることがある。それと同じ現象が起きた。それで、生前ぐらいの身体能力や魔力を持つ者が現れた。そして4千年前に戦争が起きたんだ。今だともっとかもしれない」


「それ、おかしいよ。死に戻った死者が全員悪なんてことはないんじゃないかな。元はオレらと同じだったんだよね」


「ダークの意見は、もっともだ。彼らは、自分の弱さを嘆いたり現在生きている人をねたみはした。中には、間が差すようなことを我々に吹き込むようなことをしたが悪さもそこまで。他の良心を持って生き帰った人々は、魔の森や人里離れたところでひっそりと暮らしていた。その彼らをそそのかしたやつがいたんだ。それが魔王ジランだ。彼は、今も魔族の王として君臨している。これは、ポセイドン王に聞いた話だ」


「魔王ジラン」


「魔族は、生まない。相手を簒奪することで強くなった連中だ。どんな性質の種族かわかるな」


「簒奪者か。分かるよ」


「最初魔族は、とても少数だった。しかし、生者の営みがある限り死者は必ず出る。彼らは、北の地に勢力を伸ばしていった」


「北の魔森マシン地帯だね」


「我々は、彼らをそこから追い出した。今のアステア大陸に魔族はいない。南のムール大陸にもだ。彼らは、遠い海の果てにあるウエツ大陸に逃げた。ウエツ大陸の西方はエルフの国なのだが、東方は無人地帯だった。そこに逃げ込んで魔国を作ったんだ。それが、今から4000年前の話だ。逃げるときにグラン王国を呪って4千年経った今もこの有様なんだ。祖先の願いは、この呪いを解くことだ。私には無理だった。ダークが呪いを解いてくれ。無茶な頼みだが、グラン家の跡継ぎが成人になったときに、グランの名前と共に伝える話だ」


「呪いの話は、シーラカンスの爺さんから聞いた。爺さんの受け売りだけど。呪いって言うのは、わけがわからないから呪いって言って恐れているだけで、理由が分かったら解けるって」


「本当か、期待しているからな」 



―――――――――――――――――――――――――――――――――。


 この魔族の話が、一番印象に残った。母さんからも別の口伝を聞いたけど、古すぎてピンとこない。稲作を世界に広めた話や砕ける前の月。ラピュタなんかは、シーラカンスの爺さんに解説してもらおうと思う。シーラカンスの鱗を持って通信した。


「爺さん、うちが世界に稲作を広めたって本当?」

― 何じゃ急に。グランの口伝を聞いたか。そういやダークもそんな歳か。実質グラン王国が稲作を広げたんじゃが。具体的にいうとな。ローマン王国の南は、ムール大陸。そこにはドワーフが住んどる訳じゃが。アステア大陸とムール大陸に稲作を広めたのはローマン王国じゃな。ウエツ大陸には、エルフが住んどるじゃろ。エルフの国もそうじゃが、実際そこに稲作を広めたのは、今のサモル王国じゃよ。

「母さんから聞いた。稲作は、1万5千年前に広がったんだって?。そのころ月が砕けているし。何があったんだ?」

― 古代魔王の覚醒じゃ。時を同じくして人族の文明が開化した時期でもある。なんでも節目というものがあるじゃろ。1万5千年前は、この星の大きな節目じゃった。

「魔族か?」

― 龍族のな。当時の人族には抗えん災害じゃ。龍族からしたら身内から出た魔王じゃろ。当時の魔族は、龍族が全部引き受けた。

「ラピュタだったっけ。龍族が、住処を失ったって話」

― わしの親友は、月から帰還せんかった。苦い思い出じゃ。じゃが、その時代は、悪い話ばかりではなかった。人族の台頭は、他の種族に歓迎されたよ。

「母さんが言うのには、当時は、今より暑かった。この辺りは、亜熱帯地方だったていうんだ。今も荒野だから熱いんだけど」

― 稲というのは、亜熱帯地方の植物じゃ。汽水地〈川と海が接する地〉に繁殖するんじゃが、それを田んぼに再現したのが、グラン王家じゃ。昔、その辺りは雨が良く降っとったってことじゃよ

「今だと信じられない」

― そうじゃの

「グランの大地が荒野なのは、呪いだって聞いたけど、何とかならないの?」

― すまんのう。原因が分かっとったら、わしもポセイドンも放っておかん。お前さんの家がやっとるウオーターファーマーな。水道が石で出来とって水漏れがひどいじゃろ。なのに、その周りに緑があまり生えとらん。違うか?

「そうだね」

― それは、自然の摂理に反する。普通じゃないことはわかるじゃろ。ポセイの奴なんか歴代のグラン王から調査の話を聞いておるが、首をかしげるばかりじゃ。調さの話は、親に聞け。そっちの方が詳しいでな

「分かった」

― ラグーたちを返したら竜宮に来るじゃろ。わしも行く。そこでポセイも交えて、もう少し話そう。ダークの前世の知識なら、何か思いつくかもしれん


 4千年も解けていない呪いの謎。自分の前世の知識で解けないものかと思う。

 荒野というのは、砂漠の一歩手前の地を言う。荒野化の原因は、その土地の緑を伐採しすぎだとか、草が生えるより先に家畜に草を食べさせて、その地の回復をさせないで、また別のところで草を食べつくすようなことを繰り返しているとそうなる。その先の砂漠化は、その状態に、更に気候変動で乾燥化が進むとそうなった状態。取り返しが、荒野より難しい状態の事。

 荒野なら、川があってもいいのに、グランの荒野にはそれがない。まず、そこがおかしい。この辺りは、昼には消えてしまうが、朝に湿気がある。湿気があれば草原ぐらいありそうなものだ。無いのは、たぶん人為的に、緑を再生させない何かがあるのだろう。

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