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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
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詐欺師1

 アウグスト騎士伯爵は、海と川の宝石を闇ギルドから仕入れていた。しかし、今その闇ギルドはない。それなのに、アウグスト宝石加工工場は、何ら問題なく動いている。では、いったいどこから宝石や原石を仕入れているのか。


 ダークは、新しい宝石が仕入れられた時だけ、詐欺師の追いかけをすればいいという。それはその通りなのだが、何時原石が仕入れられているのかわからない。詐欺師の追いかけを請け負ったバルトロは、加工工場に原石が持ち込まれた翌日に、1日中バザールで張り込みしたが、詐欺師は来なかった。当然工場に宝石の原石が持ち込まれる前に、鑑定しているに決まっている。では、いつどこにだれが、原石を持ち込んでいるのか皆目見当がつかない。もう2週間も原石のルートを追っているが、その手掛かりすらない。


 バルトロは、とてもめんどくさい仕事を引き受けてしまったのではないかと後悔していた。


「姉御、今朝分の魚だ。次は夕方な」

「どうだいバルトロ、何か進展はあったかい」

「全然でさあ。今のところ、俺一人で動いているから、資金はあんまり使っちゃあいないんですが、このままだとラチが明かない」

「困ったねぇ。ちょっと待ってな」


 暫くしてアマンダが手紙を持って戻って来た。


「これを持って、越国屋のツインのところに行きな。何かヒントをくれるから。元々あそこは、宝飾類も扱っていたんだ。原石の仕入れ先も持っていたはずだ。それを聞けば、アウグスト宝石加工工場の仕入れ先の雰囲気がわかるんじゃないか」

「すいません。恩に着ます」

「ダークにも話しておくから。自分のことだ。少しは動くだろ」

「へい」


 朝の仕事を終えたバルトロが自分の船で、フィールドインの最北にある越国屋についたのは、店の荷下ろしが一段落ついた時間だった。みんな朝飯を食べてのんびりしている。


「チッ、俺が苦労しているって言うのに、こいつら、平和だな」


「よう、バルトロ。魚持ってきたのか」


「ナマズおまえなー、魚人なんだから自分で獲れよ。今日は、ツインに聞きたいことがあって来たんだ。仕事だよ」


「ツインの兄貴は、荷物の帳尻合わせで忙しいぞ」

「馬鹿やろう、番頭だろ」とバルトロがナマズを叱った。

「そうだった、昔の癖が抜けねぇ」


「まあ、場所を教えてくれてありがとうよ。そのうち魚スープを持ってくるから買ってくれ」


「本当か」

「そっちを先にしろい」

 と、休んでいる奴らが、口々に言う。


「うるせえよ」


 店の方に行くと、今が一番忙しいようで、みんな走り回っている。その番台の中心にデーンと座っているのがツインだ。みんなツインを頼って色聞くけど、的確な指示をちょっとするだけで解決しているようで、なんでかツインだけ暇に見える。だけど、その渦の中心に行くのが大変だ。


「ツイン」

 バルトロは、必死に手を上げてツインを呼んだ。

「ツイン、聞きたいことがあるんだ。姉御の手紙もある」


 ツインが、頭を傾けた。

「バルトロさん、聞こえない。こっちに来てください」と、手招きする。


「分かっているんだが、ハーやっと抜けた」


「どうしたんです血相変えて」

「お前んとこが、戦争状態だからだろ。いや、そりゃいいんだ。ちょっと手紙を読んでくれ。俺じゃあ話が長くなる」

「アマンダさんからですね。…、…、…、…、…、…、…、…、…、…、…、…、…、…、…。なるほど。私は、無意識に何度も詐欺師を見ていたんですね。向こうが私を避けていたのは、同族だとバレると思ったからでしょうか」

「詐欺師が弧人族かどうかは、はっきりしていない。でも、そうだろ」

「バルトロさんは、宝石の仕入れの線から、詐欺師を追い詰めたいんですね」

「ダークが言うんだ。そりゃあ、仕入れた後に鑑定に行くに決まってる。そこで追いかけりゃあ、効率いいだろ。最初は、ずっと張ってたんだ。1回追いかけた。すぐわからなくなったがな。でも、その後に、アウグストの宝石加工工場に入荷があった。2週間やってこれだけだ」

「分かりました。海の宝石の流通ルートを知っているかもしれない人を紹介しましょう」

「ありがてえ」

「出目金屋を知ってますか?」

「知ってる、ハマグリの磯焼を食わせてくれるところだろ。たまに行くよ」

「じゃあ、裏メニューを知っていますか」

「そんなのあるのか?」

「表には出していないんですが、魚人たちは、阿古屋貝の磯焼を出目金屋の裏で。よく焼いて食べています。焼き過ぎるとすぐ固くなるので、自分で焼かないといけませんが、これがおいしいんです」

「旨そうだ、・・じゃねぇ」

「阿古屋貝は、たまに真珠が出てくるんです。みんな、外れだっていって捨ててしまうんですが、れっきとした宝石です。これを安く仕入れていたのが、うちです」

「いいのか、そんな話して」

「出目金屋の親父は、もう、その価値を知っていますからね。安く卸してくれるのはうちだけです。だから、バルトロさんが行っても相手にしてくれません。例えばそういう真珠を少しだけ市場に流してもらえばいいんです。ナマズをつけましょう。あれは、出目金屋の親父と仲がいい」

「あいつ、儲かる仕事をしないで、荷下ろしの人足の真似なんかしてたぞ。さっきタバコをふかしてのんびりしてやがった」

「うちは、商売を再開したばかりですよ。変なのに目をつけられるわけにはいきません」

「そうだった、すまねぇ」

「ナマズを連れて行ってください。煙草をふかしていたんでしょう」

「いいねぇ。ツインの旦那の指示だって言っていいんだろ」

「さっき、呼び捨てにしていませんでした?」

「越国屋の番頭に敬意を表したまでさ」

「調子がいい。今だけでもうれしいですよ。ナマズに、詐欺師の話をしてください。出目金屋の親父さんは、私たちの味方です。ナマズに相談させれば、親身になってくれるはずです」

「わかった」

 バルトロがすっ飛んでった。

「あの人も落ち着きがない」


 バルトロが意気揚々とナマズを連れて出目金屋に行った。いつもナマズと口喧嘩ばかりしているのに、今日は、バルトロがナマズの親分だ。ツインに、お墨付きをもらった。


 ここでバルトロは、詐欺師が宝石を仕入れていなかったという衝撃的事実を聞くこととなる。



 翌朝。ダークは、いつものようにボルケーノに朝食を食べに行った。そこに、アマンダとニッチの他にバルトロが、オレを手ぐすね引いて待っていた。


「ニッチ、起きていて大丈夫なのか」


「待ってたぞ。バルトロの話を聞いてやってくれ」


「詐欺師の話か!。進展があったんだな」


「それがねぇ」

「進展なんてもんじゃねぇ。わけわからん。宝石は、はじめっから、貴族街の運河を使って、アウグスト騎士伯爵邸に運ばれているそうだぞ。詐欺師は、それの鑑定をしていただけじゃないのか」

「バルトロの剣幕に俺も目が覚めたよ」

「ダークは、どう思う?」


「詐欺師が、宝石を仕入れていたんじゃないってこと?」


「辻褄は合うのよ。闇ギルドができる前から、アウグストは、宝飾類を帝国に売っていたのよ。手広くやるようになったのは、闇ギルドができてからだけど。アウグストは、元々宝石の流通ルートを持っていたってことね」

「これじゃあ、詐欺師を消しても意味ないんじゃないか」


 オレは、そう思わない、

「いや、詐欺師の屋さは、やっぱり知りたい。夜中に、運河で張っていれば、入荷時期がわかるんだろ。追いかけてくれよ」


「どうしてだ?」

「何をする気だい」


「詐欺師と話がしたい。元々の目的は、越国屋に宝石の流通ルートを復活させるのが狙いだったんだけど、やっぱり気になるんだよな」


「そういや、詳しく聞いていなかったけど、なんで、越国屋のために金貨6枚も出したんだ」

「そうだよ、おりゃ、ナマズのために働いてたってことだろ」


「ナマズって誰?」


「越国屋の宝石を仕入れていた魚人だよ。オレの喧嘩相手」


「バルトロの友達か、ならいいじゃないか。ちょっと込み入った話なんだけど、聞く?」


「聞く聞く」

「そりゃ聞くさ」

「早く話せよ」


「帝国でこの話をしたら命に係わるそうだけど、聞く?」


「帝国が怖くて船乗りをやってられるか」

「でも嫌な予感がするねぇ」

「いいから話せよ」


「大きい声じゃあ言えないんだけど、皇帝が人魚姫を人質にしているみたいなんだ。彼女は、人魚の聖女で、どうやってそうなのか知らないけど、寿命を延ばすそうだよ。これがこの国の認識。皇帝は、初代から変わっていないそうだ。そのおかげで、皇帝の子供は寿命で27人、病死や事故死が12人、反乱で8人死んでいるそうだ。王室がこれだ。命がいくつあっても足りない話だろ。うちの国と、隣のローマン王国は、人魚族と懇意なんだそうだ。人質を取られているから、帝国の言いなりなんだと聞いた。海の中も帝国にずいぶんやられているらし。その見張りをしているのが、アウグスト騎士伯爵だと思う。海の宝石ルートを細々とでも再開できると、アウグストの裏をかけると思わないか」


 バルトロがぎょっとしている。

 ニッチとアマンダも表情が硬い。


「この話には先があってね。人魚姫のシーナと皇帝は共犯者だ。二人だけ寿命が長いのはそのためさ。海には、ライブクリスタルっていう賢者の石があるんだけど、それを盗んだのはシーナだ。ライブクリスタルは、しゃべる賢者の石だ。海の海王からしたらライブクリスタルは、人魚姫より重要だ。ライブクリスタルを人質にされているんだ。結局帝国の言いなりなのは変わらない」


「ハー、おまえ、なんつうことを俺に聞かせるんだ。アマンダ、酒持ってこい」

「朝から飲む気かい」

「姉御、俺も」


「待ってくれ、まだその話しの先があるんだ。その、アウグストなんだけど、入学式の時に講壇にいた。見た目は、ポテッとした人の好いおっさんに見えたんだ。帝国の犬になって、悪名が王都に轟いているのに、オレには人の良いおっさんに見えた。おかしいと思わないか」


「ダークに、人を見る目がないんだろ」

「確かに、フィールドインやスラムから、嫌なうわさは聞かないね」

「そりゃあ、闇ギルドが全部やっていたからじゃあないか」

「それにしてもだよ」

「そういや、俺も聞かない」

 バルトロは、そりゃあ喧嘩相手だけど魚人たちと仲がいい。そのバルトロも、アウグストの悪口を聞かないという。


「宝石も、問題なく仕入れられているんだろ。最初は、アウグストを潰すことばかり考えていたけど、一度、詐欺師と話をしたいんだよ。詐欺師は、闇ギルドで、宝石の仕入れをしていただけなんだろ。その話も今じゃあ辻褄が合わない」


「うー」「むー」「はー」

 みんなため息をつく。アマンダ、ニッチ夫婦は、同じように腕を組み、バルトロは、あきらめた顔をした。


「分かった。張り込み続行でいいよ」


「バルトロ、ありがとう」


「仕方ない。貴族街の運河を使う奴なんかほとんどいないから、俺らで見とくよ。バルトロは、張り込みに専念していいぞ」

「すまねぇ親分」

「何度かやれば、今度は、詐欺師の屋さまでたどり着けると思うけど、一人で行く気?。向こうは逃げるのがうまいんだよ」


「まあ、普通に話すだけだから」

 闇の世界は、オレのほうが慣れている。


「私が、立ち会おうか?」アマンダがオレを心配する。


「大丈夫だ。その時は、吉報を待っていてくれ」


「まあ、屋さが見つかってからな。俺は、寝る」

「お疲れ様。ニッチも寝て」

「そうだな。俺がバルトロの露払いだからな」


 その日は、ボルケーノで話し込んでしまったので、授業に遅れそうになった。今日は、もう一つの好きな授業がある日だ。

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