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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
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浮遊魔術

 休日になった。本来なら来月やればいいのだが、魔獣狩りをすることにした。オレたちのグループにフレイが入ってきた。それで5人で初めて魔獣狩りに出かけることになった。同行者は、レジーナとエマのお付き3人づつと、オビトの岩砕流道場の門下生5人。前回、ホーンラットの肉を分けてあげたのが功を奏したようで、門下生で姫の同行を取り合いしてくれたそうだ。結局ホーンラビットの肉は、みんなで食べたといっていた。魔獣の追い立て役が、11人もいれば、前回と同じ結果を出すことができるだろう。フレイが盾役で、オビトが止め。オレが、魔獣の足止め役で、レジーナとエマが、おまけだ。みんな、おまけのために働くんだけどね。


 前回の狩りでオレは、スキルやレベルが、上がらなかった。オレの念動力は、この世界の理から外れている。でも、オレのレベル上げは、後でいい。今は、レジーナとエマがやりたいことをできるように、体力や知力や技量が上がる方が大事だ。でも、タンク役のフレイと、止め役のオビトは、スキルやレベルが上がるだろう。オレの手加減が少し減るのはちょっとだけストレスの解消になる。今日も、張り切って行こうと思う。



「今日も付いてきたんですか、ヨハンさん」

「グリーン様もですじゃ」

 馬車の中の絵は風景画に代わっているが、その中でグリーンが手を振っている。ローマン王国組は、相変わらずエマに甘い。


「じゃあ、みんないいか。メルド大尉、エイギル少佐。お願いします」


「任された」

「こっちも行ける」


 メルド大尉が、オビトのところの門下生に教えながら、土ネズミの巣穴に燻り出し用の煙草を投げ入れた。堪らず土ネズミたちが出てくる。

「ダーク君の方に追い立てろ」

「こいつらデカいぞ」

「その通りだ。二人とも、落ち着いて」

 新しく来た門下生が驚いて、連携を崩す。それを織り込んでいた追い立て組のエイギル少佐達が、冷静に土ネズミをオレ達の方に追い立てていく。


 オレは、気を開放した。


 ズバン!

 ビクビクビクビク、ビクビクビクビク、ビクビクビクビク、ビクビクビクビク、ビクビクビクビク。


 10匹はいる。巨大なネズミたちが動かなくなった。

「フレイは、シールドバッシュっぽく一撃入れろ。レジーナ、エマ。やってくれ」

「おう」ドン!

「うん」ズッ!

「はい」バスッ!

「どんどん突いていけ。オビト、止めだ」

「任せろ」


「フレイ君、グリーンスネイクが行ったぞ。姫の前に出るんだ」

「はい!!!」

「ダーク君」

「了解です」

 グリーンスネイクの頭を押さえたが、胴体がくねくねして抑えきれない。フレイ一人で盾役はまだ無理で、補佐にメルド大尉のところのカイとアベドがついてくれる。

「姫様今です」

「エイ」ズブッ!

「ヤア」ズブッ!


 姫たちは、スキルを得るために戦闘に参加するだけでいいのに、結構グリーンスネイクを弱らせている。

 やるじゃあないか。

「後は任せろ」とオビト。

 ズバッ!


 午前の成果は、土ネズミ32匹〈32匹は、多分コロニー単位なのだろう〉。グリーンスネイク4匹。それも、前回同様3メートル級のグリーンスネイクがいる。

 その3メートル級を防御しきったころから、フレイの調子が上がった。前回のオビトと一緒だ。土ネズミとグリーンスネイクを討伐して、スキルが上がったのもあるだろうが、自信がついたのだ。



 今日は、一人増えて前回より余裕がある。姫たちは、狩りの合間に短剣術を。フレイは、盾術をそれぞれの得意な人に指導を受けていた。オレとオビトは、いつもの大太刀。オビトのところの門下生が大太刀を用意してきていたのには驚いた。大人数で大太刀の練習をすることになった。

 そして、昼食になった。遠くにひょっこりホーンラビットが顔を出した。


「あの角、危ないです」

「ここからが本番ね」

「そうなんですか?」

「昼から、ホーンラビットなんだけど、体長が70センチある上に角があるだろ。怪我をするなよ」

「わかった」

「旨いよな、ホーンラビット」

 オビトは、ホーンラビットが肉の塊にしか見えない。

「この間も言ったけど、土ネズミは耐久力。グリーンスネイクは技。ホーンラビットはスピードが上がるんだ。朝の討伐で、姫たちのスピードが速かっただろ。前やったとき死ぬほど、ホーンラビット狩りをしたんだ。今回も、これでもかってやるからな」

「俺は、必至だったからわからなかったけど、そうなんだ」

 姫たちは顔を合わせてニコニコしている。朝の討伐で、自分たちのスキルが上がっているのを実感できたのだろう。


 護衛の人たちは食事もそこそこに、ホーンラビットを探して、斥候をしている。


 姫の護衛6人が連携した。それに、岩砕流の門下生が3人付く。この3人は、オビトに止めを刺されたホーンラビットの血抜きを順番に任せることにしている。主力は6人だ。


 足の速いホーンラビットに対して、大包囲網が出来上がった。2匹が追い立てられていく。


「行ったぞーーー」


 ヴンー

 ビビビビビビビビ

「きゅぴー」

「きゅう」

 バタバタ。

 あの脚力で地面をけられて、姫たちに万が一があってはいけない。2匹とも空中に浮かせた。


「フレイ本番だぞ」


「任せろ、ウワー」

 フレイは、ホーンラビットに蹴られて吹っ飛んだ。そこにすかさず姫たちが入ってホーンラビットの足に斬撃を入れる。


「エイ」ズバッ!

「ヤッ」ズバッ!


 ホーンラビットが弱ったところをオビトが止め。

「そりゃ」ズバン


ドバン

 フレイがまた蹴られた。でも姫たちがけん制しオビトが止めを刺していく。


「ごめん」

「大丈夫よ。フレイも金色に輝いているわ」

「ちゃんとスキルが身についていますよ」


「次行ったぞー」


 みんな、オレの能力の足止めを期待して、アバウトだ。こっちは、暴れるホーンラビットを足止めするだけでなく、姫たちにケガをさせないために浮かせているから大変なんだけど。

 くそー、やってやる。

 ヴンー

 ビビビビビビビビ

ドン「ぐおっ」フレイが持ちこたえだした。

「エイ」ズバッ!

「ヤッ」ズバッ!

ズバン「オリャーー」オビトは、楽しそうだ。岩砕流に、肉を分けるとメルド大尉に言われたからな。


 これが、夕方まで続いた。そして、翌日もそうなった。やはりオレのスキルは上がらなかった。異能の力と地力は上がった気がする。前世の時は、時間が止まったかのように相手を止めることができた。今は、前世の弟子時代のような力量。その時でも、感情で力量が変わるのを知っているが、平常だとこんなものだ。




 週明けになった。オレが、いや、オレたちが一番楽しみにしている授業は、フレミング先生の授業だ。初日の浮遊術の授業は、目から鱗だった。続いて、魔力操作に、魔力障壁。そして、魔力加速と、どの授業も、空を飛ぶための準備だとわかる。


 朝のホームルームでアザミ先生に言われた。


「フレミング先生からお知らせです。『今日は、天気がいいから、校庭で授業をするかの』だ、そうですよ。だからと言って飛ぶまではいかないと思います。皆さんケガをしないように」


 これを聞いて、教室で歓声が上がった。それは、他の1年の教室もそうだった。


 校庭で1年生120人の生徒がフレミング先生を待つ。フレミング先生は、ホウキに乗って表れた。


「分かるかの、このホウキは、杖の代わりだ。でも、皆さんには、何も持たないで飛んでもらうからの。では、授業を始める。全員、2メートル間隔で並びなさい」


 オレたちは両手を広げて、生徒間の間隔を広くした。


「最初の授業で言いました。大事なことだから、もう一度言う。自分の魔力を意識できれば、魔法が使えるようになる。また、大気の魔素を認識できれば、魔素の中で浮くことができるようになる。それは、水に浮くのと同じことだ。よいか、一度、魔素がわかれば、誰でも浮くことができる」


 フレミング先生が皆を見回した。


「今日は、大気の魔素を感じてもらう。『ファイア』」


 先生が、上向きにした手のひらに火の玉を出した。


「見なさい。この火は、何もないところから出たものではない。魔素をわしが火に変換したものだ。これを、内なる自分の魔力だけでやると疲れてしまう。外から魔素を集めていると思わんか。この外の魔素を利用した飛行術は、先の話になる。まずは浮くことからかの」


 生徒の目がキラキラしている。


「では、始めよう。自分の魔力は感じることができているな」


「「「「「「「「「「「「「「「はい」」」」」」」」」」」」」」」


「その魔力を全身にいきわたらせてみなさい。心臓が血を全身にいきわたらせているように、ゆっくりと。皆さんは、お腹の底から、頭に抜けるように魔力を感じたはずだが、その魔力を、また体に戻して循環させる。鳴き鳥の羽毛に魔力を送ったように。今度は、全身にだ。そう、ゆっくりと」


 生徒が次々と浮き出した。みんな、ここまでの授業をまじめにやってきた証拠だ。


 オレの両隣の姫たちがゆっくり浮き上がった。オレは、最初の授業で先生に言われたように、自分の中の一番古い記憶から、光の渦を探し出してその渦に身を任せ吹き上がる。その光を又自分におろして循環させた。


 ゆっくり体が浮き始める。

 魔素って、こんなに濃かったんだ。


パン!

 はいそこまで。それ以上、魔力を込めないように。

 フレミング先生の柏手と共にみんな地上に降りた。


「みんな、優秀じゃの。今日の目的は達しました。そこで、個々の能力をできるだけ安全に伸ばす方法を教えよう。キャシーさん来なさい。彼女は、風属性です。まず浮かんでみなさい」


「はい」

 キャシーが、ゆっくり浮かんだ。


「今、君の属性を押します。楽な気持でいなさい。決して力まないようにその高さを維持しなさい」

「はい」

 先生がキャシーの腕をつかむと、キャッシーの体が、薄く緑色に光り出した。風をまとって髪の毛がふわっと持ち上がる。

「どうですか」

「体か軽くなりました。自分じゃないみたいです」

「高さの維持は意識できていますか?」

「わかります」

「ゆっくり降りなさい。手を放しますよ」

 ふわっとキャシーが地上に降りる。


「このように、自分の属性を上げると、軽くなったり周りが良く見えるようになります。大事なのは、高く浮かないことです。魔力切れを起こすと、落ちるからの」


「先生、自分の属性がわかりません」


「分かっています。授業の時間はまだある。出来るだけ回ろうかの」


 実際先生は、毎回の授業で、出来るだけ生徒と接して、個人の属性を認識させてきた。あと30人ほどでそれも終わる。


 オレの得意な属性は、光属性。レジーナは、火属性。エマは、水属性。フレイは、風属性。オビトは、土属性だと分かっている。エマの水属性なんだが、どうやら、水属性の聖属性らしく、まずは水属性を伸ばしなさいとフレミング先生にアドバイスされている。

 みんな浮いた後、自分の属性を強く認識して、周りが広く見えるのを確認した。


「フレイ、浮き過ぎだ」

 フレイは、自分の属性が、希望通り風属性だったのがうれしくて仕方ない。今、はしゃいでいるところなんだろうな。

「フレイ!」


「ごめん」

 周りが良く見えている分、多くの友達に心配させたこともわかる。他の生徒の中にも浮き過ぎている生徒がいる。担任の先生がケガをしないようにと心配するわけだ。


「みんな浮いたの。マイク君とロイス君とデイブ君は、放課後、職員室に来るように。では来週」


 この3人は、属性を認識できなかった。居残りだ。この中のロイスにフレイが駆け寄った。気になって、オレとオビトも何となくついていった。


「ロイス」

「フレイか。フレイはいいよな風属性で」

「ロイスは、まだわからないんだろ。これじゃあ、一緒に入部できないじゃないか」

「すまん。一人で行ってくれ」

「待てよロイス」


 ロイスは、小さくはないがちょっと太っている。フットサルには向かないかもしれないと、オレもオビトも思った。


「どうしたフレイ。あいつは?」

「ロイスとは、部活の見学で知り合って意気投合したんだ。一緒に入部しようって約束したのに」

「ちょっとわかるかな」

 オビトが、ロイスの後姿を見ながらつぶやいた。

「どういう事だ?」

「あいつ、ロイスだったっけ。あいつは、土属性だよ。オレと一緒だからわかる。そうなるのが嫌で、認識できないふりをしているんじゃないか」

「フットサルは、土属性じゃあだめなのか」とオレ。

「そんなことはない。ディフェンダー向きだってことだ。あの体形で、花形のリベラルをやろうと思うところが間違っていると思わないか」

「なるほど」

「夢は、そう簡単に諦められないって」

「フレイは、ロイスの味方をするけど、一生懸命やれば、ディフェンダーだって、結構動けるぞ。風属性のフレイが、俺にまったくかなわないだろ」

「ごめん、そうだな。ロイスともう一回話してみるよ。今度の休みにロイスも平面のフットサルに誘っていいか」

「問題ない。歓迎する」

「でも、みんな浮き出したから、そろそろ立体だぞ」

「分かってる。でも今週は、いつものだろ」

 フレイがロイスの後を追った。


 今週の週末は、遊び仲間が増えそうだ。



 週末になった。オレとオビトは、ロイスが、ここに来ることはないだろうと思っていた。なんせ、フレイが誘ってもずっと断られていたからだ。なのに、二人でやって来た。どんな魔法を使ったんだと聞きいた。


「やあ。いろいろ教えてくれ」


「よく来たなロイス。あんなに嫌がっていのに」


「フレイと賭けをして負けただけだよ。フレイがやっている球遊びの球を5分以内に取って見ろって言われて完敗した」

「玉をずっと空中で保持しているってわけにはいかなかったけどな」


「なるほど。どうするダーク」

「ロイスは、魔法科だよな。とにかく柔軟運動からかな」

「だな、フレイとロイスでやりなよ。ダークと俺は、ちょっと柔らかくてね」


 そう言って柔軟運動を始めたが、ロイスを見て目が丸くなった。

「すごいなロイス。股が割れているじゃないか」

「これなら、ちょっと太っていても、体幹がしっかりしているって言えなくもない」

「ああ、動けばすぐ痩せるだろうし」

 オレとオビトはニヤッと笑った。


 フレイが苦笑いしている。ロイスがオレ達を知っていたらゾッとしたかもしれない。オレとオビトの練習は厳しい。すぐ痩せるとはそういう事だ。


「じゃあまずは、膝だけで、玉を落とさないところかな。立体フィールドだとこの技は、大事だぞ。周りを見るときに使う。フレイとダークは、足の甲と交互にやってくれ。立体フィールドだと、これがドリブルになる」


 オレとフレイは、こういうのをさんざんやっているので、結構もつ。しかしロイスは大変だ。膝だけだと優しい方なのに、球がどこかに行ってしまって、それを追いかけてばかりいる。ちょっとやっただけで大汗をかいている。なのに止めない。根性は、あるようだ。


 オビトは、例のごとく大太刀の木剣を振っていたが、ロイスのために急いで食堂まで水を貰いに行く。頑張るのはいいが、脱水症状になると、ダメージになるだけだ。


「よく30分頑張ったな。水を飲め」

「ハアハア、ありがと。二人は?」

「もう30分はやっているんじゃないか。よく飽きないよな」

「オビトはやらないのか」

「俺は、これを最長30分落とさないで続けられる。それより今は剣かな。ロイスは土属性だろ。俺もそうだけど、あいつらに負けたことがないんだ」

「そうなのか」

「土属性は、ディフェンスで生きるんだ。あいつら、すぐ俺に球を盗られるぞ。盗られたら取り返せないし」

「すごいな」

「ちょっと見せようか。おーい模擬試合しようぜ。5分だからな」


「やってやる」

「オレも頼む」

 二人とも必死だ。オビトに負けてばっかりで悔しくてしょうがないといった感じ。二人でジャンケンして先行を決めた。


 二人とも、最初はボールを持っていたが、すくオビトに取られて、その後は全く取り返せない。二人とも「ちくしょー」と言いながら、またドリブルを練習しだした。


「オビトは、すごいな。フットサル部に入らないのか」

「俺なんて、まだまだだよ。それに、俺の家は武芸の家でな、なのに、ダークにまったく敵わないんだ。未だに乱取り稽古をやらせてもらえない。俺は俺で、悔しくてしょうがなくって木刀を振っているんだ」

「そんなにフットサルが強いのに?」

「確かに、シュートは、風属性の奴が強いけど、ディフェンスは、俺たち土属性だったりするんだ。適材適所だろ」


 もっと休めというのにロイスが、ボールを追いかけだした。オビトは、にやっと笑った。それから、ロイスもオレたちの遊びに加わった。

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