表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
27/37

フットサル

 5月に入った休み、4人で初めて魔獣狩りに出かけることになった。同行者は、レジーナとエマのお付き3人ずつと、オビトの岩砕流道場の門下生5人。オビトのお父さんが、姫を気遣って人手を出してくれた。魔獣の追い立て役が、11人もいれば、前回に近い結果を出すことができるだろう。オビトが盾役と止め役。オレが、魔獣の足止め役で、レジーナとエマが、おまけだ。みんな、おまけのために働くんだけどね。


 前回の狩りでオレは、スキルやレベルが、上がらなかった。オレの念動力は、この世界の理から外れているのだろう。でも、オレのレベル上げは、後でいい。今は、レジーナとエマがやりたいことができるように、体力や知力や技量が上がる方が大事だ。でも、タンク役と止め役のオビトは、スキルやレベルが上がるだろう。良いことだ。今日も、張り切って行こうと思う。

 

 戦闘の打ち合わせは、もう学園で済ませてある。レジーナの護衛のメルド大尉の隊とエマの護衛のエイギル少佐の隊は、この日のために訓練を積んでいる。プロミネンス家の助っ人には、魔獣の血抜きとか、馬車の護衛を任せることになった。でも、参加したいとも言われたので、朝2名、昼3名が、交代で加わることになった。交代の3人に、昼はホーンラビット中心になるので、大変だと思うけどと言うと「望むところだ」と、言われた。そういうところは、オビトと変わらない。


「今日も付いてきたんですか、ヨハンさん」

「グリーン様もですじゃ」

 馬車の中の絵は風景画に代わっているが、その中でグリーンが手を振っている。ローマン王国組は、相変わらずエマに甘い。


「じゃあ、みんないいか。メルド大尉、エイギル少佐。お願いします」


「任された」

「こっちも行ける」


 メルド大尉が、オビトのところの門下生に教えながら、土ネズミの巣穴に燻り出し用の煙草を投げ入れた。堪らず土ネズミたちが出てくる。

「ダーク君の方に追い立てろ」

「こいつらデカいぞ」

 門下生が慌てる。

「その通りだ。二人とも、落ち着いて」

 門下生二人が驚いて、連携を崩す。それを織り込んでいた追い立て組のエイギル少佐達が、冷静に土ネズミをオレ達の方に追い立てていく。


 オレは、気を開放した。


 ズバン!

 ビクビクビクビク、ビクビクビクビク、ビクビクビクビク、ビクビクビクビク、ビクビクビクビク。


 10匹はいる。巨大な土ネズミたちが動かなくなった。

「オビト、シールドバッシュっぽく一撃入れろ」

「おう」ドン!

「レジーナ、エマ。やってくれ」

「うん」ズッ!

「はい」バスッ!

 もう最初から二人に任せて大丈夫な気がする。

「どんどん突いていけ。オビトは、止めだ」

「任せろ」


「オビト君、グリーンスネイクが行ったぞ。姫の前に出るんだ」

「はい!!!」

「ダーク君」

「了解です」

 グリーンスネイクの頭を押さえたが、胴体がくねくねして抑えきれない。オビト一人での盾役はまだ無理で、補佐にメルド大尉のところのカイとアベドがついてくれる。

「姫様今です」

「エイ」ズブッ!

「ヤア」ズブッ!


 姫たちは、スキルを得るために戦闘に参加するだけでいいのに、結構グリーンスネイクを弱らせている。

 やるじゃないか。

「後は任せろ」

 ズバッ!


 午前の成果は、土ネズミ32匹。グリーンスネイク4匹。それも中に3メートル級のグリーンスネイクがいた。

 その3メートル級を防御しきったころから、オビトの調子が上がった。土ネズミとグリーンスネイクを討伐して、防御と技術スキルが上がったのもあるだろうが、自信がついたのだ。



 今日は、余裕がある。姫たちは、狩りの合間に短剣術の指導を受けた。オレとオビトは、いつもの大太刀。オビトのところの門下生が興味深そうに見ていたので、仲間に入れた。

 そして、昼食になった。遠くにひょっこりホーンラビットが顔を出した。


「あの角、危ないです」

「ここからが本番ね」

「そうなのか?」

「昼から、ホーンラビットなんだけど、体長が70センチはある上に角があるだろ。怪我をするなよ」

「旨いよな、ホーンラビット」

 オビトは、ホーンラビットが肉の塊にしか見えないようだ。

「昨日も言ったけど、土ネズミは耐久力。グリーンスネイクは技。ホーンラビットはスピードが上がるんだ。朝の討伐で、姫たちのスピードが速かっただろ。前やったとき死ぬほど、ホーンラビット狩りをした。今回も、これでもかってやるからな」

「そうなんだ」

 姫たちは顔を合わせてニコニコしている。朝の討伐で、自分たちのスキルが上がっているのを実感できたのだろう。


 護衛の人たちは食事もそこそこに、ホーンラビットを探して、斥候をしている。


 姫たちの護衛6人が連携した。それに、岩砕流の門下生が3人付く。この3人には、オビトに止めを刺されたホーンラビットの血抜きを順番に任せることにしているから主力は6人だ。


 足の速いホーンラビットに対して、大包囲網が出来上がった。2匹が追い立てられていく。


「行ったぞーーー」


 ヴンー

 ビビビビビビビビ

「きゅぴー」

「きゅう」

 バタバタ。

 あの脚力で地面をけられて、姫たちに万が一があってはいけない。2匹とも空中に浮かせた。


「オビト本番だぞ」


「任せろ、ウワー」

 オビトは、ホーンラビットに蹴られて吹っ飛んだ。そこにすかさず姫たちが入ってホーンラビットの足に斬撃を入れる。


「エイ」ズバッ!

「ヤッ」ズバッ!


 ホーンラビットが弱ったところをオビトが止め。

「そりゃ」ズバン


ドバン

 オビトがまた蹴られた。でも姫たちがけん制してくれた。戦闘に復帰したオビトが止めを刺していく。


「ごめん」

「大丈夫よ。オビトも金色に輝いているわ」

「ちゃんとスキルが身についていますよ」


「次行ったぞー」


 みんなオレの能力の足止めを期待して、アバウトだ。こっちは、暴れるホーンラビットを足止めするだけでなく、姫たちにケガをさせないために浮かせているから大変なんだけど。

 くそー、やってやる。

 ヴンー

 ビクビクビクビクビクビクビクビクビクビクビビビビビビビ

「きゅぴー」

「きゅう」

 バタバタ。

ドン「ぐおっ」オビトが持ちこたえだした。

「エイ」ズバッ!

「ヤッ」ズバッ!

ズバン「オリャーー」オビトも楽しそうだ。オビトだけでなく、岩砕流の助っ人にも肉を分けるとメルド大尉に言われたからな。


 これが、夕方まで続いた。そして、翌日もそうなった。やはりオレのスキルは上がらなかった。異能の力と地力は上がった気がする。




 週明け、ボルケーノに行かないで学園で朝食を取る。オビトが友達を連れてくると言ったからだ。レジーナは知っているようだが、オレとエマは興味津々。オビトは、魔物狩りのとき、ディフェンダーが欲しいとずっと言っていた。オレは、まあまあやっていたと思っていたが、止めとディフェンダーの2役はきつかったようだった。


「フレイって、どんな奴だ?」

「家が土木建築屋さん。ダークと気が合うんじゃない」

「そうなんですか」

「浮遊魔術にはまっていた子。フレイは魔法科よ。エマは、見たことあると思うわ。魔法科で一番背が高い子」

「あっ、なんとなく」

「本名は、フレイ・ブリッジ・ストーン。王都やフィールドインにある石橋は、ブリッジ男爵家が手がけたものよ」

「あの運河にいっぱいある石橋を?」

「そうよ」


 そうこうしているうちにオビトがフレイを連れてきた。フレイが難しい顔をしていた。なんとなくわかる。レジーナというか、姫たちと関わりたくないよな。


「みんな、フレイだ」

「フレイです」


「フレイって、今まで私を避けていたでしょう」


「そんなことは・・・。はい」

「こいつフットサルをやりたいんだと。俺に教えろっていうんだ。代わりに、姫たちのディフェンダーをやってくれって言ったわけ」

「誠心誠意やらせていただきます」


「じゃあ、仲間ってことだ」

「エマです」

「こいつはダークよ」

「よろしく」


「フレイは、風属性が出たんだ。普通、リベラルをやりたいと思うだろ。でもキーパー志望なんだ」

「絶対キーパーってわけでもないよ。オビトがフットサルをやりたいんだったら、魔獣を倒さないとなって言うんだ。姫たちの盾役をやらせてください」


「歓迎よ」

「今日から一緒に朝食を取るだろ。オレ、朝いつもは、ボルケーノに行っていないんだ。朝の護衛も頼めるか」


「オビトに聞いてる。家もそうしろって」

「ははは」

 フレイが、オビトにバンバン背中をたたかれている。こういうのを嫌がっていたのだろう。それでもやらせてくださいという。フットサルって、そんなに面白いんだ。


 仲間が一人増えた。

 今月から、午後の授業が始まった。しかし、今日は、まだみんな非番だ。


「そうそうヨハンの職場が決まったのよ。午後は、王宮に来ない?」

「本当ですか!」


 オビトが、オレ達の前にドンと座って、朝食のプレートを置いた。その隣にフレイも。

「ヨハンさんってだれですか?」とフレイ。


「私の爺やなんです。私が生まれた時から世話をしてもらっていて、家族同然の人です」

「エマのお付きで、サモル王国迄、入試についてきたんだけど、受かっただろ。残りたいって言うから、レジーナに口をきいてもらってたんだ」

「すごいわよー。マトバの宮廷付きになったのよ。奥さん主体だけどね」

「いきなりか。すごいな」

「どういう事?。二人で盛り上がってないで教えてくれよ」

 レジーナとオビトだけ盛り上がっている。

「マトバ様って宰相の?」とフレイ。

「そう」

「フレイ、それってすごいことなのか」

「宰相と言ったら、国を実質動かしている人だぞ」

「その奥さんだろ」

「ヒルデガルド夫人が、社交界を回しているって言われているのよ」

「そうなのか?。いきなり、そんな人の側付きになって、ヨハンさん大丈夫なのか」

「爺なら心配いりません。ああ見えて爺は、お茶からカクテル迄、何でも作れる人なんです。それで、引き抜かれたんじゃないでしょうか」

「そういえば、ボルケーノで、そんなことやったって、アマンダが言ってたな。『うちに欲しいんだけど』って、何度も言われた気がする」

 ここ数日、それどころじゃなかった。


「明日から出仕なんですって。それで、もう宮廷に来ているんだけど、今日はまだ非番じゃない。どうせならエマも誘って、うちの家族と食事会をしないかなー、なんて思って」

「行きます」

「じゃあ、早めに来て。王宮を案内してあげる。ヨハンも待っているわよ」

「嬉しい!」

「ダークはどうする?」

「王宮に?無理!」

 レジーナの家族って王家一家じゃないか。

「オビトとフレイは?」

「すまん、フレイに、フットサルの基礎を教える約束をしているんだ」

「そうなんです?。オビトは、フットサルをやってたんですか」

「空中のじゃないけどな」

 貴族のたしなみったやつだろうな。

「フレイは、飛ぶやつがやりたいんだろ」

「一通り知っておきたいじゃないか。地上のがベースに決まってる」

「わかったわ、また今度ね」

 オレ達3人は、誘うんじゃないと、露骨な顔をして見せているのに、レジーナは、お構いなしだ。



 結局午後は暇になった。そこで、フレイに付き合って、フットサルをやることになった。


 フットサルは、フィールド4人キーパー1人の5人制。コートは、36メートル×24メートル。センターサークル3メートル。ペナルティーエリアは、ゴール前の10メートルになる。


 オレたちは、オビトが書いた簡略コートを見ながらルールを教えてもらっている。


「空中フィールドは球形だろ。なのに地上のは、円形じゃあないんだな」

「大事なのはペナルティゾーンだ。ここに入った場合。味方は、ボールを持ったやつの前に出てはいけない。俺たちは、子供のころから、この平面のフィールドで、遊びながらルールを覚えるんだ」

「あれだろ、使っちゃいけないのは手だけだろ」

「腕もだ。平面は子供用だからな。攻撃魔法もルール違反だぞ」

「俺、キーパーやりたい」とフレイ。

「フレイは、フィールドの広さに慣れろよ。ダークがキーパーな。キーパーは全身使っていいけど魔法とかは、ずるだからな」


 念動力も使うなってか、面白い。

 ・・・・・・・・・・。そう思った時もありました。まったく球が来ない。


 オビトは、フレイにまったく球を取らせない。足技とヘッドだけで、フレイを翻弄している。技が多彩すぎて、フレイとオレは、目が点になった。


「なあ、その球捌きから教えてくれ」

「オレも、オレも」暇すぎる。


「そうだな、膝だけで、玉を落とさないところかな。立体フィールドだとこの技は、大事だぞ。周りを見るときに使う」

 そう言って球を膝だけで蹴り出した。まったく地上に落ちてこない。


「すごいな」

「本当だったら、球が落ちたら交代なんだけど、別の球でやってみるか」


 オレたちは、コクコク頷いた。


 それから1時間、オレとフレイは、無心で球を追いかけた。偶にオビトがやってきて新し技を披露する。ヘッドだけとか、足だけとか、踵を使うとか、とにかく飽きない。オビトは、木剣を持ってきて自分の修業を始めた。偶にオレに聞いてくる。そこからまた無心に木剣を振っている。同じようなもんか。


「二人とも、同じぐらいの技量だな。今度は、二人で練習してみるか」


 また、オレたちは、コクコク頷いた。


 ただ、球をパスするだけ。それだけで面白い。


「オビトー」

「どうした?」

「俺達、動きたいんだけど」

「すまんすまん。ドリブルな。魔球技場のドリブルは、最初にやった落とさないやつをやりながら移動するんだけど、平面だとこうな」


 今度は、フィールドにポールを立てて、往復するのを教えてもらった。気が付いたら夕方だった。


 オレは、前世でスポーツをした記憶がない。目茶目茶ハマった。部屋に帰って、興奮気味にエリーにフットサルの話をする。エリーは、「うんうん」と、聞いてくれた。



 それからは、ずっと平面のフットサルばかりやっていた。当然、浮遊術も姫たちに頭を下げながら教えてもらう。この二つに完全にはまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ