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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
26/37

ヒパティア先輩と二人の姫

 加奈たちには、まだ自分に前世の記憶がある話をカミングアウトしていない。でも、ここまで話したのだ。

 前世でMR1は、メタノイドと言われる脳内AIだった。今もそうなったがオレは、脳内にイントラネットを構築していてMR1は、オレの記憶を学ぶ。そしておれを補助したりサポートする。MR1は、元々オレのファイターのメンテナンスロボットだった。だからMR1〈メンテナンスロボット1〉。


 学園に帰って、ライブクリスタルの話をして、エリーに帝国の話を聞いた。


「うちの国が、帝国に恭順しているのは、ライブクリスタルのライトを人質に取られているからだ。どうして取り戻せない」

「そういう事なら、シーナ様がライブクリスタルを盗んだのね。ライブクリスタルを拘束できるのは闇魔法なのね。ジャジーラが闇属性よ。闇の拘束魔法を切り札にしているんじゃないかな」


「そういえば、闇ギルドに、魔法使いがいなかったんだけど」


「じゃあ聞くけど、闇ギルドに、人族がいっぱいいた?」


「ほとんど亜人や獣人や魚人たちだった」


「なら、そういう事よ。差別している目的の一つね。帝国は、異人種の人たちから魔法を覚える環境を奪うのに差別を利用しているのよ。人族の平民が、魔法の勉強のチャンスを奪われるのと、よく似てると思わない?」


「なるほど。でも、海底まで、そんな権威は、及ばないよな。海の民は、川を伝って、帝国に侵攻できるんじゃないか」


「大規模には無理ね。少人数は、3百年間失敗しているってことじゃない」


「川は、何らかの方法で防衛しているってことか」


「ダークって、本気で帝国とやりあう気なのね」


「前世の話をしただろ。今世のポジションは悪くない。ライトは、そのうちオレが救う。レジーナが、帝国とやりあうって言えば全面協力するさ」


「本当に無茶なんだから。まずはちゃんと勉強しなさい。帝国もライトも逃げないわ。そしてちゃんと仲間を育てなさい」


「レジーナとエマをか」


「オビトもよ。何でも一人で抱え込まないの」


「そうか、そういうものか」

 前世のオレは、ほとんど一人だった。


「今夜は、ツインが来るんでしょ。少し寝たら」


「そうするよ」



 この間オレが学園から抜け出した鉄柵の前でツインを待つ。ツインと赤鼻が、鉄柵の外までやって来た。赤鼻は、ツインに相談したいことがあったので、ここまで話がてらついてきたと言っていた。そんな話を鉄柵越しにしている間にツインが校庭の中に入ってきた。

 ツインの能力は、変身。学園の警備に化けて、難なく校門を突破した。下水からくる手もあるが、学園だと貴族街の下水を通らないといけない。あそこの暗河は臭い。外部から学園に来ないと臭いが染みつくと赤鼻に言われて、こうなった。


「ダーク、兄貴、それじゃあ」

「気をつけて帰れよ」

「お疲れ様」


「腰の軽いギルドマスターだな」

「赤鼻のいいところですよ」

「北の影塔の地下にMR1がいるんだ。その地下室の家主が、ツインに苦労して調べてもらったヒパティア先輩だよ」

「私の記憶をねぇ」

「脳っていうのは、記憶を分割して覚えているんだ。顔だと、目鼻口眉毛耳髪と頭のパーツがあるだろ。そうやって同じものは単純化して、ちょっとした違いで個性を覚えている。それだといっぱい覚えられるだろ。でも、それを外から見ようとすると大変なんだ。それこそ、ちょっとした顔の記憶を探すのに何千万通りの組み合わせの中から探さないといけない。MR1は、そういう複雑な記憶の組み合わせを探すのが得意なんだ」

「脳みその中身は、そんなふうになっているんですね」

「MR1は、オレの記憶を読んで学習しているから、詐欺師の記憶を探すのも早いと思うよ。でも、MR1が、探しやすいように、出来るだけ、詐欺師の事を思い出してほしいんだ」

「そりゃあもう。幾らでも、思い浮かべますよ」

「じゃあ、まずはヒパティア先輩に会いに行こう。先輩は、世捨て人みたいな人で、オレの協力者なんだ」

「ヒパティアさんの事を調べていなかったら、二の足を踏んでいたところです」

「ケガまでさせてしまって、悪かったよ」

「酒をおごってくれるんでしょう。偶には、フィールドインの方に行きませんか。店主の息抜きもさせたいですしね」

「了解した」


 錬金科の研究棟は、学園の最奥にある。この地下室の倉庫を貰っているのがヒパティア先輩だ。ここには、今まで錬金してため込んだ黒金がたくさんある。必要だったら原材料の金紅石がある場所も知っている。後にMR1が調達するだろう。ドロイドは、錆びるのを極端に嫌う。とても軽くて錆びにくい黒金を素材で体を作ることになった。ヒパティアは、MR1に宇宙に連れて行ってもらう代わりに黒金をドロイドたちに供与すると約束した。

 研究棟は、錬金科の研究者で埋まっている。危ない研究もしているところだ。夜中に行っても、各部屋には、煌々と明かりがついている。ヒパティアの研究室自体は、中地下にある。そこも外に明かりが漏れていた。


「先輩、来たよ」

「おじゃまします」

 ツインは、いつものように人に化けている。

 ヒパティアには、「ツインに、オレに過去の記憶があることを話さないの?。MR1を紹介するんでしょう」と、言われ。「私も普通に話したいわ。どうなの?」と聞かれた。ツインは、ボーロファミリーに殺されそうになっても守秘義務を守った人だ。何より信頼できる。今夜打ち明けるから、普通に話していいよと言っている。


「ツインさんですね。お待ちしていました。ヒパティア・ヴェラ・ルービンです」

 二人が握手した。

「ツインです。ヒパティアさんには、会いたかったんです。ダークさん、美人さんじゃないですか。世捨て人なんてもったいない。一つだけ、お聞かせ願っていいですか。気持ちのいい話じゃないので、答えなくても結構です。あなたは、何人目のお子さんですか」

「55人目よ。継承権なんかないわ」

「なるほど。それが、そうでもないんです。皇帝の子供は、皇帝によって8人殺されています。それとは別に、事故や病死が12人。寿命で27人亡くなっている。皇帝は、ヒパティアさんをおつくりになって、もう一人しか生ませていないんです。王子王女たちの反乱に嫌気がさしたんでしょうね。あなたが継承権を認められれば、第4位なんです。御身を大切にしてください」

「オレが、守るよ」

「大丈夫。私、宇宙ステーションに、ずっと籠る気だから」

「そうなのか。なっツイン、先輩は、思いっきり世捨て人だろ」

「ひどいわね」

「宇宙ステーションとは?」

「宇宙に浮かぶ小さな住居だよ。そこだと、宇宙観測がしやすいんだ」

「MR1は、コロニーを作る勢いよ」

「コロニーとは?」

「宇宙移民の生活圏。ファイター修理のドロイドのくせに、大きく出たな」

「スターダストに、ケレスっていう大きな小惑星があるじゃない。あそこには大量の氷があるでしょう。そこに建設する気」

「???。お二人とも、何を言っているのかわかりません」


 ダークが頭を掻いて面倒くさがるのをヒパティアが、ダメじゃないとにらんだ。


「これから話す内容は、秘密にしてもらいたいんだ。いいかな」

「伺いましょ」

「オレには、前世の記憶があるんだ。前世では、地上にほとんどいないで、宇宙で過ごしていた。剣技と暗黒魔法が使える処刑人がオレだった。オレの前世は、今でいう帝国の犬だった。帝国にあだ名すやつは、皆殺しにしてきた。そんなオレだけど、子供がいたんだ。最後、そうだな、最後、子供に殺されるとわかったときに改心したよ。だから今世は、帝国の敵だ」

「今までのダークさんを見ていましたから、納得です。何歳で亡くなったんですか」

「45歳。その割には子供っぽいって言うなよ。今世の両親が、いい人たちなんだ。今まで生きた中で、一番心が安らいだ。それに郷里の、年の近いヒポポ族のパムとワソとも仲が良かったんだ。何より親友のリュートと出会った。童心に戻ったよ」

親父おやじの心を持った少年ですか。うちの店主が、ダークさんに惹かれるわけです」

「ダークって、精神年齢60歳だったの!」

「うるさいな。オレの頭の中には、バースにはない技術がてんこ盛りなんだ。それを学習して成長しているのがMR1。細かいことは、MR1と話してくれ」

「一ついいですか。ずっと気になっていたのは、どうやって私の頭の中を覗くのかってことです。ダークさんは、ずっとMR1に覗かれているんでしょう。どんな感じです?」

「話が長くなるからそれもMR1に聞いてもらっていいか。ナノドロイドって言う極小のドロイドがあるんだけど、これが体内用のプロープドロイドの司令塔なんだ。ナノドロイドは、オレたちの体の中に入って、健康面とかも見てくれる。これが脳にネットワークを構築するわけだけど、実際動いているのはプロープドロイドで、これが記憶を吸い上げてくれる」

「ダーク、今のじゃ何言っているかわからないわよ」

「そうですね。ダークさんの話じゃあ分からないことが分かりました。MR1さんに聞きます」

「説明は苦手なんだ。とにかくナノドロイドを注入させてくれ。そうすれば、いつでもMR1と通信で話せるようになるから。健康管理も一緒にしてくれるよ」

「私も、脳にネットワークを構築しているのよ」

「ふー、未知すぎるのですが、ダークさんを信用しましょう」


 3人で地下に降りた。


 地下に降りていくと、小型の電子炉や精密作業台や、オートのナノドロイド組み立てラインが増えていた。MR1は、ヒパティアという錬金術師を得て順調に成長しているようだ。体内のプロープドロイドは、ナノドロイドが制作する。魔素は、体内にもいっぱいある。これを結晶化すれば幾らでも作れる。


「おおっ、その方がツイン様ですね。お待ちしておりました」


「このずんぐりしたのが、MR1だよ」

「初めまして、ツインです」


「わたくし、誠心誠意務めさせていただきます」


「こいつ、執事の因子が強く出ているんだ。そのうち治るから」

「話すゴーレムですか、面白いですね」

「ごめんなさい、ソファーしか用意できなくて。そこに寝てください」


 ツインがソファーで横になる。MR1が、ナノドロイドを注入し、ツインのバイタルを計測しだす。ツインは、ゆっくりと眠りだした。


「それじゃあ、先輩、MR1。後よろしく」


「任せて」

「あのうマスター?」


「その状態のままで頼む。情報は、全部開示だ。概要もツインに流してくれ」

 イントラネット通信で、ツインの変化能力は、そのままにしておいてくれとMR1に言った。ヒパティアに、自分の正体をさらすときは、本人が決めるべきだ。


「了解です」



 ツインは、明け方、何食わぬ顔で帰ったそうだ。今回のツインの記憶でわかったことは、詐欺師も狐人族こじんぞくだということだ。詐欺師を特定して検索した結果あの出入りの時に2階の踊り場にいた。ほんの小さな顔だったが間違いない。ところが、ツインが2階に上がったときには消えていた。あの場にいたにもかかわらず逃げおおせたのではないかと考えられる。つまり、変身したのではないかと憶測を立てることができる。ツインもそうだが、キツネびとは用心深い。ただ、アウグスト騎士伯爵の前で人族に化けているときは、同じ顔をしているはずだ。闇ギルドでもそうだっただろう。ツインみたいに細目で、ツインより背が低くずんぐりしていたが、割りと普通な感じのプロフィール〈横顔〉だった。オレとヒパティア先輩は、MR1に、脳内にネットワークを構築されていて情報共有できる。ツインもそうだ。映像も鮮明だった。


 詐欺師は、海や川の宝石が新しく入ったとき、その顔で、必ず、王都のバザールにある魔石屋を使ってランダムに選んだものを鑑定していた。まさかと思ったが、オレが懇意にしているバザールの魔石屋だった。そのことは、ツインの深層意識下で見つけた。何気ないバザールの1場面。二人は似通った生活圏にいたことになる。詐欺師がバザールに行くときは、フード付きの外套をまとっていてフードを深くかぶっているが、魔石屋のおやじと話しているその横顔は、間違いなく詐欺師のものだった。


 バザールの魔石屋の前で張り込んでいたら、必ず詐欺師が表れるだろう。しかし、バザールは、王都の中だ。加奈一家に頼めない。ツイン以外で、バザールに張り込める人材がいない。そのツインは、越国水産問屋の番頭職で忙しい。オレは、学園だし、さて困った。

 そこで、ボルケーノのアマンダに相談することにした。詐欺師の似顔絵は、ヒパティア先輩に書いてもらった。


「と、言うわけなんだ。バザールで張り込みして、詐欺師の屋さを特定してほしいんだ」

 朝食を食べながら、アマンダに依頼する。

「詐欺師よね。用心深いやつよ。私たちも後をつけたことがあるのよ。でも、いつも見失うの」


「急がなくてもいいんだ。こんなやり方でどうだ」


 バザールで詐欺師を張り込み、見失うまで後をつける。しかし、絶対無理をしない。次に張り込みをするときは、来る方向も気にしながら、その見失ったところにも、人を立てる。そうやって、最後は、人海戦術で詐欺師の屋さを特定する。それは、アウグスト騎士爵のところに宝石が新しく入荷した時にやればいい。ずっと張り込む必要はない。


「成功しそうだわ。でも、捜査代がものすごくかかるわよ。幾らになるかわからないけど、たぶん金貨6枚は下らないんじゃない。そんな大金、大丈夫?」


「金貨6枚ぐらい出せるぞ。ローマン王国のジョーンズ大佐から、金貨20枚を貰っているんだ。本当は、エマ姫のためなんだけど、王都の掃除をするのに使うのは、ありだと思うんだ」


「太っ腹ね。わかったわ、ちょっと待ってて、厨房で居眠りしている奴がいるから。バルトロー、バルトロ起きなさい。仕事よ」


 アマンダが厨房に走った。


「バルトロ、仕事だって言っているでしょ」

 肩をゆすって強引に起こした。

「へっ、魚はちゃんと届けましたよ」

「ダークが仕事をくれたのよ。カウンターに出て、挨拶しな」

「ダークがカウンターにいるんですか。そりゃ、こうしちゃあいられない」


 バルトロが慌ててカウンターに出てきた。


「なんだ、いつものガキじゃないですか。姉御も人が悪い」

「この子がダークよ。いつも会っているでしょ」

「あの、コーフー、コーホーって言ってる?」

「そりゃ、仮面を被っていたらそうなるさ。声も変える仮面なの。金貨6枚の依頼主よ。敬意を表しなさい」

「そりゃあ・・、エェッ、金貨6枚もいいのか」

「ちょっと大変な依頼なんだ。敵にばれないようにやってくれよ」


 そこで打ち合わせになった。バルトロは、早く成功しても金貨6枚は変わらないと聞いて、自分は専業になるが、他の人員は、漁が終わってからでいいかと聞いてきた。それはいいと了承した。その上でバルトロは、金貨6枚貰うけど、いま打ち合わせした予想よりも早く仕事を終わらせると意気込んだ。




 週初めになった。いつもの生活が始まる。


 休日にエマ姫は、レジーナ姫の王城に行ってヨハンにも会えたし、レジーナの家族と休日を過ごして上機嫌だった。オビトは、いつもの通り。


 オレは、レジーナとエマに、国の裏話を聞きたくて仕方ない。でも、人が大勢いる前では無理だ。それで、悶々と過ごすことになった。午後の選択授業も始まり、二人に突っ込んだ話を聞く暇がない。

 ところが、夕食時にチャンスがやって来た。オビトを入れて4人で飯を食べだしたところで話を切り出した。


「フレミング先生の授業なんだけど」

「なに?、明日あるじゃない」

「ダークは、浮遊魔術が好きですね」

「あっ、ごめん、地政学のウシキ先生の話なんだけど。二人とも、オレの疑問に答えてくれるって言ったよね」

「その話は、ここだとちょっとね」

「どこか静かなところはないですか」

「ヒパティア先輩の研究室なら、誰もいないと思うけど、先輩はいるよ」

「ふうん、ヒパティア先輩ってどんな人?」

「学園の研究生で、天文学者。研究は、土属性で、黒鉄錬成をしている人だよ」

「ダークが入った部活の先輩ね。一回会いたいと思っていたのよ」

「私もです」

「オレの話は?」

「ヒパティア先輩に会ってからよ。オビトも行くでしょ」

「俺は、八角金砕棒の稽古だよ。知っているだろ」

「プロミネンス家って、厳しいもんね」


 情報を取ろうとして、逆に姫たちをヒパティアに会わせる約束になってしまった。


 食後、渋々二人を研究棟に連れていった。


「なんで、そんなに嫌がるのよ」

「ダークさん、顔に現れすぎです」

「う~ん、先輩は、世捨て人みたいな人なんだ。知り合いもオレだけなんだぞ。急に押しかけて行って、いい顔されるわけがないだろ」

「そんな人なんですね」

「よくダークと話してくれたわね。その方が不思議」

「お前らがそれを言う!」

「いいから行きましょう」

 また、背中を押された。


コンコン「こんばんわ、ダークです」


「どうしたの、早いわね。入って」


「えーッと知り合いが一緒に来ていて」

 ドンとおされた。

「ヒパティア先輩。ダークが、いつもお世話になってます」

「おじゃまします」

 二人が、ダークを押しのけて、ヒパティアの研究室に入った。


「あら、かわいいお客さんね。ヒパティア・ヴェラ・ルービンです」


 ドレスではないけど、物凄くきれいな挨拶をした。慌てて二人も、同じようにスカートをつまんだふりをして挨拶をする。

「レジーナ・ノバ・ドラグーンです」

「エマ・レイ・ローマニアです」


「どうぞ、こちらにいらして。ダーク、先にお客様がいらっしゃるって知らせて」


「すいません」


 姫たちは、ヒパティアの凛とした態度に、ダークで、奔放になっていたところを横殴りされた気分。どういう人なの?とオレを見る。


「ソファーを地下から戻しといてよかったわ。ダークが、お茶を入れてくれるんでしょ。お茶っ葉は地下よ」

「二人を頼みます」


 姫たちが、かしこまってソファーに座った。

 地下では、姫が二人も来たとMR1が大騒ぎしているが、それは無視することにした。 まだお湯しか出ないレプリケーターでお茶を沸かして、研究室に持って行く。お茶は、驚くほど芳醇な香りを出している。


 姫たちが大人しくしているのを初めて見たよ。

「どうぞ」

 姫たちにお茶を出して、自分は、横にある先輩の机の腰掛に腰かけてお茶を飲む。芳醇で甘いお茶をごちそうになった。

 うめー。


 こうやって、姫二人と並べてヒパティアを見ると、大人で、威厳さえ感じる。


「ヒパティア先輩は、どこかのお姫様なのですか」

「そうなのかな。メイリア姉さんにそんな話、聞いたことない」

 メイリアは、学園長であり公爵のサザーランド家の娘。学園で、変身魔法の講義もするし寮監もしている。


「内緒にしてくれるなら教えてあげるわ」


 二人が、コクコク頷く。


 ヒパティアは、顔を二人に近づけてこっそり話す。

「どうやら私って、帝国のお姫様みたいよ。誰も認めていないけどね」と、秘密めいて話す。

「えー、そうなんですか」

「内緒よ。メイリアにも言わないでよ」

「メイリア姉さんを知っているんですか」

「知っているって程じゃあないけど、同級生かな。彼女は、もう今年から講義をするんですってね。優秀だわ」

「じゃあ、先輩も今年19歳ですか」

「そうなるわね」


 二人が手玉に取られるのを初めて見た。

 女同士の何気ない会話なのに、姫二人が大喜びしている。ヒパティア先輩ってコミ力が高かったんだ。これらは、高位貴族に通じる話方だとも思った。今まで、それを発揮する機会がなかっただけだろう。


「帝国ってどんなところですか」

「魔法の国よ。なんでも魔法を使ってる。便利な魔道具もいっぱいあるわ。魔道列車が走っているし、気球型の魔道船もよく空を飛んでいるわね。でも、差別がひどいところよ。私は好きじゃなかったわ」

「本当ですか!」

「ダークに聞いて。私は、あの人たちと関係ない」

「お姫様なのに?」

「そうよ。今は、ここで好きな天体観測ができて清々してる。星ってキラキラしてきれいでしょう。でも、掴もうとしてもできない。私は好きだなー。見ていて飽きないのよ」

「うんうん」

「わかる!」

 女性は、キラキラしたものが大好きだ。


「じゃあ、人魚姫のことは、知ってますか」

 エマが、ずいぶん突っ込んだ話をしてきた。

おいおいオイ、と、思う

「皇帝の秘密の話ね。どこでその話を?。帝国だと、命に係わるわよ」

 先輩は、その教育も母親から受けていた。

「えっと、ですね…ごにょごにょごにょ」

「ちょっと…」レジーナも詰まる。

「ダーク!」ヒパティアがダークに振り向いて説明を求めた。

「その話を聞こうと思って、二人をここに連れてきたんだけど、やっぱりまずい話なんですか。先輩も知っていたんだ」

「ダークは、本気で帝国を相手にする気。私はかまわないけど、この子たちを巻き込んでいいの?」


「・・・どうなんだ。レジーナ、エマ」


「人魚姫のことは、私とエマの国が、帝国に恭順している原因です。他人ごとじゃあないわ」

「うん」


「だ、そうです」


「この話は、ここだけにしなさい。二人とも、戦争をしたいの?」


「ごめんなさい」

「ごめんなさい。ごめんね、レジーナ」


「オレは、二人が本気なら手伝おうと思っているよ。帝国は、人族の格差どころか人種差別をしている。大嫌いだからね」


「まだ早いわ。もっと勉強して見識を広めなさい。それと、他国や異人種の中に入って交渉出来るようにならないとね。帝国は強大よ。仲間を作らないと潰されるだけよ」


「はい」

「先輩は、どっちの味方ですか?」


「私はダークの味方だから、二人の味方ね。今は、その答えでいいかしら」


「分かりました」


 この一連の話を地下で、MR1が聞き耳を立てていた。MR1が作る執事ドロイドのBD2は、翻訳ドロイドでもある。交渉に自分が役立つ。MR1は、本格的に他種族の言語取得に乗り出した。


 こういうことがあって、たびたび3人でヒパティア先輩の研究室を訪れるようになった。二人は、ここで目的をはっきりさせ、もっと勉強に身を入れることになる。

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