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暗黒界の超新星  作者: ペリエ
暗黒騎士は一時の平穏を好む
24/37

加奈一家出入り3

 闇ギルドがあるのは、フィールドインの北側。右岸の内陸側だ。この先は、藪になっていて、誰も住んでいない。王都側は、まだ永遠と城壁が続いているし、スラム側は、藪の先だ。


「ゲハハハ。おい、水棲人が内陸に逃げるとは思わんだろ」

「流石、ガップさんです」

 ビックマウスは、適当なことしか言わない。

 ここには、小川が流れていて小さな河原になっている。両側は藪で、誰に見止められることなくフィールドインからスラムに紛れ込むことができる。

「ギルマスの判断は、正しかったと思いますぜ。もう静かになった。多分、全滅です」

 三人は、闇ギルドの近くで様子をうかがっていた。ガップたちが外にいるのをメンバーは知らない。

「ニコが、知らせてくれたからな。ボーロファミリーを壊滅させた黒いのがいるんだろ。ワシらが束になっても勝てるわけがねえ。だがな、ワシには、貴族という強い伝手がある。ニコ、ギルドが復活したら、幹部に取り立ててやるからな」

「ありがてえ」

「どうでもいいけど、ケツが痛え。ちょっと止まれや」

 ガップは、太りすぎていて、まともに歩けないので、ニコとビックマウスが荷台にガップを乗せて引いている。二人も疲れて、休みたいと思っていたところだ。

「さすがギルマス」


 そこに、藪の中から、鬼人族が出てきた。それも1人や2人ではない。8人いる。


「おやぁ、たったの3人かい。ガップ、久しぶりだね。またずいぶんと太ったもんだ」


 ガップは、ギョッとしたし、目を見開いた。

「おおう、加奈じゃねえか。やっとワシの女になる気になったか」


「馬鹿言うんじゃないよ。人の家を盗りゃあがって。お前がお父さんを殺したのはわかっているんだ。やっと、会えたねぇ」


「ハアハア、何のことだ。ハアハア」


「何、息詰まらせてんだ。うちの海獣討伐組が偉そうに闇ギルドのギルマスだってね。あんたのおかげで苦労したよ。死んで詫びな」


 逃亡3人組は、ゴッツイ鬼人たちに囲まれた。


「おりゃ関係ねえよ。闇ギルドが立ち上がってから入ったんだ」


「ウソお言い。お前とリダルが、ガップをそそのかした真犯人じゃないか。どうやったか知らないが、うちがやってたドラゴンレースを無茶苦茶にしやがって」


 加奈が、物凄い迫力で啖呵を切った。


「ヒィ」

パシッ

「逃がさないよ」

 加奈は、ひもや布に魔力を流して自在に操る能力を持っている。ビックマウスの口にパシッと加奈の長タスキが巻き付いた。

「猛、初仕事だ。気張んな」

「へい」

 猛は、ビックマウスを鉈のような刀で頭を勝ち割った。


「モウ、おまえ」


「姐さん、ありゃあボーロファミリーの生き残りのニコです」

「お前ら、逃がすんじゃないよ」

「あいつは、どうだい」

「人のことは言えねえですが、ロクなもんじゃない」

青字あおあざ、やっておしまい」

「へい」


「まて、止めてくれ。モウ、助けろ。ギャー」

「お、おい加奈。ハアハア、ワシを殺す気か」


「他に、なんの楽しみがあるんだい」


「ワシを殺したら、貴族に目をつけられる。ここに居られなくなるぞ」


「本気で、そう思っているのかい?。アウグストなんとかの事を言っているんなら、お門違いだよ。あれの後ろにいる帝国の女が全部仕切っているんだ。帝国が異人種をまともに相手にしてくれると思っているのなら、お前は大バカ者だよ。お前は、利用されただけさ」


「違う!」


「じゃあ聞くけど、あんた。あの、お貴族様の弱みを知ってるのかい」


「ハアハア知らない」


「じゃあ、何でもないじゃないか。もういいだろ、黙んな」


「まて」

 加奈は、やはり蜥蜴人の死んだビックマウスからタスキを巻き返して血のりが付いたタスキをガップの口に巻き付けた。


「ゲガッ、ゲガッ」

 ガップの目だけが、ギョロギョロ動く。ビックマウスの蜥蜴人独特のすえた血の臭いが鼻にこびりつく。


 加奈は、無言で、両刃の短剣をガップの目と鼻の間に刺した。蜥蜴人が刺されてすぐに死ねないで、もがき苦しむ部位だ。


「モガッ、モガッ・・・・、・・・・、・・・・ガッ」


 ガップは、苦しみもがいて死んだ。それを見て、加奈は泣いた。

「お父さん、仇を取ったわ」

「あねさん」

「「姐さん」」

「姐さん、店に帰りましょう」


 加奈が、気の晴れた顔をした。

「そうだね。ダークが、実家を血だらけにしているだろうから、最初は、みんなで大掃除だよ」

「姐さん、あれ。なんか気持ち悪い」

 加奈たちは、ガップの死骸を見てぎょっとした。ガップから、芋虫に足が生えたような、それも、口だけ大きな寄生虫が出てきた。

「みんな。あれは、魔族の使い魔、ブレインイーター(脳みそ食い)だよ。逃がすんじゃない。殺すんだ」

「「「へい!!」」」

 猛は、びっくりして動けなかったが、加奈一家の若頭である青字が使い魔を仕留めた。


「ガップ、あんた脳みそ空っぽだったんだね。こんなのに寄生されるぐらい、おかしくなってたんだ」

 ブレインイーターは、寄生者の脳に巣くって、ある種の分泌物を出す。すると、魔族の囁きに従うようになる。魔族がいないなら、自分の中の魔が膨らむ。




 加奈が海産物問屋の跡継ぎだ。闇ギルドは、加奈の実家を奪って営業していた。


 加奈が実家に帰ったとき、ダークはもう学園に帰っていた。赤鼻が、血だらけの黒服と仮面を加奈に差し出した。


「姐さん、ダークが洗濯してくれって言ってました」

「ほんとにもう、世話がかかるね」


 加奈が、大店時代の娘だったころの顔をした。加奈一家は、その顔を見て、溜飲を下げた。


「姐さん、ニッチが、みんなに朝飯を持ってくるそうです。ここで待ってましょう」

「そうだね。それまでに、その辺んのゴミを片付けるよ」

「「「「「「へい」」」」」」

 ツインが、番頭の席をなでている。やっと自分の居場所に帰ってきた。



 闇ギルドに、人族がほとんどいない。しかし、主犯格のちびのリドルは、人族だった。スラムの亜人たちを殺し回っていたイギリは鬼族。赤鼻が一族のゴミを掃除した。

 闇ギルドに魔法使いはいなかった。殺人組織のボーロファミリーに双子の子供がいただけだ。

 しかし後で聞いた話。首謀者であった闇ギルド長のガップに魔族の使い魔が巣くっていた。後に、加奈とアマンダに検証してもらった。魔族はいなかったが、居た痕跡があったそうだ。少数だろうが、この大陸に、魔族が潜んでいるのは、間違いなかった。


「ふぁーー」


「レジーナ見て、ダークがいます」

「珍しいわね。ボルケーノに、朝ご飯を食べに行かなくていいの?」


「昨日、夜遅かったんだ」


「そうなんですか?」

「天体観測部に入ったんですってね。めずらしい」


「おま、それをどこで聞いた」


「さあね。エマ、私たちも朝食を取りに行きましょう」

「そうですね」


 姫たちも普通に生徒に混ざって並ぶ。朝はバイキング式。


「ゲッ、もう食べたの!」

「いいだろ」

「見てました。お茶がありますよ」

「エマはいい妃になる」

「私だってなるわよ」

「冗談だよ。二人ともお兄さんや、弟に国王になってもらいたいんだろ」

「兄を知っているんですか」

「一昨日グリーンから聞いた。一昨日の食事のチョイスは、とっても良かったそうだよ。ご両親とも肉も野菜も食べたそうだ」

「お父様たちが。・・よかった」

「なんの話し?」

「私の家は、母が菜食主義なんです。だからって野菜しか食べないなんてことはないんですけど、父が本当に肉ばかり食べる人ですから」

「肉ばっかり食べているんじゃありません。野菜も食べなさい。って話だろ。エマが、肉に野菜の付け合わせをすると、王も王妃も、肉も野菜も食べるんだそうだ」

「そうなんです」

「偏食はちょっとね」


 オレは二人を見て平穏だなと思った。前世では、昨晩のような殺伐としたことに、ずっと身を投じていた。今は、この平穏が好きだ。この平穏が長く続けばいいと思った。

 そうなのだ。暗黒騎士は、一時の平穏を好む。

一部終わり

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