加奈一家出入り2
「あの不夜城みたいなのが闇ギルドですよ」
「表向きは、海産物問屋なんで」
「なんか、旨そうなものがあったら持って帰るか」
「いいっすね」
「お前ら、なんでそんなにリラックスしているんだ」
ひと際デカいニッチが、のしのし3人の後をついていく。おかげで、目立ってしょうがない。
「ダークさんの後をついていけばいいんですよ」
「ニッチさんよ。敵の前で、ダークの名前を出すのはご法度だからな」
「エリーに怒られるんだ」
「その話は聞いたよ!。おめえら、それより前を見ろ。なんか様子がおかしくないか」
闇ギルドは、カムフラージュの海産物問屋の仕事をしないで、オレ達を待ち構えていた。
「おうおう、ニッチじゃねえか。てめえが、ボーロファミリーを潰したんだろ」
「ボーロは、まだ生かしているがな」
「煽りますね」
「こいつらに弱みを見せられるか!」
「たった4人で何しに来た」
「リトルよう、お前らこそなんだ?この人数は。戦争でもする気か」
「リトルじゃねぇ。リダルだっつうてんだろ」
「おまえ、小っさいからな」
「小っさい言うな。こっちは、30人近くやられてんだ。お前ら、やっちまえ」
ワーーー
10人ぐらいが一斉にかかって来た。刀を持っている奴もいるが、カギ爪のデカい奴や、こん棒を持った奴もいる。要は、寄せ集めだ。そのうちの槍や刀を持った奴が、ビックリした顔をして止まった。
刀や槍が、全部もぎ取られて、ダークの元に飛んでった。
「みんな、戦わなくていいけど、自分の身は、自分で守れよ」
そう言って得物をツインたちに渡した。
「俺は、デカいこん棒の方がいいんだが」
ニッチが注文する。
「仕方ない」
敵の中で一番デカいやつが、デカいこん棒を持っていた。そのこん棒が宙を舞い、ニッチの元に。
「これでいいか」
「おう」
そう言って、こん棒を振り回しだした。
先陣を切った10人は、何が起こったかわからない。
「あいつら、なんか素人っぽくないか」
「そうなんすが、あいつら、ろくなことをしてないですぜ」
「選べるんでしたら、言いましょうか?」
「そうするか。エリーが、なんだか悲しそうな顔をしておれを見送るんだよ」
「刀と槍と、カギ爪の大きいのを持っていたやつは、ギルティー。後は、気絶でいいです」
ニッチは、もう「ウオー」と、突っ込んで行って、こん棒を盗られたデカいのを殴ってのしていた。その煽りで、大半の連中が宙を舞い地面にたたきつけられた。
ゴツッ、ドガッ、バキッ
「クギャ」「グエッ」「ウゥ」
「ヒッ」
得物をダークに奪われた奴は逃げようとしたが、ダークに切り殺された。最後のは、海鮮問屋の中に逃げ込もうとしていたところで、背中を刺された。
「ギャーーー」
「リダルの旦那。やべえよ」
そう言って、建物に逃げ込もうとするやつをリダルが抑えた。
「これだから下っ端は」
「やべえよ、やべっ」
目がグルンと白目になり、その男の腹から、剣が突き出てきた。その剣を見たリダルがゾッとして一瞬固まった。目の前にダークがいる。
「コーホー」
「ウワー」
リダルが、一目散に建物に逃げ込んだ。
ここから4人は、ゆっくり歩くように建物の中に入っていった。槍や銛を投げようとする奴は、壁にたたきつけられ気を失う。その中でも槍を持っている奴は、ダークが槍を奪ってそのままそいつを串刺しにした。銛や鋤を持っていた連中は生かされた。
「ボーロファミリーの方が、手ごたえがあったな」
「そりゃそうです。戦闘は、あっちが専門でしたから」
中には、刀で突っ込んでくるのもいる。
「コノヤロー」
バシュ
「ギャーーー」
こいつは、肩で受けたか。倒れて死んだふりをしている。
「おっ、いい刀じゃないか」
ダークは、血糊の付いた刀を捨てて、新しい刀に変えた。
「今のは、イギリじゃないか」
「赤鼻、知り合いか?」
「とんでもないごろつきで、一回喧嘩したことがあるんです。うちの若いもんも何人か大ケガさせられました」
「そうか。死んだふりしているから、後は好きにしろ」
「へい」
イギリは真っ蒼になって死んだ振りをしていたが、バレていた。赤鼻は、血のりがべっとりついた刀を拾ってイギリの前に仁王立ちした。
「お前、何人殺したんだ」
「知らねぇな。死んだやつが悪いんだ」
「じゃあ、お前も悪いやつの仲間入りだな」
「まて、待ってくれ、ゲーー」
背中から胃を刺されて、ものすごい苦悶の表情を浮かべて死んだ。
「あの世に行って、殺したやつに詫びな」
ニッチは、誰も殺さない。でもツインが、ギルティと言って、何人か止めを刺して回っている。
番台を越え、座敷に上がるころには、半数が血の海に沈んだ。中には裏の荷下ろし場から逃げ出すやつもいる。そこには、ニッチの船団が待ち構えていた。
ニッチは、王都の住人だ。衛兵が悪い連中を裁いてくれる。しかし、フィールドインとスラムは、何もしてくれない。加奈一家が、自警団を兼ねていた。万事屋なので相談事にも乗っていたから、闇ギルドの悪辣さは嫌というほど知っている。
二階を見上げると、まだいっぱいいる。
「踊り場で、こっちを見下ろしているのがいっぱいいるでしょう。2人ほどは違いますが、一番前にいる連中は、何とか更生出来る手合いです」
「分かった」
ダークは、片手を前に出して集中した。そして、その手を引くと踊り場にいた連中が一斉に階下に落ちる。中には階段を転げ落ちるのもいた。
「結構な大ケガだけど、生きているだろ」
「後はこっちでやります。先に2階に行ってください。すぐ行きます」
そう言っている間にニッチが先陣を切った。この人、結構止まらない。階段をダダ駄々駄々っと登って、こん棒を振り回す。下には人がいたが2階は、亜人や獣人や魚人たちばかりだ。ちょっとはマシになったと思うのだが、ニッチが、そんなのお構いなしに、ふっとばしていく。人が、塵のように舞い上がる。
「張り切ってんな、ニッチ」
「赤鼻は、いいのか」
「イギリをやったら、気が済んじまった。ニッチは、リダルだろう。3階にガップがいる。もう、終わらせましょうや」
極悪人に止めを刺していたツインも2階に上がって赤鼻を捕まえた。
「ビックマウスと詐欺師を見ませんでしたか」
「見てないです」
「まだ逃げていないだろ?。探そう」
「そうですね」
オレ達は、ニッチの後を追った。
暴れているニッチの後ろから槍で狙って突き出してきたやつを袈裟掛けにしてニッチに背中を合わせた。
「ニッチ、先走るな」
「リトルの野郎、どこ行きやがった」
「正面の柱の陰にいるぞ」
「おう!」
ダークは、ニッチにそう告げて、赤鼻と3階に向かった。
リダルは、柱の陰で、こっちを覗っていた。二階から裏の荷下ろし場に飛び降りたやつらは、ニッチの船団員と加奈一家に捕まったり殺されたりしている。飛び降りるに降りれないで、階段の方に逃げられないかと、機を狙っていた。そこに、ぬッと現れたニッチが見下ろしている。
「こんな所にいたのか。お前、人の陰に隠れるのが好きだからな」
「何のことだ。おりゃあ、いつも一番前だ」
「チっさいからな」
ドコン
「ゴフッ」
「昔お前らがレースで、何したか話したら、ちょっとは許して…。ありゃ、もう寝ちゃったのか」
ニッチが、ツインに振り返った。
「ツイン、すまん。こいつは生かしといてくれ。いろいろ吐かせたい」
「分かりました」
ツインが、リダルの服を使って、器用に縛りあげていく。
「あれ?、ニッチさん、上に行かないんですか」
「カエルの顔を見てもな。こいつをぶん殴ったら、気が済んじまった」
「そうですか。じゃあ2階を頼みます。私は、ガップを殴らないと気が済みませんから」
「行ってくれ」
ダークと赤鼻は、蜘蛛の子を散らすように逃げた連中を無視して、3階のガップの部屋に向かった。闇ギルドマスターは、蜥蜴人なのだが、太り過ぎてカエルのように見える。3階から飛び降りることはできないだろう。
部屋の前にいた用心棒の2人を切り殺した。こいつらは蜥蜴人だった。最後は、身内で固めていたということか。
赤鼻が、ギルマスの扉を蹴った。だが、部屋は、もぬけの殻だった。
「ガップだったっけ。いないな」
「逃げたんでしょう。追わなくていいです。そっちは、姐さんに任せやしょう。この辺りのことは、姐さんが一番詳しいですから」
「あっけなかったな」
「それが、ツインの兄貴が言っていた詐欺師を逃がしたのはまずいです。ガップより詐欺師が、いろいろ手配していたんでさ。貴族との伝達も奴です」
「オレの方は、先輩の監視が消えれば目的達成なんだ。もっと深い話は、アウグスト騎士伯爵が絡んでいるんだろ」
「そっちはちょっと手が出ねぇ。ですが、ガップは姐さんが仕留めらぁ。うちは、ガップさえやれば、目的達成なんで、一区切りついたって感じでしょうかね」
「くそっ、逃がしましたか!」
「兄貴」
「ツイン」
「1発殴りたかった」
「兄貴、姐さんに任せましょう」
「くそっ」
ツインが、珍しく荒れている。ガップと相当のことがあったのだろう。




